「……今思うと、一目惚れやったのかもしれん…」

耳元で囁く真島の言葉が、一瞬何の事を言っているのか分からなかった。

「……え?」

「初めて会うた日から、あんたの事が気になってしゃあ無かったんや」

「真島さん…?それって…」

「……彩香ちゃん」

軽く上体を起こし、真島は彩香の顔を見る。

至近距離から自分の目を覗き込む片目の男は、いつになく真剣な眼差しで真っ直ぐ彩香を見据えていた。

「俺は……あんたにめちゃくちゃ惚れとる」

大きく目を見はり、息を飲む彩香に真島は続ける。

「好きや…彩香ちゃん。俺のモンになってや……」

そうして彩香の身体をギュっと抱きしめると、耳元で切なげな声で囁く。

「なぁ……頼むわ……」


知らなかった……いや、気付かなかったと言うべきか。

何となく気に掛けてはくれているんだろう位に思っていた。


彩香は混乱する頭をクリアにするように大きく深呼吸した。



一目惚れ?

では、自分が彼を好きだと認識する前から真島は自分に惚れていた……という事か…。



「な、何や。人が真面目に告白しとるのに、何で笑うてんのや?」

クスクス笑う彩香の気配に少し気分を害された真島は、不機嫌そうに言った。

「だって……ずっとお互い気づいてなかったんだと思うと、何だかおかしくて…」

「あん?」

「私もずっと真島さんの事好きだっだんですよ」

「……はぁ!?」

真島は間抜けな声を上げて、ガバリと上体を起こし、目を丸くして彩香を見た。

「今、何て言うた?」

「だ…だから、私も前から真島さんの事が好きだったと……」

「………」

口を半開きにしたままの真島は、暫く言葉も出せない様子でいたが、ガックリとその頭を彩香の胸に預けた。


「な…何や、ほんなら両想いだった…いう事かいな…」 

「……みたいですね」

「せやったら、秋山と付き合うとる言うたんは何やったんや?」

「あ……それは…」

真島に申し訳なく思いながら、今までの経緯を話した。



話し終えた後の真島は、眉間に皺を寄せ、若干不機嫌そうに言った。


「俺に嘘ついた……ちゅう事かいな…」

「ごめんなさい……」

彩香が素直に謝ると、彼ははぁーっとため息を付き、彩香の横にゴロリと横になり片手で頬杖をついた。

「ワシ……嘘嫌いなんやけどなぁ」

「………はい…」

シュンとする彩香を暫く無言で眺めていたが、突然クククと笑い出した。

「二人でわしをハメよったんか……」

「真島さん?」

「ま、せやな。あんたらが付き合うとる思わんかったら、俺からあんたに言い寄る事は無かったかもしれんのぅ……」 

フッと笑みをこぼすと、「あかん…」と再び真顔になる。

「わし…秋山殴ってもうた…」

「えっ!?」

驚いた彩香は上半身を起こし真島を見た。

真島は頭を掻きながら、自分も上体を起こし、ベッドの上にあぐらをかく。

「あー…まあ、あいつも嘘ついてた事やし…これでチャラにしといたるわ」

そう言ってヒヒッと笑う真島を唖然とした顔で見ながら、秋山には後で謝らなければとため息をついた。

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