武田は品田の心の内を知ってか知らずか、「ここのナポリタンも、もう食えなくなるのかねえ」と言いながら出て行った。
春樹が、この店の現状を見た時の悔しがりようは凄かった。品田が買ってきたコンビニの弁当を涙を堪えながら食べる姿に、胸が痛んだ。
なつみは、食欲が無いと言って部屋から出てこない。
「ここの借金ってさ、どのくらいなの?」
品田の問いに、春樹は箸を止めた。
「……細かいとこは分からない、でもだいたい二千万くらい」
二千万……。結構な金額だ。
「そっか……」
そう言うと、品田は立ち上がる。
「ちょっと出かけて来るよ。なつみちゃんの事、宜しく頼むね」
「どこ行くんだよ、こんな時に」
「あー……うん、すぐ戻るからさ」
言葉を濁すようにそう言って、リンクスを出た。
劇場前を歩いていると、偶然にも目的の人物を見つけた。
彼は、知らない男と話をしていた。どうやら何か揉めているようだ。
「秋山さん」
品田に声をかけられた男は振り返る。
「あれ?……確か君は、品田君……だっけ?」
彼は予想外の人間に声をかけられ、少々驚いた表情を見せた。
秋山駿。スカイファイナンスという金融屋の社長の肩書きの他に、キャバクラのオーナーも務めている男だ。
チャラチャラした見た目と、飄々とした語り口だが、信用の出来る男だと品田は思っている。
「会えて良かった。俺、秋山さんに金を借りたくて……」
品田が言うのと同時に、先程まで秋山と揉めていた男が逃げ出した。
「あっ……あーぁ、また逃げちゃったよ」
面倒くさそうに言った後、秋山が何かに気がついたように品田を見た。
「そういや、野球選手だったよね?プロの」
「え?ええ、昔の話っすけど……」
すると、秋山がニッと笑い親指でクイッと男が逃げていった先を指した。
「捕まえて来てくれないかな?」
「えぇ?俺がですか?」
「金、借りたいんでしょ?」
そう言えば、以前聞いた事がある。秋山は金を貸す前に必ず試験を受けさせ、合格者のみ無利子、無担保で金を貸すと。
「テストって事っすか?」
「分かってるじゃない。あぁほら、もうあんなに遠くに行っちゃった。あの人逃げ足だけはやたら速いんだよねぇ」
見ると、男の背中はかなり小さくなっていた。直ぐに追わないと見失ってしまう。
「あー、もうっ!!」
考えてる暇は無かった。品田は全速力て男の背中を追った。
「いやぁ、品田君のおかげで無事回収できたよ」
スカイファイナンス事務所。応接用のテーブルを挟んだ向こう側で秋山が煙草に火を点けた。
「で?いくら入り用なの?……三万?五万?」
「あー……それが、二千万程……」
「に……二千万っ!?……品田君、そんな大金一体何に使う気なの?」
驚いて煙草を吸う手を止めた秋山は、訝しげな目を品田に向けた。品田は、神室町に来てからの出来事を秋山に話しはじめた。
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