その日から、暫くして例のホストクラブが閉店した事を人づてに聞いた。
まさかと思い、あのホテル街のバーに足を運んでみたが、そこも「テナント募集」の張り紙が貼られていた。
真島が関係しているのでは、と思ったが本人に訊くのは何となく怖くて、そのままこの件は忘れようと彩香は思った。
あの日以来、真島に会っていないというのも、ひとつの理由なのだが…。
「はあ…」
出勤表を見ながら彩香はため息をつく。
「どうしましたオーナー?溜め息なんかついて」
「え?…あ、ううん…何でもないの」
休憩中の瑠伽の言葉に我にかえる。
「そういえば兄貴ずっと顔見せないですね」
真島はここ半月の間、ロンディネに姿を見せていない。
先日の劇場前での会話を彼は怒っているのだろうか?
あの調子のいい関西弁が、酷く恋しいと彩香は思った。
「あ、明日みかじめ徴収日じゃないですか。兄貴来るかもですね」
「ああ、そうね。真島さん来るかもね」
その時は真島に謝ろう。出勤表を閉じながら彩香は思った。
翌日、ロンディネに顔を見せたのは真島ではなく、あの花屋で会った吉岡だった。
「今月分です」
落胆の色を隠せないまま、彼に封筒を渡す。
「真島さんはお元気ですか?」
それとなく訊いてみた。
「ええ、あの人が元気じゃない日はありませんよ」
と笑って、ただ…と続けた。
「今、ちょっと東城会が問題抱えてまして、親父がそれに駆りだされてるんですわ」
「そうなんですか……」
多分、秋山の言っていた密売グループの件だろうと思った。
「それって、危険な仕事なんですか?」
真島の身が心配だった。武器の密売というからには、銃で撃たれる可能性もある。
「親父は殺しても死なないような人ですから」
そう言われたが、安心はできない。周りから嶋野の狂犬と呼ばれ、恐れられてはいるものの、真島だって生身の人間だ。
一気に不安に襲われる。
「あ、煙草いいっすか?」
言われて、どうぞと灰皿を差し出した。
「そのライター、カッコいいですね」
吉岡が、ああ、これ。と見せてくれた。蛇皮で装飾された綺麗なジッポ型のライターだ。
「親父の煙草用です。俺も使いますけどね」
ヘヘッと笑う彼に、たしかに真島らしいライターだと彩香は思った。
それから、また半月程経った。
相変わらず真島には会えていない。
電話をしようかと思ったが、もっともらしい理由も見つからず、会いたい気持ちだけが募る毎日を送っていた。
今度はいつ会えるのか。もしかしたら、このまま忘れられてしまうかもしれない…。
そうでなくても、真島の身が危険に晒されて、二度と会えなくなってしまったらどうしよう…。
不安がどんどん大きくなる中、不意に彩香の携帯電話が鳴った。
「ま…真島さんっ!?」
画面には真島の彩香が表示されていた。
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