「君、こんな所でなにしてるの?」

「え?なに……って」

「ちょっと一緒に来てもらってもいいかな」

「あれ?……もしかして、俺疑われちゃってます?」

ふたりの警官は品田の両脇に来ると、逃がさないようその腕を掴む。

「ちょ……ちょっと待ってよ。俺じゃないって」

「大人しくしろっ!!」

警官二人と揉み合っていると、ガラスの割れた窓から眼鏡の男がヒョイと覗いた。

「あんた達、その人はこの店の人だよっ!!」

その人は、品田がリンクスに来てから初めて来店した武田という客だった。それを聞いた警官達の力が緩んだので、品田は「だから言ったでしょ」と二人の手を振り払った。

「いやあ、中も酷いもんだね」

パキパキとガラス片を踏みながら武田も中に入って来る。

「なつみちゃんは?」

「……二階で休ませてます」

「そうかい……」

可哀想になあと言いながら、武田は店内を見渡した。

「あいつら、何もここまでせんでもなあ」

「“あいつら”?武田さん、これ誰の仕業か知ってるんですか?」

品田が食いつくと、二人の警官は武田に近づき詳しい話を訊こうとした。



元々リンクスに嫌がらせをしていたのが、この辺りで質が悪いと有名な地上げ屋だったらしい。
だいたい予想はしていたが、リンクスをこんなに滅茶苦茶にしたのはその地上げ屋だった。

「それとな、金崎組の人間も何人かおった」

そのなつみを聞くと、警官は顔を見合わせた。そして、何やら小声で話をしていたが、「ご協力ありがとうございました」と言うと、そそくさと出て行った。

「えっ!?ちょっと、それだけ?」

品田が驚いて声を上げるが、警官達は構わず行ってしまった。

「やくざ絡みは殺人やら余程の事が無い限り、警察はあてにならんと思った方がいい。特にこの神室町ではな……」

「そんな……」

「金崎組はこの辺りじゃ血の気の多い奴らの集まりで有名な組だ。あれが関係して来たとあっちゃ、この店も大人しく明け渡した方がいいかもしれん……。悪い事は言わん、あんたもさっさと手を引いて帰るんだな」

武田の言葉に、品田は拳をギリリと握った。

「あの二人を見捨てて帰れと?」

そんな事、出来るものか。どんな思いで彼女がこの店を守ってきたか、短い期間だがこの目で見てきた。

まだ、帰れない。

帰りたくない。

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