「何だ、図星かよ。ちょうどいいや、俺が色々と手ほどきしてやろうか」
ゆっくり自分の方へと近づいて来る河村に、恐怖心を覚えたなつみは震える手で携帯を取り出すと、履歴にある品田の番号をタップした。
────お願い出て、品田さんっ!!
祈るような気持ちでそれを耳に宛てがう。呼出音が鳴ったと同時に、素早く河村に携帯を取り上げられ通話を切られた。
「あの男にかけるつもりか?よせよせ、今あいつは楽しいデート中だ、邪魔するのは野暮ってもんだろ?」
男の手がなつみに伸びる。
咄嗟にそれを払い除け、唯一の逃げ場である二階へと駆け上がった。後ろで追いかけくる気配がする、ザワザワと背中に嫌な感覚を感じながら、自室へ飛び込み鍵をかけようとノブに手をやる。
だが、扉を閉めるよりも一呼吸早く、河村がドアの隙間から身体を滑り込ませてきた。
「や……っ!!」
腕を掴まれそうになり、部屋の奥へと逃げようとした男に背中を向けた時、後ろから髪を鷲掴みにされる。
「痛っ……止めてっ!!」
そのまま強引にベッドまで連れて行かれ、乱暴に押し倒された。
恐怖に顔を歪ませるなつみの反応を、河村は楽しむように見下ろす。その手がパーカーの中へ侵入してきたので、全力で抵抗した。
舌打ちが聞こえ、直後に左の頬に痛みが走る。
「痛い思いしたくなかったら大人しくしろっ!!」
イラついた声で怒鳴った後、男は可笑しそうに笑った。
「心配しなくても、客も誰も来ねえよ。表のプレートも裏返しておいたからなあ」
男の言葉で、最後の希望も絶たれた気分になる。
打たれた頬がヒリヒリした。
「処女卒業したら、風俗にも手ぇ出しやすくなるだろう?俺がいい店紹介してやるからさ」
恐怖と悔しさと痛みで涙が滲んできた。
冷たい手が背中にまわされ、下着のホックを外そうとしている時だった。
階段を駆け上る足音がし、開いたままの入り口から息を切らせながらガタイの良い男が飛び込んで来た。
その姿を見た瞬間、なつみの瞳が大きく見開かれる。
────嘘。
彼はマリンと一緒に居る筈だ。……どうしてここに?
「品田……さん?」
品田は目の前の光景に、一瞬頭が真っ白になる。
「なに……してんだ?」
パーカーを捲りあげられ、下着が露わになったなつみの目は涙で濡れていた。叩かれたのだろうか、その頬は赤くなっている。
ひと目で何が起きているのかを把握できた。
品田の顔が怒りで見る間に険しくなっていく。
河村は顔を青くしながら上体を起こす。
「何してんだって聞いてんだよっっ!!」
怒りを放出するかのように吼えると、今にも噛みつきそうな顔で河村の胸ぐらを掴み強引にベッドから引きずり下ろした。品田はそこへ馬乗りになると河村の顔を殴り出す。
何度も。
何度も。
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