その夜。
「あれ?冷蔵庫に入れといたプリンが無い……」
冷蔵庫を開けて、小さく首を傾げたなつみの後ろで、春樹が気まずそうに誤って来た。
「あー……あれ?俺、食べちゃった……買ってこようか?」
「んー……いいや。コンビニ行って来る。何か欲しいのある?」
「いいの?じゃあポテチのり塩っ!!」
姉ちゃん優しいと言う春樹に、はいはいと相槌を打ちながらなつみはコートを羽織る。
外に出ると、冷たい空気が頬を撫でた。
上を見上げると、ビルの隙間からまん丸い月が顔を覗かせている。
ぶるりと身震いすると足早にコンビニへと向かった。
「あれ?無いや……」
コンビニのスナックコーナー。春樹がリクエストしたものが売り切れていた。
仕方が無いので、少し遠いがもう一軒先のコンビニまで足を運ぶ事にする。
なんて優しい姉なんだろうなんて、ひとり小さく呟きながら冷たくなった指先に息を吹きかける。こんな事なら手袋をしてくるんだった。
目的のコンビニに到着し、暖をとるため暫く雑誌を眺めた後、買い物を済ませ家路を急いだ。
人通りのほとんどない裏道。街灯は少なく繁華街に比べると暗く寂しい道だ。さっきまで出ていた月も、雲に隠れてしまったようでますます暗く感じる。
神室町から少し外れただけで、こんなに静かになるものなのか。
その時だった。
背後を誰かが付いて来ている事に気付く。
まさかと思い、少し足を速めた。足音は、ぴったりとついてきている。
急に恐くなり、走り出した。後ろの足音も走り出す気配がした。それがどんどん近づいて来る。
グッと腕を掴まれ、小さな悲鳴をあげた。脳裏に品田の顔が浮かぶ。恐怖で全身の肌が粟立つ。
「なつみちゃんっ!!俺だよっ」
聞き覚えのある声がした。驚きと共に振り返ると、必死の顔の品田が目の前に居た。
「品田……さん?」
「ごめん、ちょっと驚かそうと思って」
申し訳なさそうに、ヘラリと笑い頭を掻く品田の胸を、なつみは拳を作ってポカリと叩いた。
「もうっ!!ほんと怖かったんだからっ!!」
「あはは、ごめんごめん」
「でも、何でこんなとこ歩いてたの?」
品田に疑問に思った事を訊いてみる。
「いや、コンビニに行った筈のなつみちゃんが中々帰って来ないって春樹君が言ってたからさ」
言いながら品田が歩き出したので、なつみもその後に続いた。
「それって……心配してくれたって事?」
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