「うーん、今日はあったかいなー」

窓のカーテンを開けると、朝日が部屋へ降り注ぎなつみは目を細めながら大きく伸びをした。

品田がここに来てから、もうすぐ二週間が経とうとしていた。

眠い目をこすりながら、洗濯機を回そうと脱衣所へと向かう。

「あれ?品田さん、洗濯物出してないじゃない」

まったくもうと呟きながら、品田の部屋のドアを叩く。

「品田さん、洗濯機回すから洗う物出して。……おーい品田さーん」

何度かドアを叩いてみたが全く返事が返ってこない。仕方なく、ゆっくりドアノブを回し、中を覗いてみると、品田はベッドの上で片脚を布団から放り出し、だらしない恰好でいびきをかいていた。

「品田さん、洗濯物」

布団ごと身体をゆすってみるが、全く起きる気配が無い。仕方が無いと辺りに散乱している下着や衣服を拾い集める。

「うーん……」

ムニャムニャと言いながら、品田が寝返りをうつ。起きるのかと思い、品田の顔を覗き込むが相変わらず気持ちよさそうに寝息をたてていた。いい夢でも見ているのだろうか、幸せそうな笑みまで湛えている。

一体どんな夢を見ているのか……。なつみはクスリと笑うと、彼の頬をつついてみる。

「ん?……んン……くすぐったいよ、みるくちゃん……」


────“みるくちゃん”?

相変わらず、ニヤニヤ顔の品田を見つめながら固まるなつみは、枕元にある雑誌に気が付いた。それは、開かれたまま置いてあり綺麗な女性が微笑みながらこちらを見つめている。

────ふと桃club“みるく”?

“みるくちゃん”が、品田が飼っているネコか何かのなつみだろうという予想は、残念ながら違ったようだ。なつみは、そこに書かれてある記事に目を通す。この記事を書いたのは品田のようだった。

────これって……。

そこには、彼女とのプレイ内容が赤裸々に綴ってある。風俗ライターと聞いて、風俗嬢にインタビューをして記事にするものだとばかり思っていたのだが、これは明らかに体験リポートだ。しかも、このみるくという風俗嬢と品田は結構長い付き合いのような事も書かれている。

彼女に、何度も「お世話になっている」という事は、安易に想像できた。

なつみには、刺激もショックも大きすぎた。

見なかった事にして、その場を離れようとした時だった。

「わっ……!?」

品田の腕が伸びて来て、なつみの肩に触れた。……と思った瞬間、グッと引き寄せられた。

そのまま品田の上に倒れ込んでしまったので、驚いて態勢を立て直そうとしたのだが、もう片方の腕を腰に回され、身動きが取れなくなってしまった。

「んー……みるくちゃん……」

品田の唇が首筋にあたり、熱い息がかかる。

「し……品田さんっ!!ちょっ……起きてっ!!」

「うーん……あれ?なつみちゃん?」

自分の上でじたばたもがくなつみを、品田は寝ぼけ眼のまま不思議そうに見ていたが、驚いたように目をぱちくりさせて飛び起きた。

「うわっ!!え?何で君が俺のベッドで寝てるの!?」

「ち……違っ!!」

なつみは慌ててベッドから降りた。

「……君、結構大胆なんだね」

頭を掻きながら照れたように笑う品田の台詞に、なつみの顔がみるみる真っ赤になっていく。

「馬鹿っ!!」

そう叫ぶと、なつみは部屋から出て行った。

「え……?あれ?」

品田は意味が分からないまま、彼女が出て行った開いたままのドアを眺めていた時、そこからひょこっと春樹が顔を覗かせた。

「おっさん、姉ちゃんに何かした?顔真っ赤にして下に下がってったけど……」

「あー……俺、何かしちゃったのかなあ……」

のんびりと話す品田に、春樹はため息をつく。そして、少し言うのをためらう素振りを見せたが、腕を組んで品田を見た。

「姉ちゃん、ああ見えて男と付き合った事無いんだよ。……だから、あんま軽い気持ちでちょっかい出さないでくれ」

「……じゃ、そろそろ朝飯だから下りて来なよ」と言うと、その場から立ち去った。

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