何でしょうか?



こんにちは、なまえです。ラテラルタウンは今日も市場と観光とで賑わっています。

さて、こんな平和そうな町の一角、一方的に不良に絡まれている恐らく観光できたおじさんを見つけてしまったわけですが、


「んだコラじじい!!」
「人様にぶつかっておいて無視かこら?!」
「あ″????!」

「いやー、いい町ですな!午後には遺跡も見に行きますか!」

「ふざけてんじゃぁねぇぞ?!」
「おいコラ!!あ″?!」

「天気も晴れて良かった!」


完全に無視されている。顔色一つ変えず、ルンルン気分で観光しているおじさん。メンタルバリ強だなと思ってましたが、あることに気がついたんですよ。

周りの人が誰も騒ぎ立ててない。むしろ、見てすらいない。

これまでの経験に基づくと、あの3人組の不良は幽霊とみた。だからと言って私に何か出きるのかといわれたら出来るわけもなく………。


「じじいっ!!いい加減にせぇよ!!!!!」
「あはははっ」


「おじさん!」


…う、やって、しまった……。金属バットで殴られそうになっていたのを見て、つい、声をかけてしまった。たぶん、透けて通りすぎるだけだったのだろうけど。


「私かな?何でしょう?」

「ちょうど、シンオウ地方からとってきた珍しいきのみがあるんですよ!渋いんですけど、甘味もあってペーストにしてパンケーキに挟んで食べるととっても美味しいんです!良ければ試食にいかがですか?」

おじさんに半場無理矢理、お菓子を渡して不思議そうにしながらも食べてくれたおじさん。
不良は不良で、じっと黙ってこちらを見ていた。やめてくれません?見てるってか、ガン飛ばしてるって言った方が正しいですよ。


「こりゃ旨い!!お土産に買って行こう!」
「ありがとうございます!」

中にも色々あることを伝えるとどれどれと入っていく。後は、グッと親指を立てて店の中に向けると笑顔で同じように返してくれた母におじさんを任せて私は不良の方へ向く。目はまだ合わせない。


「このばばぁ、良いとこ邪魔しやがって」
「………人を殴るのにいいも何もありませんよ…」

「は…?!」

たぶん、他の人には聞こえないし見えないから好き勝手やってたんだろうな。3人は私が返事をしたことに目を丸くして一歩下がっていた。
まるで、向こうが幽霊を、見た様な顔をしている。


「場所、移しましょうか?」


店の前で1人で騒いでいるのはさすがに営業妨害過ぎるので、町の外れまで移動する。



「お三方は幽霊になってどのくらいになるんですか?」

「し、しらねぇよ」
「気がついたら死んでて、ふらついてたらコイツらに会ったんだよ」
「お、お前、除霊師か何かか…?」

「まさか、ただのきのみ売りです」


バットを握りしめて睨み付けてきているかと思えば、、祓われないかが心配だったんですね。
穏便に何もなければ好きなときに好きなように成仏して、もらえればいいなと思ってます。


「あのおじさんとはどうしたんですか?」

「あのじじい、殴ってスカっとするしいい玩具だから絡んでただけだよ」
「ぶったたく度に禿げた頭さするしよ」

「そうでしたか、あ、良ければコレ、どうぞ」


おじさんにもあげた試供品を近くにあった岩の上にお供えする。お茶も持ってきたのでカップに入れて一緒に置いてみる。


「おう、さっきのか?」
「じゃあ、遠慮なく」
「うま…」

「良かったです」

お供え物から幽体離脱みたいに食べ物を掴んで口に運んでいく。


「人の事殴って僅かな反応を楽しむより私みたいなのとお茶する方が楽しくありませんか?」

「うっ……」
「今までいなかったでしょう、こういう人」
「べ、別に…」
「私で良ければお相手しますので、他の方を殴ったりはやめてくださいね」

カップを持つ不良の手に自分の手を添えて触れられることも伝えると、パシッと手を弾かれてしまう。
一か八かで触ってみましたが、この人達は触れる人で良かった。


「し、しらねぇーよ!!また明日、来っから覚えておけよ!!!!」

「明日はサンドウィッチとかお持ちしますね」

中指を立てながら去って行く不良にいつか、満足して成仏してくれればいいなと思いながら手を振る。


「さて、じゃあ暗くなりましたしそろそろ戻らないと…」
「おーい」
「え、っと…?」

後ろから声をかけられ誰かと振り替えると先程の不良と同じような感じの人。


「お姉さん、こんな時間に1人ってナンパ待ち?」
「は、、あ、生きて、、いえ、いえ…違います」


っぶない、生きてる人だ。で、何ですか?ナンパ待ち?…何?あまりにも私とかけ離れている言葉で理解が追い付かない。


「こんなとこで1人は危ないじゃん?」
「いえ、1人じゃないので」
「友達と一緒?」
「あー………はい」
「嘘ー、近くに誰もいないじゃん!」


見えないだけでいますよー。よく見るおじさんの幽霊も遠くから顎に手を当てて見てますし、よくわからない髪の長い女の方も貴方の肩にいますよ。むしろ、貴方が1人じゃなかったですね。


「知らない方には着いていなかいでおこうと思うので」
「誰だって最初は知らない人じゃん!」

「あ、ちょっと…離してください」
「これから知り合いになろうよ」


めんどくさいめんどくさいめんどくさい…ガーディについてきてもらえば良かった。

ヌオーでも…いや、ヌオーはダメだ。ぼーってしてますが、気に入らないとしっぽで容赦なく叩きつけるので、ガーディみたいに手加減とか威嚇がなく前触れもないので怪我人が出てしまう。


