「あーあ、結構派手にやってくれたなぁ」

やれやれといった感じの品田が、箒とチリ取り片手にガラス片を片付けていると、階段の方向に気配がしたのでそちらに目を向けた。

すると、壁にもたれながら一段ずつ下りてくるなつみの姿があり、品田は慌てて駆け寄る。

「ちょ、ちょっと。安静にって言ったばかりだよね?」

「品田さん……」

「え?」

「あの人達の事……聞かないんだね……」

「あ、あぁ……実はさ」

品田は少し言うのを躊躇したように見えたが、昨日の客に色々と聞いてしまった事を正直に話した。

「ごめんね……」

「ううん、こっちこそごめんなさい。品田さんが危険な目に遭うかもしれないのに、ちゃんとあの人達の事言っておくべきだった」

目を伏せて申し訳なさそうに謝ると、不意に品田の手が伸びてきて、大きな手がポンポンとなつみの頭を撫でた。

「品田さん……」

「じゃあ、俺もぶっちゃけちゃおうかな」

「え?」

なつみを階段に座らせ、品田は立ったまま壁にもたれ腕を組んだ。

「俺の仕事さ、ライターって言ったけど……ライターはライターでも……風俗ライターなんだよね」

「風俗?……風俗ってあの風俗?」

「そ、あの風俗。ごめんね、若い女の子にはちょっと言いづらくてさ」

なつみが見上げると、品田はヘヘヘと申し訳なさそうに笑いながら頭を掻いた。

「あれ?俺、何か面白い事言ったかな?」

思わず吹き出したなつみを、不思議そうに見下ろす品田に、笑いながら首を振る。

「ううん。品田さんも、そういうとこ気にするんだなあって」

「え?酷いな。俺、そんな無神経そうに見える?」

「ふふ、ごめんなさい。じゃあ、神室町の風俗の記事を書きに?」

「うん。まあ、ある程度の店は取材出来たんだけど、どうしても記事にしたい女の子がいてさ。でもその子、取材NGな子なんだよね」

「ふうん……手強そうだね」

「うん。でも、どうしても記事にしたいんだ。これもいいしね」

そう言うと品田は、指で円を作りお金を意味するサインをして見せた。

「じゃあ、その子の取材出来るまでは帰らないって事?」

「うん。そのつもり」

そこまで言うと、なつみは少し考えるそぶりをした後、真面目な顔になり品田を見上げた。

「お願いがあるんだけど……」

「ん?」

「それまで、うちに居てくれないかな?」

「え?だってお金返すまでって……」

「そうなんだけど、今日の品田さん見て思ったんだ。品田さん喧嘩強そうだし、居てもらえると心強い……」

駄目かな?と不安げに訊いてくるなつみの顔を見て、品田はうーんと首を捻る。

「いや、俺そんなに喧嘩は強く無いんだけど……」

「…………」

哀願するようななつみの眼差しに、品田は頭を掻く。

「……あー、うん。それでもいいなら、俺としてもお願いしたいけど」

「ほんと?良かった。ありがとうっ!!」

嬉しそうにパッと顔を輝かせて、なつみは立ち上がる。

「そろそろお昼だね。お腹空いたでしょ?今何か作るね」

「いや、駄目だよ。あまり動かない方が……」

その時、品田の腹が盛大に鳴った。

なつみは、その音に目を丸くしたが「品田さんも手伝って」と言って笑う。

「……はい」

品田も照れたように笑うと、厨房へと向かうなつみに肩を貸した。

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