丁度、真島が賽の河原にいる頃。彩香は秋山とセレナに来ていた。
自分一人ではどうしていいのか分からず、秋山に話を聞いて貰う事にしたのだ。
「そんな…事が?…はは、にわかには信じられないね」
話を聞いた秋山は、動揺を隠せない様子で笑ってみせたが、俯いている彩香を見て。
「……なんて、笑ってる場合じゃないよね?」
ごめんと謝る。
「……私…どうすれば…」
「あの人の事だ、きっと近いうちに知ってしまうだろうね」
「………」
「でも、俺がこの件で一番心配しているのは、真島さんの事じゃない」
「どういう事ですか?」
ロックのウイスキーを一口飲み、続ける。
「この事を嗅ぎ付けた、東城会の他の組員だよ。彼らの中には手柄を立てる為なら手段を択ばない奴だっている筈だ。君を囮にお兄さんを呼び出す…とかね」
彩香の顔が青くなる。
深刻な表情で秋山は続けた。
「とにかく、君はこのまま何処か身を隠した方がいい」
「でも、そしたらお店は…」
「大丈夫、ロンディネの従業員はみんなうちで世話するから。兎に角、自分の部屋に必要な物を取りに行った後は、店にも顔を出さないように。あと…」
秋山はカウンターの上に携帯電話を置いた。
「俺の予備の携帯だよ。今は、GPSなんてのがあるからね。これからはこっち使って、自分の方の電源は落としておいた方がいい」
その後、秋山は荷物を取りに行く彩香をマンションまで付き添ってくれた。
今日はビジネスホテルに泊まるという、彼女をロビーまで送る。
「秋山さん、色々有り難うございました」
「うん、お店の事は気にしないで、俺がちゃんとやっとくから」
「……すいません。お願いします」
そう言って、会釈をして立ち去ろうとする彩香を秋山は呼び止める。
「あのさ、彩香さん。嫌じゃなければ、……俺のとこ…来る?」
秋山の申し出に、少し考える様子だったが、彩香は首を横に振る。
「秋山さんにこれ以上は甘えられませんから」
「……そっか、君がそう言うなら無理強いはしないよ。何かあったらすぐ連絡して、俺もちょくちょく連絡入れるからさ」
「はい。有り難うございます」
そう言って、エレベーターに乗り込む彩香を見送るとその足でロンディネに向かった。
まだ開店前の店に着くと、瑠伽が血相を変えて秋山に駆け寄る。
「秋山さん!!さっきオーナーから電話があって、店を閉めるってどういう事ですか!?」
ホテルに着いた彼女は瑠伽に連絡を入れていたらしい。
「うん、ちょっと事情があってね、当分君達は俺が預かる事になった」
「オーナーに何かあったんですか!?」
「うん、まあね」
瑠伽は、今にも秋山に掴みかかりそうな勢いで訊く。
「何があったんですかっ!!オーナーは大丈夫なんですよね!?」
「大丈夫。大丈夫だから、ちょっと落ち着こうよ。ね?」
瑠伽をなだめていると、
「俺にもその話、詳しく聞かせてもらおうかのぅ」
背後から聞き覚えのある声がした。
振り向くと、そこには腕を組み秋山を睨みつける真島吾朗がいた。
「あの人の居場所、お前知っとんのやろ?」
「真島さん…」
厄介な人に会ってしまったと、秋山は内心舌打ちをする。
真島は彩香の携帯に電話をかけてみたものの繋がらず、そのままロンディネに足を向けた、そこで先程の二人の会話が聞こえて来たのだ。
「店閉めるっちゅうんは、どういう事や?」
「さあ、俺も電話で店の事頼まれただけなんで…」
「惚けんなやッッ!!」
「ぅグッ…」
真島は秋山の胸倉を掴むと、壁にドンッと押し付けた。
「あ、兄貴…」
「瑠伽…暫く席外せ」
彼の剣幕に、呆気にとられている瑠伽に真島は静かに言った。
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