「ねぇ、何でこんな人通りの少ないとこにいたの?襲われても仕方ないと思わない?」
「通報したいと思いますね」
「これから気持ち良いことすればそんな気にならないって」

「嫌って…「ひっ!?」


いつの間にか近寄って手を握り込み、もう片方の手を腰に当ててくる男をどうやって切り抜けようと考えていると、急に情けない声をあげる男。
意味がわからないけど、自分の後ろの何かを確かめるようにパッと焦って振り返っていた。


「その人に、何の、用ですか…?」

男の体で見えなかったけれど、男の手を握るオニオンくんがいた。なんでこんなところに…ってか、何だかいつもと雰囲気が、違う…


「…な、何だよ、お前?」
「先に、名乗るのが…礼儀、ですよね?」
「は?!」


夕闇のせいか、お面のせいかまたは影に隠れているゲンガーたちのせいか、オニオンくんの周りの空気が重い。なんだか、怒ってる?


「………離れて、ください」
「オ…あ、大丈夫ですよ…」

「な、何…「連れて、いきますよ?」…は?」


止まらない。淡々と話すオニオンくん。ゲンガーとゴースト、ゴースも何処からともなく現れて男を囲う。


「つ、連れて行くって…どこにだよ…」
「冷たくて、寒くて暗い怖い所、に…」
「な、何、何言ってんだよ!!」

「ボクのポケモンなら、連れて行くことは、簡単だと、思います、けど…?」


ゲンガーたちに囲われ顔を青くした男は雰囲気ありすぎなオニオンくん達に語彙力なくし、「あ…え、は…」と声を残すとダンっと尻餅をついた。


「はやく、どいて……」
「ひっ…!わ、わーったよ!!」

オニオンくんが男に左手を伸ばすと男はさっと躱して逃げていく。

男はいなくなったけれど、去っていった方を見つめるオニオンくんはなんだか、話しかけずらくて……なんだろう…いたずらを親に見つかった感じ?の、気まずさが辺りを包み込む。


「お、オニオンくん…?」
「…………」

「助けてくれて、ありがとうございます。ガーディもいなくて困っていたので助かりました」
「………やっぱり…」
「…?」
「…閉じ込めて、誰の、目にもつかない様に、して…」


何だか物騒な事を呟いていますが、あの男にだったらそんな厳重に懲らしめなくても…

ぶつぶつと下を向いて考えて込んでいるオニオンくんの手を握り屈んで視線を合わせる。


「……なまえさん」
「助けてくれてありがとうございます。ピンチの時にきてくれるヒーローみたいでした」

「…そんな、こと……」
「お礼にこれから家で夕食をご馳走させて下さい
。腕によりをかけて作らせて頂きます!」


お部屋で一緒に食べましょう?
そう言って夕飯に誘うとコクリと頷いてくれるオニオンくん。

オニオンくんが来なかったら私が脅かしてやろうかなって思ってたけど、、やっぱり、1人だと不安だったしオニオンくんが来てくれて良かった。


「なまえさん…」
「はい、何でしょうか?」


コツリ…とお面を私のおでこにくっつけて、オニオンくんはぎゅっと私の手を握る。膝をついて目線を合わせていたから、今はオニオンくんの方が背が高い。
少し覆い被さる体勢に違和感を感じたけど、何か伝えたいみたいなのでオニオンくんの言葉を待つ。


「…なまえさんに、何か、あったら…ボク、止められない…人を、傷つけるのは良くないけど…」
「ダメ」

ぎゅっと握ってくるオニオンくんの手をそっと握り返す。私の為に、そんなことして欲しくないし、何より良くないってわかってるのに手を出して欲しくない。そんな葛藤はしないで欲しい。


「……………」
「私は笑ったりおしゃべりしてる時のオニオンくんが好きです」
「…」
「オニオンくんがわたしの為にと怒ってしまうのは悲しくなっちゃうので、わたしの為に笑ってくれた方が嬉しいなって…」


おでこを離してオニオンくんを見るけれど、納得がいかないのかまだ、下を向いてしまっている。どうしましょう…


「……大切なひとを、傷つけられて…怒らないのは、難しい…です……」


え…わ……ど、どうしましょう…
胸の奥がむずむずします。懐いてくれている子のデレってやばい、ですね。


「ありがとうございます」
「!…あ、なまえ、さん……?」

嬉しいのと恥ずかしい衝動でオニオンくんをぎゅっと抱き締めてしまって、、それから、スタッフのユウコさんが「ジムリーダーは挨拶のハグもあまり好きじゃないみたい」と言っていた事を思い出す。

サッと離れようとすると、ゆっくりオニオンくんの手が背中に回ってきたのを感じて体が固まった。


「…なまえさん、ボクはまだ…子供なので、大人の人に頼るしか…できませんが…」
「もちろんもちろん、それでいいんだよ」

「ボクが、なまえさんを……守ります…」


……イケメンだ…。見てください。世の中の男子。
これがイケメンっていうやつですよ。見習ってくださいな。
そして、オニオンくんには可愛いという長所があって…もう、推しジムリーダー確定ですよ。


「わたしの方が大人なのでどちらかと言うと守る方ですが…ありがとうございます、オニオンくん」

「………うん…」


はい、可愛い。
納得がいかなそうですが照れてるオニオンくん。手を繋いで家へ行こうと促すと私の横を歩いていつもの様にポツリ、ポツリと話し出す。


そういえばいつの間にかゲンガーたちがいなくなってて……どこに行ったんですかね?