俺のもの
朝、●●●は眩しい朝日を顔に浴びた。
眩しい…なんでカーテン閉まってないの…
身体がだるいし、どこかヒリヒリする。
正直言って寝足りない。
けど寝てられない。今日も病院に行かなくては。
閉じようとする目をゴシゴシとこすり目を開けると目の前には気持ち良さそうに寝息を立てるカカシの寝顔。●●●の顔がボッと赤くなる。
やっちゃった!
やっちゃったんだ……カカシと!
●●●の胸は寝起きとは思えないくらいドキドキしていた。
●●●は急いでベッドから出ようとするがカカシの腕がなかなか外れてくれない。起こさないようになんとか腕をすり抜けてベッドから降りると急いで服を着る。
●●●は眠るカカシを置いて、カカシの家から自分の生家に戻る。朝ごはんを食べる時間もなかったので昨日カカシが作ってくれた料理を冷蔵庫に入れ、急いでシャワーを浴びた。
「えっ、なにこれ…?」
着替える前にふと鏡に映った自分を見ると、首元にいくつか虫に刺されたような赤い痕。
皮下出血しているように見える。なにこれ?
よくよく見るとその痕は、首元だけに収まらず胸やへそ付近、太腿の内側にまで広がっていた。
昨日まではなんともなかったのに。
「あっ、時間!遅れちゃう」
赤い痕も気になったが体調不良も痒みもないし、とりあえず着替えて病院に向かった。
病院についてからみんなの視線がやたらと気になる。驚いたような顔で見られたり、赤面しながら見られたり…な、なんだろう…?
ふと、受付の前を通ろうとすると銀髪の男性…カカシの姿が目に入り、急いで引き返した。カカシの姿を見ただけで心臓はバクバク鳴って熱い。
カカシはきっと…サスケくんのことを聞きに来たんだ…。
●●●は近くにいた看護師さんを呼び止めた。
「あの…言付けをお願いしたいんですが…」
「ふうー…」
カカシの姿を見つけて急いで逃げてしまった。
なんとなく、昨日の今日で顔を合わせづらい。サスケくんの状況は看護師さんに言付けて来たし…大丈夫だろう。
ちょうど昼休憩なので、●●●はカカシから逃げて職員用の資料保管室に来ていた。なんか今日はみんなから感じる視線もいつもと違う気がするし…薄暗いここは誰もいなくて静かだ。
子供の頃からの図書館通いのおかげでか、本等の書籍に囲まれていると とても落ち着く。
この資料保管室には今までの患者の記録が全て残っている。私の両親のものも、サクモさんのものも…幼い頃のカカシのものも。
全忍の生きた証。存在した証拠だ。
●●●は昼食のサンドイッチを片手に資料を漁る。カカシが幼い頃私を庇って手裏剣を受けた時の記録を探してみる。
『はたけ』の『は行』をツーとなぞる。
あの辺かな…と上の方の棚に手を伸ばすが届かない。●●●は背伸びして手を伸ばす。あと少し…あと少し…
「これ?」
●●●の頭上からぬっと手が伸びてくる。
「そう!」
「はい」
「ありがとう!」
●●●は手元にきたカカシの記録をペラペラと見る。簡単な傷の絵や負傷した部位が細かく書かれていた。何針か縫ったりしてたようだ。
痛かったろうな…。
「ま!昔のことだよ」
「でもかなり深い傷みたいだよ、この数値は傷の重症度を示してるんだけどね…手裏剣で負った傷にしては高いよ」
「…へえ。あの時は俺もまだまだ鈍かったからなぁ」
昔は見ても意味がわからなかった数値や専門用語が理解できる。嬉しい。
あの時の怪我は?私が砂から一度帰ってきた時の………
「本当お前は集中し出すと周りが見えないね」
「え?でもまだ1冊目………………」
「はー…俺よく忍者学校の図書室に●●●を迎えに行ったっけなあ」
そう言われて顔を上げると●●●の目の前にはカカシの顔。え?え?
「えっ!!カカシ!」
●●●はさっと距離をとる。
居るはずのない人物の登場にドキドキと胸が鳴る。
「何よその反応…傷つくんだけど」
「い、いつからいたの?」
「んーさっきから」
「あの……ここは関係者以外立ち入り禁止で…」
「……へえ、そっかあ」
カカシは●●●に詰め寄る。
「じゃあ…誰も来ないね」
●●●はニッコリ笑って迫ってくるカカシを見てゴクリと息を飲む。
「あ、あの」
「シー……」
カカシは●●●を棚に追いやって口布を下ろして口づけをする。
ちゅ、ちゅ、と触れるような口づけから、だんだんと舌を絡ませていく。
「あ…は…………っ…」
「●●●…好きだよ…」
カカシは逃げようとする●●●の腰と後頭部に手を回して引き寄せる。
カカシの深い口づけを受ける●●●の手から力が抜けて、書類が床に落ちる。
「こ、こんなとこで……んっ」
●●●は後頭部と腰に手を回されて逃げられない。手でカカシの肩を押してみてもやはりビクともしない。それどころか●●●の自由を奪っている腕にさらに力を込めてきた。
●●●の足の間にカカシの脚が割り込んできて、その脚が秘部に当たる。
「あっ」
●●●の口から声が出たと同時に、部屋の奥から何やら物音が聞こえた。誰かいる。
「だ、誰かいるよ…やめて」
「………」
カカシは一向に止めようとしない。それどころか服の上から柔らかな胸を触り始める。
「あ…や、やめて」
●●●はカカシの手に自分の手を重ねて制止を図るがまるで止まらない。腰に手を回され、胸を触られ、膝で秘部に触れてくる。
誰かに見られてるかもしれないのに昨日の夜みたいにするつもりなの?
