桜が散ったその後に
次の日、●●●は住むアパートを探しに出かけた。お腹が大きくなると動き辛くなるので動ける今のうちに色々片付けておかないと。つわりがなくて本当に良かった。
「こんにちは」
「…あ、こんにちは」
●●●がアパートの間取りが張り出されている掲示板を見ていると後ろから声をかけられた。
茶色の癖っ毛に、大きなマントにカメラ。顔にはカンクロウ君に似た感じの紫色の化粧が施されている。
「…お部屋探しですか?」
「はい……あなたも…?」
「ええ…僕は諸国を巡る写真家なんですがね、大好きなこの短冊街に拠点を設けようと思いまして」
「そうなんですか……」
ふと●●●がその男性の背後に目をやると、懐かしいカカシの姿が目に映った。ちっとも変わってないその姿にドキリとし、咄嗟に目の前の写真家の男性の影に隠れた。
な、な、な、な、なんでカカシがここに!!
どうしよう、逃げなきゃ…!
●●●の顔がみるみるあおくなっていく。
そんな●●●の切羽詰まった雰囲気を感じ取ったのか、写真家の男性は自分のマントを広げ●●●をカカシから見えないように隠してくれた。
カカシはキョロキョロ辺りを見回し、どこかへ去って行った。
「彼、もう行っちゃいましたよ」
「ありがとうございます…助かりました…」
●●●は写真家の男性にお礼を言って頭を下げた。
「とんでもない…あ、僕はスケア。写真家で諸国を巡って…ってさっき話したっけ」
「ふふ……さっき聞きました。はじめまして、私は●●●といいます」
「ところでさっきのは…写輪眼のはたけカカシ?」
「…そうだと思います」
「何故逃げてるの?」
「……………」
「って……ごめん。初対面で図々しく聞いちゃって」
「……あ、いえ……一言では言えなくて…あの手…怪我されてますよ」
「あれれ、……いつのまに」
●●●は青白い光を当ててスケアの傷を癒した。
「わあ、すごいですね。ありがとう」
そのとき、ぐぅぅとスケアのお腹が鳴った。時計を見るともうお昼近い。スケアは顔を赤くして鼻の頭を指でかいた。
「忙しくて朝も食べていなくて…よかったら一緒にお昼食べませんか?お礼にご馳走させて下さい」
「………いえ、そんな」
「そう言わずに」
●●●はあまり食欲が無かったが、折角だからお供することにした。適当にお店を探して入る。スケアは定食を●●●は蜜柑ゼリーを注文した。
「砂隠れの里の埋もれた仏像…あれは見事だよね」
「ああ、ありますね。砂隠れは砂肝が美味しかったなあ」
お互い他国を点々としていた●●●とスケアはすっかり仲良くなった。
「●●●さん、それだけしか食べないんですか?」
●●●の目の前には甘そうな蜜柑ゼリーが一つ。
「最近こういうものしか食べられなくて…」
「体調悪いんですか…?」
「つわりの一種だと…実はいま私…妊娠中で」
「………えっ…!?」
それを聞いたスケアは目を大きく見開いて驚いた。スケアの持っていた箸がその手をすり抜けてポロリと床に落ちた。
え?そ、そんなに驚く…?
「…失礼ですが、相手の方は…」
「えーと…相手には秘密なんです」
「それはまたどうして…」
「…私の片思いで…」
「……………はあ?」
スケアは意味がわからないとでも言いたげな顔で●●●を見た。
●●●はゆっくりゼリーを平らげ、2人で店を出て短冊街の街並みを楽しみながら不動産屋まで歩いて行く。
「●●●さん。あなたは少し独走しすぎなんじゃない?相手の人と…きちんと話した方がいいですよ」
「…ありがとうございます。でももう決めたので」
●●●は愛おしそうに目を細めて自分のお腹を優しく撫でた。
スケアはそんな●●●を見て、立ち止まり拳を強く握る。
「もう…我慢できませんね、あなたには」
「…え?」
歩みを進める●●●が立ち止まったスケアを振り返ると、癖っ毛の茶髪ではなく 見覚えのある銀髪になっていた。マジックのような変化に●●●は嫌な予感がした。
「スケア…さん?髪…」
スケアは続いて顔の化粧を取る。その顔を見た瞬間、驚いた顔の●●●は勢いよく走り出した。
な、なんで?なんで?いまの、カカシだった!
