春の再会




●●●の意識は段々と現実に引き戻される
夢でもみていたようだ。
薄っすらと目を開ける。

「…ふあー…っと、よく寝た」


●●●はそう言って立ち上がる。

目の前に自分よりはるかに背が高く体格のいい銀髪の男性が立っていた。
●●●はどこか懐かしい気分になる。

見覚えのある懐かしい銀髪。
●●●は無意識に目の前の銀髪の男性を見つめていた。

視線を感じたのか、目の前の銀髪の男性も●●●を振り返った。
片目しか顔の情報がない彼は、私をみて驚いたように目を大きくした。
だけどすぐに元に戻る。

●●●ははっとした。
知らん奴にいきなりじろじろと見られたらそりゃ驚く。

「す、すみません!ジロジロと…」

頭を下げながら銀髪の男性をちらりと見ると
彼はニコリと微笑んでくれた。
怒ってはないようだ。

少し寝てしまったけど火影様のところに行こうと、地面に置いた市女笠を手に取ると銀髪の彼に話しかけられた。
会話をしているとやはりどこかカカシに似ている気がした。
だが、柔らかな雰囲気はカカシとは真逆、正反対。

きっと目の前の彼が持つ銀髪と口布が、かつてのカカシを思い出させているだけ。
現に目の前の銀髪の彼も、私を見てなにも感じていないのだから。

「………なにか?」

しまった、また無意識に見つめてしまっていたようだ。
銀髪の彼に頭を下げて言い訳する。


「……どんな奴です?」


●●●は固まった。
自分の中で答えはもう分かってるけれど、カカシに似ている目の前の銀髪の彼に言うのはちょっと恥ずかしい。


思い出すと自然と口角が上がる。
同じ家で、長いこと寝食を共にした家族であり、



「……あなたと同じ髪の色でした」




忍者学校では同級生であり、良き友人。




「…アイツは、あなたと違ってとっても無愛想なんですよ。笑った顔なんて見たことあったかなってくらい」



そして、似た悲しみを背負う理解者。




「それにあなたと同じような口布をいつもしてました。…やっぱり似てます」



そして、私の1番大切な人。


会えなくてもその思いは変わらなかった。
離れて身にしみたカカシの大切さ。


でももしカカシに想う相手がいたら
その事実は知りたくないし、邪魔もしたくない
臆病者は会いに行けない。


ふ、と目の前の銀髪の彼に笑いかける。


どこかで元気で幸せならそれでいい。
私の集めた知識と技術をこの里に伝えれば
間接的にでもカカシの役に立つはずだ。
そう、木の葉の里に伝え……
「あ!私、火影様のところに行かないと……では、これで失礼します!」


いけないいけない、大切な報告を忘れるところだったと走り出す。
それと同時になぜかバランスを崩してしまい、銀髪の彼が受け止めてくれた。
体が彼の腕に包み込まれ、ふわりと浮く。
驚いて私は彼を見るが
彼はそのまま中々腕を離してくれない。

「……あの?」

●●●は内心ドキドキする。
男の人の腕って安心感あるなあ、なんて思っていたからだ。


「すみませんね、いきなり引っ張っちゃって。今日火影様は執務室にはいない筈ですがね……」

そう言って彼は顎に手を当てる。

ああ、私はいま彼に引っ張られたのか。
彼は火影様の不在を教えてくれようと引きとめてくれたようだ。

お礼を言ってから、胸のドキドキに気付かれないように今度こそ足早に銀髪の彼の元を去る。

しばらく歩いてふー、と呼吸を整えてから
花屋で花を買った。

久しぶりに訪れる木ノ葉の墓地。
広い墓地に人は片手で数えられるほど。
●●●は両親の眠る墓に花を供えた。
仲が良かった両親は同じお墓に眠ってる。

「ただいま戻りました」

手を合わせて報告するが、返事はない。
そりゃそうか。
強めの風が●●●の頬を撫でる。
「おかえり」が風になって聞こえた気がした。

次はお世話になったサクモさんのお墓に花を供え、手を合わせる。

「サクモさん、ただいま戻りました」

●●●は墓石に刻まれた名前をじっと見る。
「カカシはちゃんと生きていますか?ごはん食べていますか…恋人とかも、いるのかなあ…」

3年前帰省した時も今も、サクモさんのお墓にはカカシの事ばかりたずねていた。
サクモさんだってカカシの事心配だよね。

「また来るね」

●●●は眠る両親とサクモにそう言って、
木の葉の繁華街に向かう。

しばらく木の葉のアパートに入るので必要最低限の家具家電、生活用品を買い揃えなければならなかった。
生家に帰れば気持ちのいいベッドも家具も全て揃っているのだが、カカシの家の隣に立つそこに近づく勇気はなかった。

大きなものは後で配達してもらう事にして、
歯ブラシやティッシュなどの細々したものを順に買っていく。
いつのまにか両手いっぱいの袋。
荷物を置きに一度アパートに戻ろうかと歩みを進める。
すると向こうから見知った顔が歩いてくるのを見つけた。


「オイ!●●●じゃないか!!」

そこには全身緑の2人が居た。
リー君なんか大きくなってる!
子供の成長速度ってすごい。
右手の荷物を地面に置いて、懐かしい2人に笑って手を振る。



「すごい荷物ですね!お持ちします!」

「ほんとう?助かる!ありがとう!」

普通に運んでくれていいのだが、リー君は逆立ちをはじめる。
私は言われた通りにリー君の足に荷物を引っ掛けていく。
かなりの重さと量だ。
でもリー君はものともせず逆立ちのまま歩き始めた。
リー君の後ろを●●●も歩き始めたところで、今日の夕飯にガイを誘おうと考えた。

「ねえねえ、ガイ!このあと…」

そう言いながらガイに振り向いたが、さっきまでそこに居たガイがいない。

「…あれ?」

●●●はあたりをキョロキョロ見渡す。
やはりいないようだ。



「●●●さん!家の方角はこちらですか!」

「え?…あぁ!そうそう!ごめんね!」

もう●●●よりだいぶ先を逆立ちして進むリーに小走りで追いつく。

ガイはどこに行ったんだろ?なんて気にしながら、リー君に道案内をする。


201836