「良かったじゃないですか。これで俺も肩の荷が下りましたよ」
セレナに真島に呼び出された秋山は、バーボンのグラスを回しながら真島を見た。
そんな秋山に、真島は少々不満げな表情になる。
「なーんか釈然とせんのぅ……。お前の手のひらの上で転がされた気分やわ……」
「フフッ……真島さんが俺の予想通りに動いてくれて助かりました」
「……お前…俺の行動パターン読んどったんか……」
「気持ち悪いやっちゃ」と顔を嫌そうにしかめる。
「あんた程分かりやすい人も居ないと思いますよ?」
口の端を上げ笑う秋山に、真島はふと真面目な顔になる。
「……せやけど…お前はこれで良かったんか?お前かて彩香ちゃんに惚れとったんやろが」
「………まあ。そうなんですけどね……」
秋山は目を伏せ、フッと笑う。
「仕方無いじゃないですか。あんたが好きで辛い思いをしてる彼女、見たくないし」
「………」
「好きな女が幸せになれるんなら、俺は喜んで身を引きますよ」
少し寂しそうに笑う秋山の横顔を見る。
自分が彼の立場だったら、同じように行動出来るのだろうか……。
「秋山…お前……」
何時になく真面目な声色に、秋山が真島を見ると、眉をハの字にしている彼の顔があった。
「えぇ男やのう……」
「……今更気づいたんですか?」
同じく眉尻を下げ、秋山はフフッと笑った。
「彼女の兄さんの事、彩香さんに聞きました」
「……ほうか」
「……ありがとうございます」
グラスの中の琥珀色の液体を見詰めながら、秋山は礼を言った。
「何でお前が礼を言うねん。ま、アレや。惚れとる女悲しませた無いんはお前と一緒や」
照れた様子ではにかむ真島に秋山は少し神妙な顔つきで尋ねる。
「真島さん……」
「なんや」
「あんた、結構女性関係激しかったようですけど……もう、清算はしたんですよね?」
若干責める口調の秋山に、フンと鼻で笑う。
「当たり前やろ。あの人おるんやったら、他はいらんわ」
「なら、いいんですけど」
秋山は煙草に火を点け、煙を吐く。
「もし、彼女が傷つく事や危険な目に遭う事があったら……俺はすぐに彼女をさらいに行きますよ」
「覚えておいて下さい」そう言うと秋山は、煙草の灰を灰皿の中に落とした。
真島は彼の言葉に少しだけ眉を顰めたが、自分も煙草に火を点けると
「心配せんでもそんな事にならんから安心せい。……ま、肝に銘じとくわ」
煙草を持つ手で頬杖をつくと、ヒヒッと笑った。
セレナを出た真島は、携帯を取り出すと電話をし始めた。
「彩香か?今日、店終わんの何時や?……ほうか……。なあ、店終わった後、瑠伽連れて飲み行かへん?ほれ、前に約束しとったやろ。……ん?フフッ…そら覚えとるわ。……ほんなら、今からそっち行くわ。その後お前んとこ泊まってええか?一緒に帰ろ……おぅ。ほな」
通話を切った真島は、鼻歌まじりの軽い足取りで神室町のネオン街へと歩き始めた。
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