― サクラサク ―
煉獄さん高校生の学パロ※宇髄さんは煉獄さんと同い年
煉獄が笑う表情の中で一等好きな表情がある。
あれは確か高二の文化祭の時。家族が来ていたみたいで何か話した後、安心したように笑った顔。
いつだって釣り上がっていた眉がへにゃりと下がった。心許している人にしか見せないだろうそんな笑顔。
そんな新しい表情を見たあの時に私は恋に落ちたんだ――。
* * *
「ねえ、いいの?」
「うん……、辞めとく」
あれから一年半。本日はお日柄も良く、門出にはピッタリの卒業式日和。
これで桜でも咲いていたら最高だけど、蕾は大きくなっている最中で開花は間に合わなかった。
隣に立つ友達の目線が私と向こうに見える光景を行ったり来たりしている。
向こうに見える光景は沢山の女子。今日一緒に卒業する子やリボンの色からすると下の学年の子たちまでいるっぽい。
そんな女子の輪の中で頭一つ抜けて見えるのは金色に赤が混じった髪の毛。隣に銀髪も見えるから仲良しの宇髄も一緒だろう。
「今からあの輪に入る勇気も元気もない」
「あれはボタンどころかネクタイも何もかも残らなさそうだね」
式も無事に終わって帰る間際の二人を捕まえて皆一様にボタンを貰いに行っているんだろう。
これはもう無理だ、諦めよう。そう思って友達を引っ張り踵を返して外に出る門へ向かう。
「これは弟も使う予定だから何一つ渡せない! 話はこれでお終いだな!」
場所の離れた私達にまではっきり聞こえる声量。聞こえた言葉に誰にもあげないんだ、とほっとしたのと、私も貰えないじゃん、って残念さを学校の敷地内に残して門を越えて外へ出た。
・・・
《煉獄本当にボタン誰にもあげていないっぽいよ》
春休みに部屋でダラダラしているとスマホがメッセージ受信を伝える。
《貰えるか聞いてみれば?》
続けて来たメッセージにビックリする。弟君が使うって言ってたし貰えないでしょ。
《無理だよー》
《煉獄のアドレス知ってる数少ない女子なんだからワンチャンあるでしょ》
ワンチャンって……。ノーチャンスだよ。
確かに男子ならいざ知らず、女子の中で煉獄のアドレスを知っているのは割とレアだ。
でも連絡先知ってるの私だけじゃないし。それで連絡して断られたら立ち直れるか分からない。
もやもやしているとまたメッセージが来る。
《聞かなくても後悔するだけだよ!》
まあ、そうだよね。後悔するよね。
現にやっぱり卒業式の時自分も行けば良かったかもなんて思っている。
うだうだ悩んでもしょうがない。女は度胸だ。
そんな春休みの暇さと友達の変な後押しに私は煉獄にメッセージを送る。
まずは軽くスタンプでも……。直ぐに既読が付いたので間髪入れずに挨拶を簡潔にする。
春休みに入ってからのお互いの近況とかを適当にやり取りしながら今日の本来の目的を意を決して聞く。
《そういえばさ、煉獄の制服の第二ボタン残ってたりする?》
《ボタンか? あるぞ》
《それ、貰えたりする?》
さっきまでテンポ良く返信が来ていたのにパタッと止まった。
どうやって断ろうか悩んでいるのかな。直接断るって勇気いるもんね。
《私じゃなくてね、私の友達が欲しがってて。それで聞いてみたんだけど、駄目かな?》
……既読は付いているけど返信が来ない。
気まずい。今さっき送った友達が欲しがっている発言も早速後悔する。
やっぱりなし! って送ってしまおうか……。
次にどうすればいいか考えているとスマホが震えた。
《いいぞ》
ほらやっぱり駄目だ……え?
予想外の返答に来たメッセージを見直す。何度見ても《いいぞ》の文字。いいの? え? くれるの?
