「お疲れさまでーす」

「おう、お疲れさん」

楽しげに乾杯する二人にしぶしぶ自分のグラスを軽く打ち付ける。

「お疲れ様です…」

真島はビールをグイッと煽ると、

「ここ、ワシ行きつけの居酒屋やねん。何でも美味いから好きなの頼み」

「いい感じの店ですね」

「せやろ?こういうちょっと汚い感じの店は美味いんやで」

二人の会話を聞きながら彩香はビールを喉に流し込む。
程よく疲れた体に染み渡るこの感覚は、いつもの事だが心地いい。

確かに店構えはお洒落とは言えず、お世辞にも小奇麗とは言えない大衆酒場だが、周りの客の活気と漂う匂いが「ここは当たり」だと教えてくれている。

こういう店は安くて美味い。
真島の店のチョイスに好感が持てた。


「そういえば、プライベートでオーナーと飲むの初めてですね」

隣の瑠伽が、嬉しそうに言う。

「そうなんか?」

「ええ、店の忘年会なんかの時は居ますけど、女の子の近くばかり行って、うちら男子スペースには来てくれないんですよ」

「ああいう席は、女の子の悩みを聞くいい機会なのよ」

「えーー。俺らの悩みも聞いて下さいよ」

「うちは彼女達がいるから成り立ってるの。だから女の子優先」

「それはそうですけど…。俺、こうやって一度オーナーの隣で飲みたかったんです」

「なんや、随分と店長に慕われとるのう。ワシ嫉妬してまうわ」


『……どっちにですか?』


彩香と瑠伽、二人同時にハモる。

テーブル越しの真島は悪戯っぽく「イヒヒ」と笑った。

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