「俺が訊くのも変だけどさ、結構お金かかったんじゃないの?」
「うーん……まあね。あれから必死で頑張ったのと、あとちょっと借金もね」
「え?借金?」
心配そうになつみを見る品田に、大丈夫と笑ってみせる。
「スカイファイナンスって所がね、無利子で貸してくれて……」
その言葉に、品田が目を丸くした。
「スカイファイナンス……?それって秋山さんの会社じゃ……?」
「あれ?品田さん、知ってるの?」
「知ってるも何も……あれ?ちょっと待って、そこって、金を貸す前にテストに合格しなきゃならない筈なんだけど……なつみちゃん、どんなテストうけたの?」
そうだ、確かそのテストも難しいものと聞いた。
前になつみの為に金を借りようとした品田も、テストと称して秋山から逃げた男を捕まえてやった事があった。
結局、あの時は金は借りることは出来なかったが……。
「それが、テストはもう済んでるって秋山さんが」
「え?」
「“詳しい事は君がよく知っている男に訊くといいよ”って、それって品田さんの事だったりする?」
首を傾げるなつみに、品田は曖昧に笑った。
「んー……どうなんだろうね」
きっと、秋山はあの時の事を言ったのだろう。彼の気の利いた計らいに感謝しつつ、あの時男を捕まえた自分を心の中で褒めた。
品田では無いとしたら、後は誰だろうと考え込むなつみを見て品田は話題を変えた。
「そういや、明日オープンなんだって?俺、手伝いに来ようか?」
「え、ほんと?……あ、もしかして賄い目当てでしょ?」
「あはは、バレちゃった?」
そう言って、気まずそうに頭を掻く品田になつみはやれやれと口元を緩めた。
「ごちそうさま。俺、ちょっと用事思い出してさ、また来るね」
アイスコーヒーを飲み干し、立ち上がる。
出口へと向かう品田をなつみは少し寂しそうに目で追った。
「品田さん、夕方時間ある?」
「え?うん、平気だけど」
「私、この近くにアパート借りたんだ。良かったら来ない?再会の乾杯しようよ」
聞いた途端、品田がパッと顔を輝かせる。
「いいね。賛成!!」
「じゃあ、夕方またここに来て」
「了解」と言うと、品田は店を出た。
直ぐに携帯を取り出すと、どこかに電話を掛ける。
「あ、編集長?ちょっと相談があるんだけど……」
そう言いながら、品田は足早に歩きだした。
品田が出て行った店内で、なつみは大きく溜め息をついた。思っているより緊張していたらしい。
取り敢えず、自分がここに来るのが迷惑なのではないかという事は、杞憂に過ぎなかったようだ。品田の飲んでいたグラスを洗いながら、今度は安堵の溜め息を漏らした。
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