《今これから会えるだろうか?》
《大丈夫だけど。いいの?》
《学校近くの公園で。一時間程で着く》
私の質問には答えず、待ち合わせ場所の指定をしてきた煉獄。詳しい話は公園で、って事か……。
戦に出るように頬を一度叩いて気合を入れて、私は出かける準備を始めた。
「ねえ、いいの?」
「うん……、辞めとく」
あれから一年半。本日はお日柄も良く、門出にはピッタリの卒業式日和。
これで桜でも咲いていたら最高だけど、蕾は大きくなっている最中で開花は間に合わなかった。
隣に立つ友達の目線が私と向こうに見える光景を行ったり来たりしている。
向こうに見える光景は沢山の女子。今日一緒に卒業する子やリボンの色からすると下の学年の子たちまでいるっぽい。
そんな女子の輪の中で頭一つ抜けて見えるのは金色に赤が混じった髪の毛。隣に銀髪も見えるから仲良しの宇髄も一緒だろう。
「今からあの輪に入る勇気も元気もない」
「あれはボタンどころかネクタイも何もかも残らなさそうだね」
式も無事に終わって帰る間際の二人を捕まえて皆一様にボタンを貰いに行っているんだろう。
これはもう無理だ、諦めよう。そう思って友達を引っ張り踵を返して外に出る門へ向かう。
「これは弟も使う予定だから何一つ渡せない! 話はこれでお終いだな!」
場所の離れた私達にまではっきり聞こえる声量。聞こえた言葉に誰にもあげないんだ、とほっとしたのと、私も貰えないじゃん、って残念さを学校の敷地内に残して門を越えて外へ出た。
・・・
《煉獄本当にボタン誰にもあげていないっぽいよ》
春休みに部屋でダラダラしているとスマホがメッセージ受信を伝える。
《貰えるか聞いてみれば?》
続けて来たメッセージにビックリする。弟君が使うって言ってたし貰えないでしょ。
《無理だよー》
《煉獄のアドレス知ってる数少ない女子なんだからワンチャンあるでしょ》
ワンチャンって……。ノーチャンスだよ。
確かに男子ならいざ知らず、女子の中で煉獄のアドレスを知っているのは割とレアだ。
でも連絡先知ってるの私だけじゃないし。それで連絡して断られたら立ち直れるか分からない。
もやもやしているとまたメッセージが来る。
《聞かなくても後悔するだけだよ!》
まあ、そうだよね。後悔するよね。
現にやっぱり卒業式の時自分も行けば良かったかもなんて思っている。
うだうだ悩んでもしょうがない。女は度胸だ。
そんな春休みの暇さと友達の変な後押しに私は煉獄にメッセージを送る。
まずは軽くスタンプでも……。直ぐに既読が付いたので間髪入れずに挨拶を簡潔にする。
春休みに入ってからのお互いの近況とかを適当にやり取りしながら今日の本来の目的を意を決して聞く。
《そういえばさ、煉獄の制服の第二ボタン残ってたりする?》
《ボタンか? あるぞ》
《それ、貰えたりする?》
さっきまでテンポ良く返信が来ていたのにパタッと止まった。
どうやって断ろうか悩んでいるのかな。直接断るって勇気いるもんね。
《私じゃなくてね、私の友達が欲しがってて。それで聞いてみたんだけど、駄目かな?》
……既読は付いているけど返信が来ない。
気まずい。今さっき送った友達が欲しがっている発言も早速後悔する。
やっぱりなし! って送ってしまおうか……。
次にどうすればいいか考えているとスマホが震えた。
《いいぞ》
ほらやっぱり駄目だ……え?
予想外の返答に来たメッセージを見直す。何度見ても《いいぞ》の文字。いいの? え? くれるの?
《今これから会えるだろうか?》
《大丈夫だけど。いいの?》
《学校近くの公園で。一時間程で着く》
私の質問には答えず、待ち合わせ場所の指定をしてきた煉獄。詳しい話は公園で、って事か……。
戦に出るように頬を一度叩いて気合を入れて、私は出かける準備を始めた。
* * *
緊張しながら待ち合わせ場所へ向かうと煉獄が既にベンチに座って待っていた。
公園に植えられている桜は卒業式の時は蕾だったのに、今は可愛いピンク色の花弁を開いている。
制服以外で会うの初めてだとベンチに向かいながら気付いて変な格好じゃないかと慌てるけどもう遅い。
足が震えそうになるのを抑えて煉獄の前に立つと、煉獄は自分の横を叩いてここへ座れと促す。
「卒業してこんなに早く会えるとは思っていなかったな」
「そだね」
「第二ボタンに関してなんだが……」
静かに煉獄の隣に座ると前置きもそこそこに本題が切り出された。