スケアさんがカカシになった…!?
いや、それよりも…
1番知られたくない事を1番知られたくない人に話してしまった…!
きっとカカシは責任を感じてしまう。
折角短冊街まで逃げてきたのに!
「●●●…お前、走るなよ…」
いつのまにか●●●の進行方向にカカシの姿がある。●●●は急いで方向を変え、また走りだす。
「ついてこないで!」
「…ふざけるなよコラ」
●●●の足はピタリと止まる。
辺りを見渡すと前にも後ろにも右にも左にも…四方八方にカカシの姿があり、逃げられない。影分身だ。どこかに隙があるはず…そこを抜けられれば………
「…まだ逃げる気?」
「………」
そっちが影分身で来るならこっちも。分身の術は忍者学校を卒業した●●●にも使える数少ない基本忍術のひとつ。
「分身の」
印を組もうとする手をカカシに掴まれる。
「…いい加減にしなよ」
「……カカシがついて来るから…」
「……………」
「………もう私のことは放っておいて…絶対迷惑かけないから」
そう言い放ち、●●●はカカシの手を払う。
折角1人で生きて行く覚悟を決めたところなのに出て来ないでよ。
「お前、何勝手なことばっか言ってるの?」
「…………」
「……帰るよ」
「カカシには…恋人がいるんでしょう」
「………いるね」
ほら…やっぱり、いるんじゃないか。ならばなんで、私に構う?●●●の胸がズキズキ痛む。
「その人と…うまくやってよ」
「………………●●●がそう言ってくれるなら…心置きなく…」
●●●は泣きそうになるのを必死でこらえて俯いた。
はやく、はやく木の葉に帰って…目から涙が溢れちゃう。はやく。
カカシはそんな●●●を包み込むように優しく抱きしめた。
「●●●、俺と結婚しよ」
カカシに抱きしめられた●●●は驚いた顔をカカシの肩口から覗かせた。涙が伝う頬にカカシの髪の毛が当たる。懐かしいカカシの匂いがする。
「けっこん……」
「うん」
「私と?カカシが?」
「うん」
「…恋…人は」
「●●●でしょ」
「飲み屋に…恋人がいるって…」
「……………誰の?」
カカシはハアとため息をついた。
●●●から流れる涙は止まらない。カカシはその涙を手で拭いとる。
「俺の恋人はお前でしょ、●●●」
「……」
「急にいなくなってさ…お前は何度俺を不安にさせるのよ…」
●●●を再び抱きしめるカカシの肩は少し震えている。
「頼むから…もう俺から離れていかないで」
「………………」
「私……戻ってもいいの…?」
木ノ葉の里に…カカシの隣に…。
「…どうしよっか」
「……え」
「子どもの名前」
●●●は顔を赤らめてカカシの胸に飛び込んだ。
「はじめて●●●から来てくれた」
カカシは笑顔で胸の中の●●●を包み込む。
その日はカカシと●●●とで宿屋に泊まって、明日木ノ葉に帰ることにした。
「なんだ、明日木ノ葉に帰るのか」
「はい…すみません」
「しっかし、●●●の相手がお前だったとはな、カカシ…」
●●●とカカシは同じ宿屋の綱手の部屋に訪れた。綱手は昼間から酒を飲んでいる。
「はあ…」
「●●●相手にお前も大変だろうが…気張れよ」
「…そうですね…色々と」
2人して…失礼だな。そんなに私は疲れる女だろうか……。
その日の夜、綱手師匠は乗り気でないカカシを引きずって飲みに出かけていった。●●●は1人で宿泊部屋の窓際に座りゆっくりと過ごしていた。
綱手師匠と飲み比べでもしたのか、カカシは酔っ払って部屋に帰って来た。こんな酔ったカカシは初めて見る。綱手師匠は全然平気そう。
●●●は綱手に向き直り、深く頭を下げた。
「私たちは明日朝早く短冊街を出ます………どうかお元気で、綱手師匠」
