カーテンから洩れる朝日を感じながら、彩香はゆっくりと目を開けた。
外からは、神室町の喧騒が窓越しに聞こえてくる。
徐々に覚醒する頭の中で、昨夜の事を思い出し、隣に目をやると、間近にまだ寝息をたてている秋山の顔があった。
「………」
途端に自己嫌悪に陥る。
半ば無理やりだったが、最後は自分も理性を失って彼を受け入れてしまっていた。
取り返しのつかない事をしてしまった…と思った。
しかも、中に出されたのだ。妊娠してしまう可能性もある。
青ざめた表情でベッドから出ようとすると、その気配で秋山が目を覚ました。
「ン……彩香さん?」
そう言うと、昨日の事を思い出したのか、照れたようぎこちない表情でおはようと言った。
「秋山さん……私やっぱり自分の部屋に帰ります」
上半身を起こしたまま、そう秋山に告げると、彼は暫く黙っていたが
「そっか…」
と言ったきり黙ってしまった。
その空気にいたたまれなくなり、ベッドから出ようとした時、秋山に腕を掴まれ再びベッドに倒れこんだ。
「あ、秋山さん!?」
後ろから抱きしめられ、驚いて声をあげると
「……少しだけ…このままでいさせてよ…」
愛おしむように、彼は彩香の後頭部に顔を埋める。
そんな切なそうな声で言われたら、拒絶する事も出来ず、黙って従う事にした。
「やっぱり、あの人の事が好きなんだね?」
「………」
無言の彩香の様子に、秋山は小さくため息をついた。
「いいんだ、人の気持ちなんてそんな簡単に変わるもんじゃない」
抱きしめる腕に少しだけ力を込める。
「でも、好きでいるのは俺の勝手だからいいよね?」
「秋山さん…」
「もう、引き止めないから」
そう言うと、抱きしめていた腕を緩め、彩香から身体を離した。
たった数週間空けただけなのに、随分久し振りのような感じがする。
彩香は自分のマンションに帰って来ていた。
ベッドに横になると、襲ってくる疲労感。
こんな短い期間に、色々な事があったなと今までの事を思い返した。
昨日の夜の事を思い出して、また自己嫌悪に陥る。
それに店の再開の事も気がかりだった。
自分の都合で店を閉めたのだ。今更、瑠伽達に戻って来いなどと都合のいい事は言えない。
一からのスタートだ。新しく募集をかけなければ……。
だが、一番心に引っかかっているのは、昨夜のセレナでの真島の態度だった。
あの時、自分が秋山のアパートに居るという事を聞いてから、彼の様子が変わった。
あの時の冷たい真島の対応を思い出すと、またチクリと胸が痛む。
何故あの時急に不機嫌になったのか。
バックの中から携帯電話を取り出すと、真島の履歴を表示させる。
深呼吸をして、画面をタップさせた。
本人に訊いてみるのが一番手っ取り早い。
耳元の呼び出し音を聞きながら、もう一度深呼吸する。
index
top