四色
「――知ってるとは思うが、俺の職業はそんなに甘い世界では通用しない事ばかりだ」
あらかたお互いの自己紹介といつもどのように過ごしているかとか身の回りの事とか話し合った。
やっぱり、目の前の彼は思い描いていたあの
「今後どうするか、お前の意見を聞きたい。」
『。。。っ、』
きゅっ、と下唇を噛んでしまう。どうもこうも、ここは私の住んでいた世界ではなく、作られた世界かもしれないのだ。家族も友人も存在しない身寄りもない、一人ぽっち。
知識があるとはいえ、同じように進行するかも分からないのに。介入していいかも定かではない不安要素を兼ね備えた存在なのに。
でも、元の場所へ帰るにはこの世界である程度の目立つ功績を残さなければならない。しかも、第一目撃者である目の前の重要人物と一緒に。ここで自分はこれをしました。結果、こうなりました。と結果が着いてこなければ、きっとずっとこのままだろう。
『もし、可能なのであれば貴方と行動させてもらえませんか』
「さっきも言ったが、死がついてまわる職に就いている。それでもついてくるのか」
その言葉に目を閉じて暗い世界で整理する。大丈夫、そう言い聞かせて私は一度閉じた目を開き、彼を見る。もう決めた事だ。後戻りはできない。
「いい子だ。覚悟が出来たようだから、一度あそこにも顔を出しておこう」
『つまり、?』
それは、ついて行ってもいいということなのだろうか。彼の受け答えは私には少し分かりづらかった。きっと顔に出ていたのだろう。そんな私に目の前の彼は雰囲気をふっと和らげた。
「今日からよろしく、異世界のお嬢さん。改めて 本名は赤井秀一。訳あって今は偽名を使って別の名を使っている。外ではその内の一つである名前で呼んでくれ。前途多難なことが増えてくかもしれんが、妥協はしないつもりだ」
『覚悟は出来てます、何処へでもお供しますよ。秀くん、私も改めまして。藍沢みう。呼びやすいように愛称をつけてください。外で使い分けて頂いても大丈夫です、出来うる限るのことは致します。家事も出来ます。よろしくお願いします』
「秀くん、初めて呼ばれたな、」
立ち上がった彼に私も立ち上がる。座っていた時から思っていたが、やはり私から見てずっと背が高い。切れ長な目も相まって迫力は凄まじい。そんなことを考えているとスッと長い腕がこちらに伸びてくる。私は伸びてきたその手に己のそれを重ねた。
この日のことは誰に聞かれても内緒だ。突如としてその空間に降って出てきた私と警戒しつつも迎え入れてくれた彼の秘密の共有をした日だった。
偶然は必然 四色 完