「その友達というのは果たして誰だろうか?」
「えっ?」
「宇髄から聞いたのだが、こういう場合は大抵友人ではないらしい」
宇髄あんたなんて事を煉獄に吹き込むんだ。
ここで告白するとか心の準備出来ていないし無理無理。どうにかしてこのピンチを切り抜けたい。
「友達だよ。その子ずっと煉獄の事が好きでね……」
「ふむ。ならその友達とやらに伝えてほしい」
たまにどこを見ているか分からなくなる大きな目が私を真っ直ぐ見る。
「俺は君の本音が聞きたい」
それは私の“友達”ではなく私に向けられた言葉で。もう完全に友達イコール私になっているよ煉獄……。結局眼を逸らすことが出来ず私は早々に白旗を上げた。
「友達は……いない」
「? 君に友達は沢山居るだろう?」
ここまで追い詰めて天然の返しをする煉獄に文句を言いたくなる。
「煉獄のボタンが欲しいって言った私の友達の話は嘘」
「むぅ?」
「私が煉獄の第二ボタンが欲しくて連絡しました! 嘘ついてごめんなさい!」
頭を下げて謝罪するけど、顔を上げるのが怖い。
「良かった」
どんな怒られ方や呆れられ方をするかと思っていたら予想外の言葉。
おずおずと顔をあげて煉獄を見ると、いつもはキリッとしてる眉毛がへにゃりと下がっている。目が離せなくて好きになったきっかけの表情が目の前にある。
「千寿郎――弟が数年後使うから何も渡せないと言って、卒業式に断ったのも嘘ではないのだがな」
パーカーのポケットに手を突っ込んだ後出した手には金色のボタン。
「ボタン一つくらいならまた買えばいい」
手を出すように誘導されて手を出すと、そこに落ちてきたのは金色のボタン。
「第二ボタンの譲渡の所以は心臓に近いと言われているかららしいな」
「そうだね」
手の平に収まるボタンを見ながらぼんやり返事をする。
「心の身代わりとも言えるものをあげるなら君がいい」
動悸がヤバい。その先を期待する、というかしてもいいよね。仮に間違っていたとしてもここまで来たら後悔でもいい。今言わなくちゃ駄目だ。
「煉獄、私ね……煉獄が好きだよ」
好きになった理由とか、どういうところが好きだとか、殆ど毎日考えていたのに他の言葉が出てこない。
貰ったボタンを握りしめて二文字の想いだけを言葉にする。
「俺もだ」
真っ赤になりながら言った私の言葉に視線をズラして、いつもより控えめな声音で返事をする煉獄に心が燃える。
こんな声も出せるんだ。良く見れば煉獄の顔も赤い。
二人顔を赤くしながら三月も終わりを迎える公園のベンチ。
私の恋、今開花しました。
緊張しながら待ち合わせ場所へ向かうと煉獄が既にベンチに座って待っていた。
公園に植えられている桜は卒業式の時は蕾だったのに、今は可愛いピンク色の花弁を開いている。
制服以外で会うの初めてだとベンチに向かいながら気付いて変な格好じゃないかと慌てるけどもう遅い。
足が震えそうになるのを抑えて煉獄の前に立つと、煉獄は自分の横を叩いてここへ座れと促す。
「卒業してこんなに早く会えるとは思っていなかったな」
「そだね」
「第二ボタンに関してなんだが……」
静かに煉獄の隣に座ると前置きもそこそこに本題が切り出された。
「その友達というのは果たして誰だろうか?」
「えっ?」
「宇髄から聞いたのだが、こういう場合は大抵友人ではないらしい」
宇髄あんたなんて事を煉獄に吹き込むんだ。
ここで告白するとか心の準備出来ていないし無理無理。どうにかしてこのピンチを切り抜けたい。
「友達だよ。その子ずっと煉獄の事が好きでね……」
「ふむ。ならその友達とやらに伝えてほしい」
たまにどこを見ているか分からなくなる大きな目が私を真っ直ぐ見る。
「俺は君の本音が聞きたい」
それは私の“友達”ではなく私に向けられた言葉で。もう完全に友達イコール私になっているよ煉獄……。結局眼を逸らすことが出来ず私は早々に白旗を上げた。
「友達は……いない」
「? 君に友達は沢山居るだろう?」
ここまで追い詰めて天然の返しをする煉獄に文句を言いたくなる。
「煉獄のボタンが欲しいって言った私の友達の話は嘘」
「むぅ?」
「私が煉獄の第二ボタンが欲しくて連絡しました! 嘘ついてごめんなさい!」
頭を下げて謝罪するけど、顔を上げるのが怖い。
「良かった」
どんな怒られ方や呆れられ方をするかと思っていたら予想外の言葉。
