春樹に品田が目覚めた事を連絡した後、何気ない顔を意識しながら病室に戻った。

「そろそろ朝食の時間みたいだね。廊下がいい匂いしてる」

そう言うと、品田は不満そうな顔をした。

「リンクスのご飯が食べたい……」

「贅沢言わないで。ちゃんと栄養とか計算されてるんだから」

「多分足りないよ……」

がっくり肩を落す品田に、なつみはやれやれとため息をついた。

「分かった。お昼、何か作ってくるからそれまで我慢して。ただし、先生の許可が出たらだけど」

「ほんとっ!?やったぁー!!」

満面の笑みの品田が可愛すぎて、思わず頭を撫でたくなるのを我慢するのが大変だった。



ベッドの横の椅子に腰かけ、品田の顔をじっと見る。

「……ん?なに?」

品田は急に、真面目な顔になったなつみを不思議そうに見つめた。

まだ聞いていない。

彼がこんな怪我を負った理由を。

“店の仇を取って来た”

あの時、品田はそんな事を言っていた。あれは、どういう意味だったのか。

「品田さん……あのっ……」

なつみが言うのと同時に、病室のドアがガチャリと開いた。

「品田さーん。朝ご飯ですよー」

若い看護師がプレートに乗った朝食を運んできた。

「あ、大丈夫っす。そっち置いて下さい」

ベッドにセットしようとした看護師に、品田は朝食をサイドテーブルに置くように促した。

看護師が病室から出た後。

品田はチョンチョンとなつみの服を引っ張る。

「?」

何事かと見ると、口を開けた品田が自分の口を指さしている。どうやら食べさせて欲しいらしい。

「品田さん……。なんかここに来てから甘えんぼモードじゃない?」

「いいでしょ?俺、怪我人なんだし」

仕方が無いなと、スプーンを手にとりクリームスープを口元まで運ぶ。

「味薄い……」

「文句言わないの」

なつみは苦笑いをしながら、もうひと匙スープを掬った。






「予定より遅くなっちゃった」

品田の差し入れを作る為一度リンクスに戻ったのだが、ぐちゃぐちゃの厨房で作ったせいか、思ったより時間がかかってしまった。

品田の喜ぶ顔を思い浮かべながら、彼の病室のドアノブに手を伸ばした時だった。

「君、品田辰雄の知り合いですか?」

急に声をかけられ、驚いて振り返る。そこには、スーツ姿の男が二人立っていた。

「え、ええ……そうですけど」

「神室署の者です。ちょっと、彼に話があるんですが」

そう言うと、男の一人が警察手帳をかざした。

「あの……どういった用でしょうか」

なつみが訊くと、二人の刑事は顔を見合わせた。

「実は……昨夜、金崎組の事務所が襲撃されまして。それに、品田辰雄が関与しているみたいでね」

「金崎組……?」

「一般的には“やくざ”と言われる連中ですよ。その事務所に、彼が一人で乗り込んでそこの組員半分以上に重軽傷負わせた……あくまで疑いですけどね」

なつみの顔色が、見る間に青ざめる。

「品田さんが……?まさか……」

「私らも一般人の彼が、一人でやくざの事務所に乗り込んだとは信じがたいのですが……なので、ちょっと詳しい話を……」

その時突然、黒い背中がなつみと刑事の間に割って入る。

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