「調子はどう、兄さん?」
「なんだよアル、お前とは毎日会ってるだろ」

 軍病院の病室に顔を出したアルフォンスに、エドワードは苦笑して答えた。入院してから、アルフォンスはしきりにエドワードを気にして聞いてくる。今回の家族愛の事件から、何かを感じたようだ。
 あれから、オーガンはロイの指示の元、収容所に連行されて行った。それを見届けて、エドワードは緊張の連続と心の疲労から解放されたのだが、身体の怠さでうまく動けないためにそのまま病院送りとなったのだ。

「ねぇ兄さん。人を愛して愛されるってそんなに難しいのかな」

 アルフォンスは少し暗いトーンで問う。
 事件は解決したとはいえ、とても悲しいことに変わりはない。

「そうだな。想いが通じるって難しいのかもな。でも、さ。言葉にすれば何かは変わるんじゃないか?」

 オーガンはトリシャにフラれても、貴方の幸せを願ってると直接言っていたら。
 少女はオーガンと面と向き合っていたら。
 確かに言葉にするのは難しい。ウィンリィの時のようにすれ違うこともあるだろう。いや、あれもウィンリィからのたった一言で、オーガンは反論せず口を閉じてしまったのが原因だ。
 直接伝えていたら、もしかしたら。

「じゃあ、」
「エド、アル。お見舞いに来たわよ」

 アルフォンスが何か言いかけたところで、見舞いに来たウィンリィが顔を覗かせた。

「ウィンリィ」

 エドワードはなんて声をかけていいか迷った。どんなにすれ違いの結果だろうと、ウィンリィは両親を侮辱されてショックが大きいだろう。
 ウィンリィは椅子に座ってしばらく俯いてから、顔をあげた。

「あのね、私はどんなことがあっても、伝えようって思うの。私は、エドとアルが大好きよ。いつだってふたりが帰ってくるの待ってるんだからね」

 そう言って、ウィンリィはあの一輪の赤い花を病室に置いてあった花瓶に活ける。
 ふたりともきょとんとして、最初に笑ったのは、アルフォンスだった。そうだ、言葉にしないと伝わらない。

「ちょっと、なによー」
「いや、僕たちって気が合わない?僕もね、兄さんに言おうと思って」

 じゃあ、僕も言葉にしないとね。そう言って差し出そうと思っていたのに、ウィンリィに先越されちゃったよ、とアルフォンスは持っていた赤い花を取り出した。


『愛してる』


 ふたり分の愛情。それをエドワードは照れ臭いながらも、素直に受け取った。














「もう行くの?」
「おう。アルを元に戻すんだからな!大佐に資料もらってんだ。早く行かなきゃな!」

 退院して数日後。再びリゼンブールに戻り、機械鎧を直し終わってふたりはまた旅に出る。汽車に遅れる!と家を飛び出したふたりを、ウィンリィは慌てて追いかけた。
 
「行くぞ、アル!」
「ウィンリィ、ばっちゃん、またね」
「あんたたちっていっつも落ち着きないんだからー!また帰ってきなさいよー!」
「そん時はアップルパイよろしくーー!」

 エドワードは振り返って返事した。

「アル、絶対に元の身体に戻してやるからな!」
「兄さんの手足もね」

 支えてくれる全員の愛情を受けながら、エドワードとアルフォンスは未来のために走り出した。




end...



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8 | 終