おずおずと顔をあげて煉獄を見ると、いつもはキリッとしてる眉毛がへにゃりと下がっている。目が離せなくて好きになったきっかけの表情が目の前にある。
「千寿郎――弟が数年後使うから何も渡せないと言って、卒業式に断ったのも嘘ではないのだがな」
パーカーのポケットに手を突っ込んだ後出した手には金色のボタン。
「ボタン一つくらいならまた買えばいい」
手を出すように誘導されて手を出すと、そこに落ちてきたのは金色のボタン。
「第二ボタンの譲渡の所以は心臓に近いと言われているかららしいな」
「そうだね」
手の平に収まるボタンを見ながらぼんやり返事をする。
「心の身代わりとも言えるものをあげるなら君がいい」
動悸がヤバい。その先を期待する、というかしてもいいよね。仮に間違っていたとしてもここまで来たら後悔でもいい。今言わなくちゃ駄目だ。
「煉獄、私ね……煉獄が好きだよ」
好きになった理由とか、どういうところが好きだとか、殆ど毎日考えていたのに他の言葉が出てこない。
貰ったボタンを握りしめて二文字の想いだけを言葉にする。
「俺もだ」
真っ赤になりながら言った私の言葉に視線をズラして、いつもより控えめな声音で返事をする煉獄に心が燃える。
こんな声も出せるんだ。良く見れば煉獄の顔も赤い。
二人顔を赤くしながら三月も終わりを迎える公園のベンチ。
私の恋、今開花しました。
* * *
「そういえばあの女子の輪の中でよくボタン一つ持っていかれなかったね」
ちょっと落ち着こうと、自販機で飲み物を買ってまたベンチに戻り話をしながら、あの日の疑問を口にする。
過激派とかが実力行使でもぎ取りそうなのに。
「ああ、宇髄が大量にボタンを準備していてな。あの場でばら撒いたんだ」
「ばら撒いた?」
「花咲かじいさんのようだったぞ」
「宇髄って馬鹿なの?」
「あれはなかなか派手だったな」
どうやら思っても見ない出来事があの場で起こっていたみたいだ。鸚鵡返しで聞き返す私に煉獄は思い出したのか笑いながら答えてくれる。
「さて! 宇髄に報告だ」
「は? 何で?」
「君の友達がボタンが欲しいと言っている、と宇髄に伝えたらいいこと教えてやるから結果を教えろと言われたのでな」
いやそこ律儀に守らなくても……。
「ちなみに何て言うの?」
「宇髄の言う通りだったと。そして恋仲になったと伝えるつもりだが?」
「それは……私結構恥ずかしいんだけど」
「何も恥じることなどない!」
さあ行くぞ、と元気良くベンチから立ち上がると当たり前のように差し伸べられた手。
この手に自分の手を重ねてもいいんだと思うと、宇髄に感謝しなきゃ駄目かな。
宇髄の“大抵友人じゃない”発言が無かったらボタンを貰うことも告白することもなかったんだから。
煉獄の手に自分の手を乗せてしっかりと立ち上がる。
「では行きますか」
「いざ、宇髄の家へ」
私達は二人手を繋いで桜咲く公園を後にした。
「そういえばあの女子の輪の中でよくボタン一つ持っていかれなかったね」
ちょっと落ち着こうと、自販機で飲み物を買ってまたベンチに戻り話をしながら、あの日の疑問を口にする。
過激派とかが実力行使でもぎ取りそうなのに。
「ああ、宇髄が大量にボタンを準備していてな。あの場でばら撒いたんだ」
「ばら撒いた?」
「花咲かじいさんのようだったぞ」
「宇髄って馬鹿なの?」
「あれはなかなか派手だったな」
どうやら思っても見ない出来事があの場で起こっていたみたいだ。鸚鵡返しで聞き返す私に煉獄は思い出したのか笑いながら答えてくれる。
「さて! 宇髄に報告だ」
「は? 何で?」
「君の友達がボタンが欲しいと言っている、と宇髄に伝えたらいいこと教えてやるから結果を教えろと言われたのでな」
いやそこ律儀に守らなくても……。
「ちなみに何て言うの?」
「宇髄の言う通りだったと。そして恋仲になったと伝えるつもりだが?」
「それは……私結構恥ずかしいんだけど」
「何も恥じることなどない!」
さあ行くぞ、と元気良くベンチから立ち上がると当たり前のように差し伸べられた手。
この手に自分の手を重ねてもいいんだと思うと、宇髄に感謝しなきゃ駄目かな。
宇髄の“大抵友人じゃない”発言が無かったらボタンを貰うことも告白することもなかったんだから。
煉獄の手に自分の手を乗せてしっかりと立ち上がる。
「では行きますか」
「いざ、宇髄の家へ」
私達は二人手を繋いで桜咲く公園を後にした。
初出:2021/02/28