「殺されたわ」

「え!?」

彼に会ったのはついこの間だ。

ショックを受けつつ彩香は訊いた。


「武器密売グループの人にですか?」

「知っとったんか?」

「ええ、少しですが秋山さんに」

「……ほうか…」


真島は手の中にあるライターを、クルクル回しながら言った。

「あいつが昔学生だった頃、チンピラに絡まれてるとこ俺が助けてやってな。そっから何や随分懐かれてもうてのぅ。やめとけ言うた俺の言葉も聞かんと、こっちの世界に足踏み入れてしまいよった」

ホンマ、阿呆な奴やでと力無く笑う彼は痛々しく感じた。

そういえば、彼はいつも真島のそばに居た。

きっと、真島も彼に特別目をかけていたのだろう。


「やった男が誰かは大体見当はついとる」

急に真島の声色が変わる。

「この俺に盾突いた落とし前、きっちり味あわせたるわ。その男だけや無い。そいつの親兄弟みんな殺したる」

ライターをギュッと握る。

「ぶっ殺したるわ」

真島の様子に、彼の怒りは相当なものだと分かった。



「真島さん…」

「……なーんかな、あいつの冥福祈ろ思うて、独りで酒飲んどったら、急にあんたの顔が思い浮かんでなあ…つい呼び出してしもうた…」

堪忍な。と笑う顔を見てると、彩香は何だか切ないような、酷く真島が愛おしく思えて、無意識に彼の頭に自分の手をおいて撫でる。

それに真島は少し驚いた顔をするが、クククと笑う。

「俺にそんな事するのあんたくらいやで」

「嫌ですか?」

「嫌だったらこんな大人しゅう撫でられとらんわ」

そう言うと、彩香の首筋に自分の手を添える。

「消えてしもうたな…」

残念そうに言った。

「もう、一ヶ月も前の事ですからね」

「そんな経つんか…」



真島はあの件以来、マリアと肌を重ねても、満足するどころかどこか虚しい気持ちになる自分がいた。

試しに他の女も抱いてはみたが、結果は同じだった。

今はその理由が分かる。




「……キス…してええか?」

消えてしまった、自分が付けた印があったであろう箇所を、親指でなぞりながら真島は言った。

レザーの冷たい感触を首筋に感じながら、今度は彩香が驚いた顔をする。


首筋をなぞっていた指を、彩香の顎に移動させると、真島はゆっくりと顔を近づけていった。

力ずくで押さえられている訳ではない。逃げようとすれば逃げられる状態である。

だが、近づいてくる彼の真っ直ぐな目を見ていると身体が動かない。


「目…閉じてぇな」

目を見開いたままの彩香に、真島は薄く笑うと、唇を重ねた。

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