その時、額に当たる冷たい感覚が消えたかと思うと、身体に感じていた重みがフッと無くなった。


「……お前っ…グッ…!!」

同時に武野の声が聞こえたので、驚いて目を開けると見えたのはドサリと倒れこむ武野と、肩で息をして立っている真島の姿だった。その右手には血で濡れた短刀が握られている。

「逝くのはオドレやボケが!!」

そう言い放つと、屈んで彩香に左手を差し伸べた。

「危ないとこやったな、立てるか?」

放心状態の彩香に真島は軽く笑うと、その場にしゃがみ上半身を起こしてくれた。

「大丈夫かいな」

「真島さん……胸の傷…撃たれたんじゃ……?」

呆けたように言うと、彼は胸に空いた穴に手を添え。

「おぅ、これか……」

そのまま、自分の蛇柄のジャケットの内側に手を伸ばし、何かを取り出した。

「吉岡に助けて貰ぅた」

その手にあったのは、銃弾を受けたために窪んで歪んだあのライターだった。

「ベッタベタな助かり方してしもぅたわ」

そう言って笑顔を見せる真島の顔を見て、安堵と共に涙が込み上げてきた。

「良かった……真島さん、死んじゃったかと……」

「阿呆、わしは不死身やで?」

真島はそう茶化したが、

「本当に良かった……」

「……彩香ちゃん……」

泣きながら顔を両手で覆う彩香に、真顔になるとその手をそっと顔から離し、身体を自分に引き寄せそのまま片手で抱きしめた。

「それはこっちの台詞や」

耳元で真島の声がする。

「大事無くて良かったわ……」

今まで自分を避けていた彼のその優しい声に、更に涙が溢れ出しその首筋に顔を埋め、声を殺して泣いた。

真島はそんな彩香の頭に自分の唇を埋め、優しく慰めるように撫でた。



暫くそうしていたが、彩香は思い出したかのように真島から身体を離す。

「そうだ、マリアさんが……!!」

ハッとして横たわるマリアを見る。

「平気や、気ぃ失うとるだけや」


立ち上がろうとする真島の顔が、苦しそうに歪む。

「真島さんっ!?」

「さ……すがに、肋骨イってしもぅたみたいやわ」

顔をしかめながら、真島は無理に笑い、はぁーとため息をつくと 情けなさそうに言った。


「病院行こか……」

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