「何で携帯繋がらへんねん!!」

何度彩香に掛けても、電源が入っていない事を知らせるメッセージが聞こえるばかりなので、真島は苛立っていた。

他の組の連中も彩香を探していると聞き、気が気ではいられない。

自分も、真島組総出で探してはいるが、一向に足取りも掴めていない状態だ。

「うちで保護しときゃ、俺も安心なんやがのぅ…」

そう、呟いた時、握りしめていた携帯電話が鳴る。


「おう、どないしたん?」

相手は真島組の若衆だった。

「親父、朝霧涼平の身柄を確保しました」

「ほんまか!?ほんなら、すぐ事務所連れてこい!!」

そう言って通話を切り

「見つけたでぇ。朝霧ぃ」

真島はニィッと笑った。






何かあったのだろうか、ミレニアムタワーの入り口を、明らかにその筋の人間がいつもより頻繁に出入りしているようだ。


彩香はホテルの窓からその様子を見ていた。


すると、間もなく一台の黒塗りの車が入口の前に停まった。

ドアが開き、中から出てきたのは…


「兄さん…!?」


二人の構成員に両脇を押さえられるように降りてきたのは、彩香の兄、朝霧涼平だった。

その光景を見て心臓が早鐘を打つ。


捕まってしまった…!?

このままではきっとただでは済まない。最悪殺されてしまうだろう。

彩香は弾かれるようにホテルの部屋を飛び出した。






「待ってたでぇ、朝霧涼平」

事務所に連れて行かれた涼平を待っていたのは、横柄な態度で足を組み、ソファーに座る片目の男だった。


「あんたが、真島吾朗か…?」

噂で聞いていた通りの風貌に、この男が嶋野の狂犬と呼ばれている男だと分かる。

「せや、俺の事知っとってくれて光栄やわ」

そんな事は露とも思っていないといった不遜な笑いを浮かべて涼平を見る。

「ここに連れて来られた理由、分かっとんのやろな?」

真島の顔から笑みが消え、低い声で凄む。

「………」

「ようも、うちの組のモン殺ってくれたのう、その落とし前つける覚悟は出来とんのやろなあ?」

言うと、真島は立ち上がり、ゆっくり涼平に近づくとみぞおちに膝蹴りを入れた。

「――がはっ!!」

たまらずその場に膝をついて崩れ落ちる。

真島は息が出来ずにうずくまる彼の髪の毛を鷲掴みにすると、グイッと乱暴に上を向かせた。

「………」



睨みつける涼平の顔を見て、フッと笑みをこぼす。


「やっぱ、似とるのう?」

「………?」

「さすが兄妹やわ…」


真島の言葉に涼平はサッと顔色を変える。


「あんた……!!妹を知っているのかっ!?」

すると、彼はニヤリと意味ありげに笑った。

「おう、よう知っとるで?」

「頼む、俺はどうなっても構わない。あいつにだけは手を出さないでくれっ!!」


懇願するような目で、必死に訴える涼平の言葉に、自分もしゃがんで目線を合わせると、更に強く髪を掴む。

「……お前、今自分がどんな状況におんのか分かっとんのか?俺にもの頼める立場ちゃうやろうが、お?」

「………っ!!」

絶望したような涼平の顔に、クククと肩で笑う。

「ええで、その顔。もっとしてえな、ゾクゾクするわ。……せやな…あの女の事はお前殺った後でゆっくり考えるよって、安心せえや」


そう言うと愉しそうに白い歯を見せた。


その時だった、入口の扉の前が何やら騒がしくなったと思ったら、勢いよくドアが開かれた。

「姐さん、駄目です!!今、親父は取り込み中で……!!」

制止する構成員を背後に、そこに立っていたのは息を切らせた彩香だった。

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