「目が赤い…また泣いてたね?」
心配そうに顔を覗き込む秋山の視線から逃げるように目を伏せた。
「ええ、ちょっと昔の夢を見ちゃいまして……」
と誤魔化すように笑ってみせる。
そんな彼女が痛々しく見えて、秋山は暫く無言で見つめていた。
「……私、そろそろ自分の部屋に戻ろうかと思います」
いきなり切り出され、秋山は少し焦りの色を見せる。
「どうして?」
「これ以上、秋山さんに甘える訳には……」
「駄目だ」
「え?」
瞬間、身体を引き寄せられ、気づけば秋山に抱きすくめられていた。
「あ、秋山さんっ!?」
咄嗟に離れようとしたが、腕に力を込められ逃げる事が出来ない。
「こんな状態の君を一人にする訳にはいかない」
微かな香水と煙草の匂い。
耳の近くで聞こえる彼の声は、優しく聞き心地がいい。
「俺は心配なんだよ、彩香さん。このまま行かせたら、後悔するような気がする」
服の上から秋山の体温が伝わってくる。
弱っている今の自分には人の温もりは安堵感を与えてくれ、張りつめていたものが弾けたように涙が溢れてきた。
声を押し殺し泣く彩香に気が付いたのか、秋山は抱きしめたまま頭を優しく撫でてくれた。
暫くそうしてた秋山はポツリと呟く。
「……俺じゃ駄目かな?」
「………え?」
彩香の顔を自分の胸に押し当てるようにすると
「俺じゃ、君の支えにはなれない?」
「秋山さん……?」
驚いて秋山から離れようとすると、更に強く抱きしめられる。
「……好きだ」
耳元で聞こえる甘く切ない声。
「ずっと前から…好きだったんだ……彩香さん」
そう言って、そっと彩香を身体から離すと、涙で濡れた瞳を覗き込む。
「君が真島さんを好きな事は分かってるよ。でも、やっぱり彼と君じゃあ住む世界が違いすぎる。このまま彼を想って辛い思いをする彩香さんを見るのは嫌なんだ」
だから、と秋山は続けた
「俺と付き合ってみない?」
秋山らしい、軽く聞こえる告白だったが、その目は真剣だ。
「……でも、ごめんなさい私…」
「うん、いいんだ、今は俺に気が無くても構わない、返事も今じゃなくていい」
秋山は、両手で彩香の頬を覆うと親指で涙を拭った。
「振り向いてくれるまで、待つよ、俺」
真っ直ぐな眼差しで見つめられ、困った表情で目を泳がせると、彼の頬を覆う力が少し強まるのを感じた。
秋山の顔が徐々に近づいてきて、彩香は身体を強ばらせる。
彼の唇があと数センチというところまで近づいていたが、そんな彩香の様子に軽くため息をついて小さく微笑うと、額に優しくキスを落とした。
「告白直後に嫌われるのも嫌だからね」
そう言って笑い、ゆっくりと両手を離す。
そんな秋山に彩香はどういう顔をしていいのかわからず、俯いた。
「……ちょっと公園でも散歩しようか?」
「…え?」
唐突な秋山の提案に顔を上げると、そこには優しく微笑む秋山がいた。
「彩香さん、ここのところ外出してないでしょ?顔色も悪いし、外の空気吸った方がいいよ」
それに……と頭を掻く。
「このままここに二人で居ると、襲っちゃいそうだし」
と冗談っぽく笑った。
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