ミレニアムタワーの屋上から見下ろす神室町の夜景は、昼間の灰色だった同じ街だとは思えない程ガラリとその表情を変える。
真島は様々なネオンの色が溢れる夜景を眺めていた。
この街のどこかに彩香がいる。
こんな狭い、同じ街にいるのに、酷く遠い存在のように思えた。
また、お互い笑って会える日は来るのだろうか……。
瑠伽や彩香が笑顔で迎えてくれるあの店も、今は灯りが消えたままだ。
そんなに経っていない筈なのに、あの日々が懐かしく思える。
煙草を口にし、煙を吐く。
「傷の手当ちゃんとしたんやろか……」
彩香の流した赤い血の色がいまだ目に焼き付いて離れない。
その時、背後から真島を呼ぶ声がした。
「親父っ!!親父と話がしたいという男から電話が来ています」
真島は肩越しに呼びに来た構成員を見る。
「誰からや」
「それが、『タークチカ』と言えば分るとだけ言われまして…」
真島は眉間に皺を寄せ目を細めた。
「……真島や」
受話器を取り名を名乗る。
「初めまして、真島吾朗さん。『タークチカ』のボスからの伝言を伝える為お電話差し上げました」
受話器の向こうの男は、紳士的な態度で対応してきた。
「ロシアのマフィアが俺に何の用や」
警戒をあらわに話す真島に、男はたしなめるような口調で続ける。
「まあまあ、そんな怖い声出さないで下さい。今回はうちの下の者が貴方の部下にしてしまった事についてお詫びを申し上げたいと思いまして」
途端に、真島の表情が険しくなり語気を強めた。
「詫びやとっ!?うちの組員殺っといて謝罪で済ますんかいっ!!謝られたくらいで死んだモンが生き返るとでも思っとんのかボケがっっ!!」
そんな彼の剣幕にも男は物怖じしない。
「話は最後まで聞いて下さいよ。勿論、謝罪だけではありません。例の密売グループ全員を始末するという事で、今回は許して頂けると有難いです」
「なんやて?そんな末端の奴らのしでかした事で、あんたんとこのボスはそこまでするんかい?」
例の密売グループは、タークチカの使いっ走りのような存在……の筈だ。
東城会と同等の勢力のマフィアが、そんな連中のした事にそこまで動くとは思えない。
何か裏があるのではないかと探りを入れる。
「うちのボスは周到な人でして。これが発端であなた方と衝突する事は避けたいんですよ。東城会を相手にするのは、うちとしてもデメリットの方が大きいんでね。それに貴方の率いる真島組は、東城会でもトップの勢力とお聞きしますので」
尚更ですと男は笑う。
「そちらは一人。こっちは末端と言えども十数人。それにうちとしては貴重な収入源の一つを失う訳ですから、それで今回の件は水に流して頂きたい」
真島は少しの間何やら思案していたが
「ちょい待てや、それについてちいっとばかし条件があるわ」
「……条件…ですか?何でしょう」
訝しげな男の言葉に、彼はニヤリと笑った。
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