スマイルバーガーのボックス席。

あらかた食べ終わったトレーの上に散らばるポテトを頬張りながら、品田は驚いた顔でマリンを見ていた。

「取材?受けてくれるの?ホントに?」

「うん、いいよ。品田さんだったらいい記事書いてくれそうだし」

「うはぁ!!やったっ!!これで大威張りで帰れるよ」

無邪気にガッツポーズをとる品田を、なつみは複雑な表情で見ていた。

そう、いくら自分が想っても彼はずっとここに居る訳じゃない。帰ってしまうんだ、自分の居場所へ。

「私ね、自分のお店を持つ事になったの」

「お店……ですか?」

「そう、昔からの夢だったんだ。だから風俗嬢として取材を受けるのはこれが最後。宜しくね、品田さん」

銀座にクラブを出店するらしい。箱は大きくはないが立地はいいと彼女は言った。

そんな彼女の話を神妙な顔で聞いていた品田は「お店……か」とポツリと呟いた。







マリンと別れ、品田とふたりリンクスへと帰る。その間、品田はずっと黙ったまま何やら考え込んでいる様子だった。

「マリンさん、取材OKしてくれて良かったね」

マリンと別れてから、ずっと気になっていた話を切り出してみる。

「あ、いや……その事なんだけどさ……ん?」

それまで地面を見ながら歩いていた品田が顔を上げた。そして怪訝な表情になって進行方向を見た。

「なんか、向こうが騒がしいね」

「え?」

なつみもつられてその方向を見る。確かに数人の人がざわめきながら何かを見ていた。その曲がり角の先にはリンクスがある。

途端に込み上げる嫌な予感。

「あ、品田さんっ!!」

急に駆け出す品田の後をなつみも慌てて追いかけた。






「……嘘……」

めちゃくちゃだった。

リンクスの看板は倒され、窓ガラスも破壊され破片が地面に散乱していた。

店内も酷い有様だった。

壊された椅子やテーブルが倒れ、グラスや珈琲カップが割れて床に散らばっている。

なつみは力無くその場にへたり込んだ。

「……酷い」

これでは当分店を開けられない。それどころか、元のように直すのにいくらかかるか……。

「……なつみちゃん」

「…………」

床に膝をつき、ガックリと肩を落す彼女の背中に声をかける。

「下、ガラスの破片だらけだから危ないよ?」

ゆっくりと立たせると、人の目もあるしとりあえず二階に連れて行く事にした。

意外にも二階は荒らされてはいなかった。

なつみを彼女の自室のベッドに座らせ、「大丈夫?」と声をかける。顔が青ざめ、茫然自失といった様子だ。

無理も無い。

なつみを二階に残し、再び一階へ戻ると二人の警官が品田の存在に気が付いた。そして、ガラスの破片を踏みながら店内に入って来た。

「ちょっと話を訊かせてもらってもいいかな?」

誰かが通報したらしい。

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