「この間もな、ワシが今気にいっとる店連れてったんや」
「お店…?」
「可愛いオネーチャンがぎょうさんおる所や」
「……真島さん」
「ん?」
「瑠伽君は、ああ見えて真面目な子なんです。あまり変な遊び教えないで下さいね?」
あえて、にこやかに彩香が言うと、
「お、おう。せやな…でもな、男だったら多少はそういう遊びも覚えんと…」
表情を崩さず、じっと真島を見つめる。
「……わかった。これからはオーナーはんに内緒で行く事にするわ」
ニカッっと白い歯を見せて悪戯っぽく笑う真島に彩香はため息をつく。
そんなやり取りを、真島は楽しんでいるようだった。
「せや、今日、店閉めた後店長と三人で飲みいかへんか?」
「今日…ですか?」
「おう、明日休みやろ?それとも何か予定でもあるんか?」
「…いえ、特には」
真島はパシッと片手で膝を叩くと立ち上がり、出口へ向かう。
「よっしゃ、決まりや。店が終わるの二時くらいやったか?そんくらいにまた来るわ」
「え?ちょ…真島さん!」
彩香の制止も聞かず、扉を開けて事務室を出て行った。
『お、店長。今日終わったらオーナーと三人で飲み行くで』
『え?マジっすか兄貴!』
『おう、オーナーはんには承諾済みや』
『うわぁー。楽しみっす!また武勇伝聞かせて下さい!!』
瑠伽に会ったのだろう。扉の向こうで二人の声がする。
「…承諾…してません…」
制止しようと右腕を伸ばした態勢のまま彩香は力無く呟いた。
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