私は、カカシ以外には見られたくない…カカシだから見られてもいいかなって思えたのに……。
●●●の目から一筋涙が溢れた。
カカシは●●●の着物の中に手を入れて直接胸に触れようとする。
コーン…コーン…コーン…
昼休憩の終了を知らせるベルが鳴った。
その音を聴いてカカシは●●●を解放した。
「………続きは家でね」
「…………」
カカシはサッと目の前から消えた。
●●●はバラバラになった資料を片付け、乱れた服を元に戻して資料保管室を出た。
●●●はモヤモヤとしていた。
カカシは…私の体を人に見られることなんてなんとも思ってないの…?私は誰かに見られるのなんていやだ。私は見世物じゃないのに…。
「●●●さん、●●●さん!」
「…はい?」
廊下を歩いていると、看護師に呼び止められた。手には包帯を持っている。
「首の所……やっぱり隠した方がいいですよ」
「え?首…ですか?」
●●●は自分の首を触る。
「気付いてなかった?その皮下出血……口吸いの痕じゃない?」
「…皮下出血?」
……口吸い?
●●●は廊下の窓に映る自分を見た。痛くも痒くも無いのですっかり忘れてた…。朝、家の鏡で見たこれは………口吸いの痕!?…なんで早く気がつかなかったんだろう。朝からずっとみんなに…みんなに見られてたんだ。●●●の顔は真っ赤になった。
「●●●さんのお相手の方はかなり独占欲が強いんですね」
「…えっ…」
看護師は真っ赤になった●●●を座らせて首に包帯を巻いていく。
つけた相手は1人しか思いつかない。
いつ…?いつつけたの…?
昨日はあのまま眠った筈なのに。
そもそもなんでこんな目立つ所に……!
●●●の中のカカシへのモヤモヤがさらに膨らむ。……ゆ…許せん。
●●●は看護師に包帯を巻いてもらい、お礼を言って職務に戻る。午後からは外来患者の対応だ。
「●●●さん、どしたんスか…その首の包帯」
「あ、これ?ちょっとね…」
「●●●さん自分の首の怪我は治さなくて平気なんですか?ところでサスケくんはどうですか?」
「えっとサスケくんは明日には退院できるよ」
「オイ!●●●!その首元の包帯はなんだ!青春の傷でも負ったか!?」
「大丈夫!ちょ、ちょっとね…」
首元のことを聞かれるたびに顔が熱くなる。
みんな心配してくれているのは有難いが…やはりなんだか人の目線が痛い。
何やら朝から感じてた目線はこの首元のせいだったのかな…。
病院での1日が終わり、生家への帰路につく。カカシはもう帰っているのかなー…。カカシに言いたい事は沢山あるが、なんとなくちょっと…かなり?…顔を合わせづらい。
あ!そういえば…昨日割られてしまったアパートの窓ガラスを直しに行かないと。深夜だったから業者も手配していない。
●●●はくるっと体の向きを変え、アパートの方へ向かう。混み合う繁華街の屋根を伝って走って行く。
「●●●…どこ行くの」
進行方向の物陰からスッと姿を現したのは今一番会いたくない男性の姿…。
「昨日、アパートの窓ガラスが割れちゃって…直しに行かないと」
「じゃ俺も行く」
「えっ!…なんで?」
「なんでって……ダメなの?」
「……ダメ…です」
アパートは私の家だし…。
大人になったし、一線も超えてしまったし…とても子供の頃のように実家で一緒には暮らせない。それに、我愛羅くんも『また来る』と言っていた。我愛羅くんのいろんな誤解を解くまではアパートの場所をカカシに知らせるわけにはいかない。我愛羅くんとカカシが鉢合わせになったらどうなるか……。
「そこで砂の我愛羅と会うから?」
●●●は、ウッとカカシを見た。
“アパートで”我愛羅くんと会ってたことも知ってるんだ…てことは、我愛羅くんとの……も見られてた?
頬を染めた●●●が黙って考えているとカカシは●●●を睨む。
「図星?俺…浮気は許さないよ」
「あの…これには訳が」
「昨日我愛羅とアパートで何してたの?」
な、なんて言えばいいのかな…。
答えられないよ…。
「●●●は俺のモノでしょ」
「………あの…ガラス直したらすぐに帰るから」
モノ?私はモノなの?
私は…カカシの恋人になれたのかもしれないと嬉しかったのに。
だから誰かに見られていても私の意思関係なく、所構わず…しようとするの?
考えてみれば『好き』とは言ってくれたけど…それは『恋人になる』って事なのかな…?
恋愛に疎い●●●には普通の男女の恋愛が分からない。
●●●はアパートへの道を急いだ。