春の眠り*




「やー、お早う諸君!」

「カカシ先生遅いってばよ!」

「んもう!毎日遅刻ばっかり!」

「……いつものことだ」


第七班の今日の任務は畑にカラス除け装置の設置。
ま、こいつら3人で余裕だろう。

現場に着くと、依頼主に挨拶して任務開始。
俺は少し離れたところで読書をはじめた。

ナルトとサクラがぎゃあぎゃあとやり合っている。
サスケはそれを見てため息を漏らす。

そんな3人を一瞥し、微笑んでから手元の本に目線を戻す。

昼を少し過ぎて、任務が終わった。
早めに解散して任務報告書を提出しに行く。
火影服でない火影様がカカシの後ろを通り過ぎる。

「…火影様今日は出かけるんですか」

俺は任務受付の忍に問うた。

「今日はどこかへ視察へ行かれるそうですよ」

火影様の姿をすこし目を追っていれば、
受付の忍から はい結構ですよ、と声がかかる。

俺は任務受付所を後にする。
この後は特に予定もない。

気持ちいい風が吹き頬を撫でる。
日差しも暖かく柄にもなく気分が踊った。

気持ちのいい場所で読書でもしよう、と
俺は火影顔岩の上に移動した。

俺が到着すると同時に、誰かが里の方へ降りて行く気配を感じた。


少し里を見渡すと、懐かしの忍者学校が目に入る。

唐突に記憶が蘇ってきた。








「先生、トイレに行ってきまする」

ああ、またはじまった。
今はなんだっけ。
医療忍術についてだったか。
この前は花の効果と花言葉の本だったな。

●●●が教室を飛び出して行った。

「....まーたあいつ帰ってこないんじゃないの」

「ったく.......カカシ、悪いが15分くらいして帰らなかったらまた見てきてくれるか」

いつも俺がこの役に選ばれるのは、
同級生を残して一足先に下忍になることが決まっているから。

聞かなくてもいい授業に出てるのは●●●と居たいから。

カカシは授業そっちのけで時計ばかり見ていた。
はやく●●●のところに行きたい。
案の定、●●●は15分過ぎても教室に帰ってこなかった。

「先生、●●●見てきます」

「あ?もう15分か、悪いなカカシ」

ガイが俺が逆立ちで学校中のトイレを探して来よう!などと吠えているが無視する。

やはり●●●は図書室にいた。
読書より昼寝がしたくなるくらい気持ちいい日が入っている。
●●●を横目に昼寝するのもありかもしれないなんて考えた。

ガラリとドアを開けると
●●●は待ってました、と言わんばかりに俺を見た。

「カカシ、あの本取ってくれない?」

「どれ」

あの1番上の、と●●●が背伸びする。
●●●の後ろから1番上の棚に手を伸ばすと、自然と体が近づいた。
シャンプーだろうか、優しい匂いがする。

「これ?」

「違う!その…」

「これ?」

「違う!その2つ横!」

何度もとぼけてみたのは●●●とのこの距離をできるだけ長く過ごす口実。
何やってんだ俺は……。

そのあと少し●●●と図書室にいたが、担任にウソをつきに一度教室へ戻る。

休み時間に入ったが、●●●は戻ってこない。
暇を持て余しているとクラスメイトのガイが話しかけてきた。

「カカシ!●●●は見つかったのか!?俺と一緒に逆立ちで探そう!!」

「………なんでいつも逆立ちなのよお前は」

はあ、とため息をつく。

「待ってろ、●●●ー!!」

ガイは逆立ちして●●●を探しに行った。
図書室にいる事は言ってない…ま、いっか!











火影岩の上で薄い手元の本に視線を戻す。


ガイじゃないけど……、
あの頃のことを青春と言うのだろうか。

10年以上会っていない●●●を思い出した。