「ほぉー!今日もかっこいいね!金狼!んもー!好き!」
「警備の邪魔をするな!離れろ!」
俺の姿を見るなりイノシシのように突進し、飛びついてきた変人をガシッと掴み引き剥がそうとする。この変人・・・もとい女は名前だ。近頃妖術遣いたちと行動を共にしている。出会ってからというもの、毎日のように飛びついてきては引き剥がし、くっついてきては引き剥がすということを繰り返している。そこまで長い付き合いではなくどちらかと言うと少し前に出会ったばかりなのだがこの行動のせいでそんな気がしなくなってしまった。慣れとは恐ろしいものだ。
「えー、いいじゃんちょっとくらいハグしたって〜。」
「よくない!毎度毎度なぜ引っ付く!」
「あ、聞く?聞く?」
「いや、話さなくていい。どうせろくなこと言わないだろう。」
「それはねぇ、金狼が好き過ぎて体が勝手に動いちゃうんですよ〜。」
「くっ、どこからこんな力が!いい加減離せ!」
「あれ?銀狼は今日はいないの?」
「話を聞けっ!」
「わぉ!剥がされちゃった。ざーんねん。」
ふぅーと気疲れのため息を漏らす。それに比べてかんなはケロッとしていた。
「あーあー、金狼、寂しいだろうけど私そろそろ戻らなきゃ。・・・泣かないでね!」
「誰が泣くか!」
名前はニシシっと笑い、じゃーねー!と大声で叫びながらクロムの倉庫の方まで走っていった。全くなんというか自分勝手な嵐のようだ。
俺と名前の出会いはとある晴れた日のことだった。
コハクの命の恩人だという不審な妖術遣いが現れ、少し村にピリついた空気が流れていた頃だ。見張りをしていた俺と銀狼の所に急に森から何かが飛び出してきた。よく見てみると女のようで、見たことも無い顔に即座に攻撃態勢に入って警戒していたらあいつは、こちらをじーーーっと穴が空くほど見つめてきた。いつ何をしかけてくるのかわからん。槍を握りしめる手にも自然と力が入る。
すると彼女は数秒の緊張感の中・・・ひとりでに大泣きし始めたのだ。
「や、や、やっ!やっと人間がいたぁぁぁ!」
「え?え?えーー?大丈夫?君!」
「おい、銀狼!そう簡単に近づくな!」
「しかも言葉も同じだぁぁあ」
「えー!ボロ泣き!?」
「うわぁぁあん!」
「特に武器も持って無さそうだし大丈夫でしょ!君、大丈夫?名前は?」
地面にへたり込みながらしていたぎゃん泣きを少し抑えながら女はぽつりと答えた。
「・・・名前。」
滝のような涙を流していた名前だがようやく落ち着いたらしい。どうするかと考えたが村に入れるわけにはいかない。が、しかし名前の顔に着いていたヒビのような跡があの男と似ていたので彼のところまで連れていった。それからは彼らと行動を共にしているらしい。その日からというもの毎日俺と銀狼のところに来るようになった。何か作業を行っているようで来る時間は朝昼夜と様々だったが。
まるで産まれたあと初めて見たものを親と思い込む雛の刷り込みのように、森をさまよったあと初めて出会った人間に懐いているような感じだった。・・・いや、雛のような愛くるしさは特にないが。
ドッドッドッ!
つい深々と思い出にひたってしまっているとどこからか地鳴りのような音が聞こえた。・・・まさかこの音は・・・。
「いやっほー!金狼!」
「うぐっ!」
「もう今日は二度目は来ないって思ってたでしょー?残念だったね!」
飛び跳ねながら俺の首に手を回してひっついてくるかんな。毎度毎度衝撃が大きすぎる。もう少し普通に引っ付けないものか、こいつは。・・・・・・・・・・・・い、いや!決して引っ付くことに関して許容したわけではなく!!
「あれぇ?顔赤くない?」
「うるさい!」