木の葉の緑色




結局、お店に配達依頼したベッドや電化製品などもリー君といつのまにか帰ってきたガイが運んでくれた。

おかげで少し片付けをすればすぐに生活できそうだ。


「ガイ、リー君、ほんとありがとう!」

●●●は2人に頭を下げる。

「いえ!お役に立てて光栄です!」

「はっは!困った時はお互い様だ!」

ガイの歯がキラリと光る。
久しぶりに見るそれに●●●はくすりと笑う。

「お礼に、夕飯ご馳走させてよ!」




3人ですっかり日が暮れた繁華街に戻り
適当な定食屋に入る。
狭いテーブル席に3人で座る。

「リー君今日はどんな修行していたの?」

「里の外周、逆立ち50周です!!」

●●●は、わああと顔をひきつらせる。
ふと対面に座るリーの腕や手のひらを見ると
今日ついたであろう生新しい傷でいっぱいだった。

「リー君、両手かして」

リーはキョトンとしながら両手を●●●に差し出す。

●●●はその両手に手を添えた。
チャクラが一瞬青白く光ったと思ったら傷が綺麗に治っていた。

それを見たガイがニカッと笑う。


「●●●!お前また数段腕を上げたな!」

そう言われて素直に嬉しい●●●はガイにつられてニカッと笑う。

リーは驚いて自分の両手をくるくる回して何度も見ていた。


3人分の定食料理が運ばれてきた。

「リーー!2分半で食べるぞ!」

「押忍!!」

ご飯もこんな感じなのね、と高速で手と口を動かす2人を見ながら●●●も自分の口へ料理を運ぶ。

ふと気になったことを聞いてみた。

「そういえば、ガイさっき1人でどこか行ってた?」

ガイは少しも手を止めず、おお!と答えた。

「カカシに会ってな!!」


●●●の食事をする手がぴたりと止まる。
ガイを見るともう食べ終わりそうだ…。
そう、か、カカシに会ってたのか。
まず、カカシが生きていることに安堵する。
でも同時にとてつもなく悲しさがこみ上げてきた。
近くに居たんだ、同じ繁華街に…。
ガイに気付いて●●●に気付かないなんて事あるだろうか?いや、ない。
気付いていたカカシが私に会いに来てくれなかったのは、カカシは私に会いたくないんだなあ…。
理由はあの夜だろう。

酷く拒絶してしまったあの夜…。
「砂に行くこと………俺には相談できなかったの?」
そう呟いたカカシの顔が忘れられない。
カカシを傷つけてしまった。

まだ暗い雨が上がったばかりの空の下、砂に出発する●●●はカカシに一言謝ろうと彼の家の前にいた。
でもなんて言っていいのかわからないし、時間もない。
移動商人が後ろから●●●に、行くぞと声をかける。
カカシが好きだった●●●の両親のあのダブルベッドをいつでもカカシが使えるように、自分の生家の鍵をカカシの家のポストに入れて木の葉を出た。

それからもう10年以上経っている。
カカシはポストに入れた鍵には気付いただろうか。
あのベッドはカカシを癒してくれているだろうか。



「●●●さん?」

箸を止めて考え込んでいるとリー君に名前を呼ばれてハッとする。

「あ、ごめん!ちょっと考え事を」

●●●は、あははと笑ってまた箸を動かす。

「ガイ、アスマや紅は元気?ゲンマは?」

●●●はカカシの話題には触れたくなくて
わざと別の人物の話題を振る。
きっとガイはカカシのことならなんでも知っているだろう。
知りたくない事実も知らされてしまうかもしれない。

「アスマと紅は下忍の部下を持ってるぞ!リー達より一つ下のな!」

「へえ!みんなすごいなぁ!」

●●●もなる筈だった下忍のスリーマンセル。
みんなみたいな先生がいるってどんな感じかな、羨ましいな、なんて思った。

「確かカカシも初めて部下がついたな!」

今までの奴らは全員忍者学校戻りになっていたからな、とガイは笑う。

「カカシなんて部下がいても1人で突っ走っていきそう!」
そう言う●●●は話題をカカシから変えたい。

「アイツもだいぶ変わったからな…俺とリーほどではないが上手くやっていると思うぞ!」

リー君は目を燃やして「押忍!!」と拳をつくる。
●●●は笑いながらそれを見る。

カカシが変わった…そっか。
●●●が知っているカカシはもういないのかもしれない。
上手くやってるなら、それでいいっか。
聞くの怖いし、カカシの話題はお腹いっぱい。


「次はまた3年前のメンバーで飲みに行こうよ!」

「そうだな!皆が集まるのなんて●●●が帰ってきた時くらいだからな!よぉし!俺が一肌脱ごう!!」

「ありがとう!」

笑いながらガイにそう言うと●●●は次にリーに顔を向ける。

「リー君もまた一緒にご飯行こうね」

「是非!」
リーは嬉しそうに笑って敬礼してみせた。

●●●はお会計しようとしているガイを店の外へ押し出して、お会計を済ませた。

●●●が定食屋の外に出るとすっかり暗くなっていた。
夕食時の繁華街はまだまだ人がたくさんいる。

「すみません、●●●さん!ご馳走になります!」
リー君が律儀に頭を下げてくれた。

「悪いな、●●●!お前の気持ちしかと受け取った!」

「こちらこそ、重い物沢山運んでもらってありがとう!本当助かりました!」

●●●はそう言って、リーのように敬礼してみせた。



「よし!リー!家までうさぎ跳びで帰るぞ!」

「押忍!ガイ先生!」

そんな2人のやりとりにも免疫がついてきた●●●は、食べてすぐは流石に逆立ちじゃないんだな、と冷静に考えていた。

「そういえば●●●!」

そう言ってガイが●●●を振り向く


「お前…カカシと会っているか?」

●●●はどきりとした。

「な、なんで…?」

「いや、昼間カカシと会った時やけに様子がおかしくてな!俺の思い過ごしか!じゃあな、●●●!」

そういうと、ガイとリーはうさぎ跳びで繁華街の脇の道に消えていった。
お腹も膨れて、懐かしの友にも会えて気分よく
帰ってぐっすり休もうと思っていた●●●に、とんでもない違和感を残して。



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これから先の展開で
拍手小話「桜」を読んでいただいてたほうがよりわかりやすいかと思います。
「桜花爛漫」再開シーンは拍手小説書いてる時に思いついたものでして…
お手数ですが、拍手ください!(笑)