「ほんまにやりおったか……」

丁度その頃、真島は同じニュースを組長室で観ていた。



ひっそりと何処かで葬られるより、ニュースで朝霧の死亡が伝えられれば、辛うじて周りへの面子は立つ。

真島がタークチカに出した条件だった。



このニュースを何処かで彼女も観ているのだろうか……。

そうだとしたら、一体どんな気持ちで観ているだろう。

あんな事までして助けたかった兄の死を。


「……きっと泣いとるんやろうなあ。一体何処に居んねん。やっぱりあん時行かせんかったらよかったわ」

ソファーにもたれかかり、天井を仰ぎ目を瞑る。

「……俺の傍にいてくれぇな」

会いたい人の彩香を小さく呟くように呼んでみた。





彩香は何処かの公園にいた。

彩香を呼ばれて振り返ると、レジャーシートにお弁当を広げた両親が手を振っている。

でも、自分はシロツメクサで花の冠を作りたくて、その場にしゃがんでせっせと作っていた。

すると、視界の隅にスニーカーが見えた。

仰ぎ見ると、幼い頃の兄だった。

兄は、自分に手を差し伸べて、行こうと言う。お弁当一緒に食べよう…と。

彩香は仕方なく兄の手を取ったが、自分の手は今と同じ大人の自分の手だった。

なぜか、それに疑問も抱かず、兄と二人両親の元へ行く。

二人ともニコニコ笑って、お腹空いたでしょうとおにぎりを手渡してくれた。

それを一口食べると何故か涙が溢れてきた。


そんな自分を、唐揚げをくわえたままの兄がきょとんとした顔で見ている。

何泣いてんだよと、手で涙を拭ってくれた。

何でもない、おにぎりおいしいねと両手でおにぎりを口いっぱい頬張る。

それを、両親は相変わらず微笑んで見つめていた。


暖かい幸せな気持ちで胸が一杯になる。





目を覚ますと、見えたのは秋山のアパートの天井だった。

(……夢…か)

本物だったのは、自分のこめかみを濡らす涙だけ。

不意に襲ってくる喪失感。


ベッドの上で上半身だけ起こし、涙を拭う。


あの後、すぐに警察に電話をし、遺体の引き取りを申し出たのだが、事故後すぐに遺体は持ち去られ残っていたのは財布と携帯電話だけだったと言われた。

持ち去った相手に関しては、警察は言葉を濁すばかりだった。

秋山は、ロシアのマフィアと繋がりがあったらしいから、きっとそいつらだろうと推測していたが。

さすがにマフィア相手じゃどうする事も出来ない。


葬式もまともに出せないのかと、悲しくなった。



それに。ひとつ気になる事があった。

兄の死が、本当にグループ内のトラブルが原因だったのかという事だ。

偶然にしては、タイミングが良すぎる。

これには真島も絡んでいるのではないのだろうか?


嫌な憶測が頭をよぎる。

それがもしそうだとしたら、もう今までのように会う事は出来ないだろう。

いや、それ以前にあんな事をしたのだ、彼はもう自分に愛想を尽かしているかもしれない。


彩香はまだ少し痛みの残る首筋に手を当てると、立てた膝の上にある毛布に顔をうずめた。


大事な人が、自分の元からいなくなっていく事に、言い知れぬ孤独感に襲われる。



水を飲もうとベッドから出た時、ドアをノックされた。

「彩香さん?俺だけど、起きてるかな?」

と、扉の向こうで声がした。開けた途端、太陽の光が差し込んでくる。その眩しさに彩香は目を細めた。

目の前にはその光を背にし、コンビニの袋を見せて

「差し入れ」

と笑顔で言う秋山が立っていた。

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