― 天使・悪魔 ―
「……よしっ」
洗面所の鏡の前で自分の頬を軽く叩きながら、雑誌でたまたま目にした記事の内容を思い出す。
思い切って準備はしたしあとは行動に移すだけ。
たまには違う方法で――。
この日のために買った肌触りの良い白のルームウェアをもう一度確認してから洗面所をあとにした。
* * *
寝室に入りベッドに横になる杏寿郎の隣――ではなく布団越しに無言のまま跨って馬乗りになる。
「どうした?」
「トリックオアトリート」
「ああ、ハロウィンか」
「今すぐお菓子をくれなければ私はこれから杏寿郎にいたずらを仕掛けまーす!」
「こんな白いモコモコしたものを着てるナマエは到底おばけには見えないんだがな」
「て、天使みたいでしょ?」
「……そうだな! 天使みたいだ」
「ぐぅっ」
その間 が全てを物語っているのに何事もなかったように肯定してくる杏寿郎の方が天使超えて神に思えてくる。
恥ずかしさが止まらないけどもう始めてしまったからやりきるしかない。
もう一度「トリックオアトリート」と言ったら杏寿郎は緩く笑いながら降参ポーズを取るように両手を上げ広げた。
「あいにく今菓子は手元にないんだ。俺は一体ナマエにどんないたずらをされてしまうのだろうか?」
こうやっていつも余裕ぶってる杏寿郎をどうにか振り回してみたい。そんな思いから今日こそはと決めたんだ。
布団を剥ぎ取り直接跨って、この時期でもTシャツを着ている杏寿郎の胸の上に手を滑らせる。
「ん、」
ピクリと小さく反応した杏寿郎に口元が緩んだ私は数回撫でながら上体を倒し首元に唇を付ける。
唇をくっつけたまま裾に手をかけると杏寿郎も上げてた手を下ろして腰を撫でてくるからペシ、と手で叩いた。
「こら、大人しくいたずらされてよ」
「すまんすまん、早く天使のモコモコを脱ぎ捨てて小悪魔的に俺を悩殺できるというものを見たくてな」
「っ!?」
杏寿郎の言葉に手も思考も止まって倒していた上体を一気に起こす。
なんで? なんで杏寿郎がそのキーワードを知っているの?
驚きで何も言えずに見下ろす私に対して、杏寿郎は馬乗りにされた状態なのに笑みを絶やさないまま私の足に手を伸ばしてきた。
「いつだったか忘れたがテーブルの上に雑誌が放置されていたな。フセン付きで」
「え? あ! あーーー! え、あれ見たの!?」
「クリスマスも近いしほしいのがあるのかと思ったらよもや可愛い企みを見つけてしまった」
杏寿郎も腹筋だけで上体を起こしてくる。
よろける私を倒れないように支えて、というよりはがっちり後ろに腕が回ってきて逃げられない不穏な予感。
向かい合わせの近い距離で目を逸らそうとすると杏寿郎は私の耳元に口を近付けて低く小さく、だけどはっきり聞き取れるように囁いた。
雑誌のフセンを貼ったページに書かれていた今どきなかなか見ない古臭いキャッチコピー。
――天使から小悪魔に変身して彼を悩殺!
それを一言一句間違えずに言われて肌が粟立ち、結局私が振り回される。
私の迂闊さが招いた結果だけどそれを見ないふりしてこの状況を愉しむ杏寿郎は天使超えた神じゃない。
愉しそうに笑う表情は小悪魔なんて可愛らしいものでもない。
「どんな下着を買ったのか愉しみだな」
いたずらするはずだった私にとって、今の杏寿郎は大悪魔にしか見えなかった。
寝室に入りベッドに横になる杏寿郎の隣――ではなく布団越しに無言のまま跨って馬乗りになる。
「どうした?」
「トリックオアトリート」
「ああ、ハロウィンか」
「今すぐお菓子をくれなければ私はこれから杏寿郎にいたずらを仕掛けまーす!」
「こんな白いモコモコしたものを着てるナマエは到底おばけには見えないんだがな」
「て、天使みたいでしょ?」
「……そうだな! 天使みたいだ」
「ぐぅっ」
その
恥ずかしさが止まらないけどもう始めてしまったからやりきるしかない。
もう一度「トリックオアトリート」と言ったら杏寿郎は緩く笑いながら降参ポーズを取るように両手を上げ広げた。
「あいにく今菓子は手元にないんだ。俺は一体ナマエにどんないたずらをされてしまうのだろうか?」
こうやっていつも余裕ぶってる杏寿郎をどうにか振り回してみたい。そんな思いから今日こそはと決めたんだ。
布団を剥ぎ取り直接跨って、この時期でもTシャツを着ている杏寿郎の胸の上に手を滑らせる。
「ん、」
ピクリと小さく反応した杏寿郎に口元が緩んだ私は数回撫でながら上体を倒し首元に唇を付ける。
唇をくっつけたまま裾に手をかけると杏寿郎も上げてた手を下ろして腰を撫でてくるからペシ、と手で叩いた。
「こら、大人しくいたずらされてよ」
「すまんすまん、早く天使のモコモコを脱ぎ捨てて小悪魔的に俺を悩殺できるというものを見たくてな」
「っ!?」
杏寿郎の言葉に手も思考も止まって倒していた上体を一気に起こす。
なんで? なんで杏寿郎がそのキーワードを知っているの?
驚きで何も言えずに見下ろす私に対して、杏寿郎は馬乗りにされた状態なのに笑みを絶やさないまま私の足に手を伸ばしてきた。
「いつだったか忘れたがテーブルの上に雑誌が放置されていたな。フセン付きで」
「え? あ! あーーー! え、あれ見たの!?」
「クリスマスも近いしほしいのがあるのかと思ったらよもや可愛い企みを見つけてしまった」
杏寿郎も腹筋だけで上体を起こしてくる。
よろける私を倒れないように支えて、というよりはがっちり後ろに腕が回ってきて逃げられない不穏な予感。
向かい合わせの近い距離で目を逸らそうとすると杏寿郎は私の耳元に口を近付けて低く小さく、だけどはっきり聞き取れるように囁いた。
雑誌のフセンを貼ったページに書かれていた今どきなかなか見ない古臭いキャッチコピー。
――天使から小悪魔に変身して彼を悩殺!
それを一言一句間違えずに言われて肌が粟立ち、結局私が振り回される。
私の迂闊さが招いた結果だけどそれを見ないふりしてこの状況を愉しむ杏寿郎は天使超えた神じゃない。
愉しそうに笑う表情は小悪魔なんて可愛らしいものでもない。
「どんな下着を買ったのか愉しみだな」
いたずらするはずだった私にとって、今の杏寿郎は大悪魔にしか見えなかった。
2023/11/26:Twitter初出
2024/01/04:サイト用に修正