一色


良い子は寝静まる暗い夜道に人ひとりある程度の高さから落ちて倒れ込む音がしたら、私だったら何も見なかったかのようにその場を去ると思う。むしろ、関わりたくなんてない。


それをしなかったのは、変わらない性格からか職業柄なのか。



「怪我はないか。見たところ日本人だろう?」



ただ、そんな状態の私を見て怯むどころか近づいてきては手を差し伸べて声をかけた その人を見るなり、私は空いた口がふさがらなかったのだ。


「あまり上手くはないが、自分の事がわかるか?」


見たところまだ若いような気がする目の前の人物を見上げる。心配そうに私の安否を確認していたので、頷いてみせた。


その人は私の反応を見るなり、夜は冷えるからと自分の家でもいいなら少し温まっていくといい、とにこりともしない、初対面にも動じない姿勢で私に告げた。


「自己紹介がまだだったな、赤井秀一。字はこう書くんだ。」

『自分の方こそ、怪しいかもしれないのにお気遣いありがとうございます。改めまして、藍沢みうと申します』


その後に簡易的ではあるが、お礼を述べると気にしなくていい。と淹れたてのココアを持ってきてくれた。

そう、私が最初に落ちてきたのは、かの有名な漫画の しかも原作に入るだいぶ前だということが、彼に出逢えたことで明確になった。……なんてこった。



偶然は必然 一色目 完