「――そうですか、わかりました」

シャーロットは少年たちを連れて職場へと戻ってきていた。
大きなレンガ造りの建物、そこが彼女の毎日を過ごす場所。まだ明るいとはいえすでに賑わいは落ち着き、就業時間中とはまるきり様相が違っている。
少年たちの探しているものはシャーロットの知る限り近くにはなく、ただツテとして思いついたのがここであったのだ。

「うーん、もう帰っちゃったみたい。どうしようか……」
「おねえさん?」

二人並んで小首を傾げ、つぶらな瞳で見上げられて、

「あ、でも住所は、どこにあるかはわかるから、ねっ?」

ついなんだか焦ってしまう。
だがその言葉に顔を見合わせた兄弟は笑顔になり、ほぅと息を吐いた。

「でもね、ここからは遠いの」
「だいじょうぶだよ、おしえて」
「おしえて?」
「本当に遠いのよ?」
「だいじょうぶ!」
「がんばるっ」

大丈夫だとか頑張るだとか。
確かに人間やる気になれば長距離を歩くことくらいできるだろう。だが、

すでに夕刻。子供の小さな足で。

いったいどれほどの時間がかかることか。いったいいつ辿り着くことになるのか。
その前に、拐かされてしまうかもしれないし、迷うかも、事故に遭うかもわからない。
だいたい、子供だけでと知っていて見送ることなど許されない。

「明後日まで待てない? 明日は私仕事だから、明後日なら一緒に行けるよ」

首を振るのは兄で、弟もそれに同意するように頷く。

「しんぱいしないで」

ありがとうと、ふわりとした笑みに、

「しないわけないじゃない……!」

衝動的に二人まとめて胸に抱いた。

何の理由があるのか事情なんて知るはずもないが、二人は擦り切れた靴を履いているし、頼る大人などいないのも見ればわかる。

放り出すなどできはしない。
かといって実家住まい、かつ厳しい両親……ともなれば連れ帰るわけにもいかず……。

「おねーちゃん」

やわらかな声音。そして差す陰。
ゆっくりと揺れて大きくなっていく。陰。影。オレンジ色に染まりゆく世界に、黒い人影。





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