酷い頭痛で目が覚めた。

病院の個室。

品田の付き添いでいつの間にか眠ってしまっていたらしい。昨夜泣きすぎたせいで頭がぼんやりしている。

カーテン越しの窓が薄っすらと明るくなっている。もうすぐ夜明けのようだ。


ベッドの上で寝息をたてる品田を見る。淡いブルーの入院着の胸元から覗く包帯と、口元の絆創膏が痛々しい。そっとその口元に手を伸ばす。


全身切り傷や打撲だらけだが、それ程重症ではない。
ただ、太腿は刃物のような物で結構深く刺されていたらしく。二週間は入院しなければならないらしい。



「……ぅ」

品田の顔が痛そうに歪むと、薄っすらと目を開けた。目に飛び込んだ光景が理解出来ないようで、目を泳がせる。
その目がなつみを捉えると、驚いたように見開かれた。

「……なつみ……ちゃん?」

「品田さん……」

声を聞いた途端、もう枯れてしまったと思っていた涙がボロボロ溢れて来る。

「もうっ……心配したんだから!!」

「はは……ごめん」

へらっと笑ういつもと同じ品田の笑顔に、涙が止まらなくなってしまう。

品田は、痛むのか顔をしかめながらなつみの涙に濡れる頬に手を伸ばす。親指で優しく涙を拭うが、止めどなく流れる涙に品田は少し困った顔をした。

ムニッ。

品田の指がなつみのほっぺたをゆるくつまんだ。

「っ!?」

なつみが驚いて品田を見ると、彼は肩で小さく笑っている。

「な、何笑ってるのよ!?」

「いやぁ。目が腫れて不細工になったなつみちゃんも可愛いなって思って」

「……っ!!誰のせいだと思ってるの!?品田さん死んじゃうかと思ったんだからっ!!」

「うん、ごめんごめん」

そう言って笑うと、添えられた品田の手が優しく頬を撫でた。

「ほんと、ごめんね……」

「…………」

なつみはそっと、頬を撫でる包帯だらけの大きな手に自分の手を重ねた。品田の体温を確かめるように目を瞑る。

温かい。ちゃんと生きている。

「良かった……」

ポツリと呟くと、品田がため息をついたので目を開けた。そこには困った顔の品田が映る。

「……まいったな」

「え?」

「今、なつみちゃんの事すごい抱きしめたい」

「───っ!!」

穏やかな顔の品田とは反対に、なつみは急激に顔が熱くなるのを感じた。

「あ……。私、顔洗って来る!!」

急いで立ち上がると、廊下に出た。


心臓の音が煩い。
頭がクラクラする。

思わず熱くなった両頬に手を当ててその場にしゃがみ込んだ。

────ああいうの……ちょっとズルい。

気持ちに歯止めがきかなくなる。
これ以上品田への想いが大きくなるのが怖い。
いずれは帰ってしまう人だから……。

パシパシと気合を入れるように、両頬を叩き洗面所へと向かった。

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