「………」
触れるだけの優しいキス。
「何や、逃げへんのかい」
唇を離すと、彩香の目を覗き込むように訊く。
「俺に同情しとるんか?」
「分かりません…でも、真島さんとなら嫌じゃないです」
困ったように笑ってみせると
「…あかん」
「え?あっっ!!」
急に後頭部に手をまわされ、引き寄せられたかと思うと同時に唇を塞がれる。
「―――ンゥッ!!」
無理やり舌を挿れられ、彩香は真島から離れようとするが、腰に手をまわされがっちり固定されている為
逃げることが出来ない。
ウイスキーの味が口の中に広がる。
「ンッ…はっ、ま…じまさんっ、苦し…」
真島は構わず、角度を変えながら更に深く彩香の咥内を犯していく。
「ンッ…ンッ…ぁっ」
徐々に、身体の芯が甘く痺れるような感覚に襲われ、堪らず吐息が漏れる。
相手は誰でもいいのかもしれない、そんな男とこんな行為をするのは避けるべきだと思っていた。
でも、これで彼が少しでも慰められるなら…。
恐る恐る自分の舌で応えると、真島はそれを絡みとる。
「はっ…はぁ…んっ」
頭が朦朧としてきた時に、やっと真島から解放された。
「あかんわ…」
「?」
「勃ってもうた…」
「え!?」
瞬間、ソファーに押し倒そうとしてきた真島を、慌てて制止する。
「だだ、駄目です真島さん!!これ以上は!!」
「ええやん、減るモンちゃうし」
「そういう問題じゃないです!!」
彩香の剣幕に、この世の終わりのような顔をしたが、盛大な溜め息の後、諦めたのかソファーに座りなおした。
そして、隣に座る彩香の首筋に顔を預ける。
「真島さん?」
「…もう、変なことせんから、暫くこうしとって…」
少し、甘えた声色で呟く。
そんな彼は狂犬というよりは、甘えて来る子犬のようで…。
彩香は彼の髪の毛をすくように、撫でてみる。
「……あんたの手、気持ちええわ」
随分大きな子犬だなと、一人密かに笑っていると
「なあ…」
真島はその態勢のまま
「キスすんの、初めてちゃうで?」
唐突にそんな事を言ってきた。
「え?どういう事ですか?」
「んー…。ヤらせてくれたら教えてやってもええけど」
「………じゃあいいです」
「ほんま、つれない女やのう…」
顔は見えないが、真島の肩が揺れている事で笑っているのがわかった。
「そうやってからかうの止めて下さい」
まったく…と溜め息をついた時だった。
「彩香ちゃん…」
「え?」
突然彩香で呼ばれ、彩香は驚く。
「これから彩香で呼んでもええやろか?」
「え?ええ、構いませんけど…」
ほな、そうするわ。と真島は満足そうに眼を閉じた。
内心嬉しかった。店のオーナーとしてではなく、一人の女性として扱ってくれている。そんな感じがしたから。
気恥ずかしく感じて頬が緩む。
出来ることならずっとこうしていたい。
肩に、真島の重さを感じながら、そんな事を思った。
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