「…うむ。●●●、今だけでもお前は自分の気持ちではなく赤ん坊を第一に考えて行動するように!いいな!」
「ハイ、師匠!」
綱手師匠は再び夜の繁華街に消えていった。
師匠、まだ飲むのか…。
カカシは酔っ払って床に寝てしまったので、カカシに掛け布団をかけて●●●もカカシの隣に潜り込んだ。カカシの腕を抱いて眠る。あったかい。
●●●が目覚めると、布団の上に寝ていた。
「●●●…体冷やしちゃダメでしょーが」
そう言いながら現れたカカシは暖かそうな飲み物を2つ持っていた。2人で軽く朝食をとって、短冊街を出た。
カカシは●●●に合わせてゆっくり歩く。
「おんぶしようか?」
「…大丈夫だよ。行きも1人で来たんだから」
「本当…無茶ばっかしないでよ…」
「何でスケアさんに変装してたの?」
「…短冊街では忍装束は目立つからね」
「……ああ、確かに目立ってた」
「ま、その影分身のお陰で●●●は完全に「スケア」を「カカシ」とは思わなくなったわけだけど」
「…スケアさんのが優しかった…」
「………そう言わないでよ」
「あはは」
2人は木ノ葉に帰り、晴れて結婚した。
結婚はしたが、大蛇丸の『木の葉崩し』の影響で里がボロボロなので祝言は控えた。●●●が見た大蛇はパフォーマンスなんかじゃなかったらしい。
あと、サスケやパックンが言っていた『飲み屋の女』の正体はいつの日かカカシに忘却術を使った同級生だった。忍者をやめて今は飲み屋で働いているらしい。パックンには一回だけ行ったデートの現場を見られ、サスケくんには一方的に言い寄られてる所を見られたそうだ。
「いやー本当大きくなってきたね」
「もうすぐだね」
ソファに座っている●●●の大きなお腹を、幸せそうな笑顔で大切そうに撫でるカカシ。
あれ…この場面どこかで見た。
どこだっけ。
ま、いっか。
おしまい
あとがき
終わったっ!!お疲れ様です!!
このような超長編を読んでくれた夢主の皆さま!!ありがとうございましたっっ!!
色々ツッコミどころもあるかと思いますが…それは心に留めておいていただいて(笑)
しかし…最後の我愛羅の更生ぶりは凄まじいな。ナルトくんとの戦いの後の我愛羅は本当人が変わったかのよう。私だったらあそこで我愛羅に着いて行く!!
実は私…カカシよりも我愛羅が好きでして『砂へ』は全て後付け話なのです。このサイトが出来立てホヤホヤの頃から来てくれてた方はご存知だと思うんですが、最初はカカシと離れて再会して終わり……なお話でした。第3章の『桜花爛漫』で完結な予定だったのです。
そこに多少無理やり管理人の大好きな我愛羅を投入致しました。そして終いには『我愛羅落ちでもいけるか?』とまで思いましたが、夢主様からの『カカシ落ちでお願いします』の一言で、道を間違えることなくこういったエンドになった次第でございます。
私は本当計画性のない人間で、思いついた展開をアレもコレもとごちゃごちゃ混ぜ込んだらこんなに長くなってしまいました。読む方も大変ですよね。すみません。
また妄想が膨らめば何かを書き始めるかも…
それまで少し短編で遊びます。次の話でスケアさん視点をちょちょいと、簡単に書こうと思ってます。お時間があれば読んでみてください。
ここまで書けたのも夢主の皆様の暖かい拍手、メールのおかげです!本当に何度励まされたことか…!本当にありがとうございました!
「名前はどうしよう!」
「んー…そうだなあ…はたけ………ミミズ?」
「み、みみず!?」
「サクモ、カカシ…と来てるからミミズ…ウネもいいね」
「…………畝?」
「そう。カカシもミミズもウネも畑には必要でしょ」
「……………」