その瞳 ●

死ネタ注意

























「もうっ!カカシなんて知らないっ!」

そう言って●●●はカカシの部屋から出て行く。
乱暴にドアを閉めるものだからダンッと大きな音が部屋中に響く。


取り残されたカカシはしばらくドアを見つめていたが「ふう」と短く息を吐いた。

また●●●を怒らせてしまった。
喧嘩の原因は些細なことなんだけど…
いつもこうなってしまう。

ま、2、3日もすればまた何事もなかったかのように顔を出して来るだろう。



喧嘩したそのまま、任務受付所に向かう。
周りを見渡すと●●●が紅と歩いていた。
●●●のことを目で追っていると目が合ったがフイッと逸らされてしまった。

こりゃ結構怒ってるのかな。

任務が終わったら●●●の家に行ってみよう。
●●●の好きな甘い団子でも買って行けばすぐ仲直りできるだろう。

カカシは任務依頼書を受け取って任務先に向かう。
任務中、気が抜けた時にふと思い出すのは●●●のこと。
まだ…怒ってるのかなあ…。

順調に任務をこなし、夕方には無事に終わった。


朝と同じ任務受付所に報告書を提出する。
カカシの他にも任務を終えて疲れ果てた忍が報告書を提出していた。
●●●の姿はない…。
もう任務が終わって帰宅してるのだろうか。

カカシが早急に団子屋に寄って帰ろうかと思っていたその時、血まみれになった忍が受付所に入ってきた。

「至急応援をお願いします!…他里の忍と思われる者から襲撃を受けました!今も交戦中です!!」

医療班がすぐさま血まみれの忍の介抱を始める。

「すまないが任務が終わって手すきの中忍以上の者は至急向かってくれ!」

ふー…●●●との仲直りは少し先になりそうだ。
カカシは飛び込みの任務の詳細な情報を聞く為に受付所の中心に集まる。
忍が地図を広げ各々に指示を出していた。

「情報によると…北のこの辺りで交戦中。別任務で近くにいる忍も共に戦っている。敵の詳しい情報は分からないが…かなりの数だそうだ」

「各自単独行動はとるな。少数小隊で移動しろ」

説明を聞いていると誰かにポンと肩を叩かれた。

「カカシ、一緒に行きましょう」

「紅……●●●は?」

「まだ任務中みたいね。帰ってきてないわ」

カカシは紅と戦場に向かう。
森の中を移動し、戦場に近づくにつれてクナイや手裏剣の刺さる木々が増えていく。

「……近いな」

カカシと紅は太い木に身を隠し、気配を消す。

少し離れた太い木に、●●●の姿が見えた。
身を隠しているわけでも、気配を消しているわけでもなさそうだ。

真剣な表情で先を見つめる●●●のその横顔は凛としていて、とても美しかった。

まだ…怒ってるだろうか。
カカシは戦場付近にいる事も忘れてそんなことを思った。

何かを覚悟したような●●●は木を蹴りタッと走り出した。


「●●●っ…!」

「カカシ私たちも」

カカシと紅も●●●を追って戦場に突入する。

「かなり、荒れてるわね…」

「ああ…」

見るも無残な肉塊がそこら中に散らばっている。
その屍を超えて木を伝って移動する。




太い木の幹にもたれかかる様に倒れている身体から真っ赤な血液が流れ出て、地面に大きな赤い絨毯を作っている。

右肩から心臓の辺りまで裂けていて、確認するまでもなく一目で生き絶えていることがわかる。

死してなお開いたままの瞳は光を失って濁っていた。
先ほど見た姿とはまるで違う今の姿に、カカシは戦場にいることも忘れてしばらく動くことが出来なかった。

凛として、先を見つめる●●●の横顔。

あの時、その瞳で何を見ていた…?
なぜ…援軍を待たず1人で戦った…?

今となっては、その答えは分からないまま。

カカシはやっと動いた身体でその瞳に手を当て、瞼を下ろしてやる。







カカシは自分の家で、血生臭いその服のまま椅子に座る。
しんと静まりかえるその部屋に電気を付ける気も起こらない。

閉め忘れた窓から気持ちのいい風が吹き込んで来て、カーテンが揺れ動く。


俺の家の窓をコンコンと叩いて●●●が顔をのぞかせると

じゃーん、弁当作ったよ。食べてみて。


俺がクナイの手入れをしてる時、後ろからぎゅっと抱きしめてきて…

…私たちずっと仲良しでいようね!


●●●…ごめん。

団子屋はもう閉まっちゃったよ…

また明日買って来るから
そしたらきちんと仲直りしようよ。


風に揺れるカーテンの陰に柔らかく笑った●●●がひょっこり隠れていそうで…



カカシ…だーいすき!