壱
暑い夏の日だった。狭く薄暗い納屋は、若い男女が体を重ね、埃と分泌液と二人の匂いで満ちていた。
「お志津…!お、おら…」
「駄目、まだ中に出しちゃ」
「んっ…」
源太郎は腰を引き、熱い肉壺から自身を引き抜くと、目の前の白い肌により白い液を零した。勢いが良く、豊かな胸や整ったかんばせにまで届いてしまう。汗の匂いに白濁液の匂いが混ざった。
「すまね、汚しちまって」
「いいよ、いつものことだし」
源太郎は志津の頬を指先で拭った。
「お志津はほんとに綺麗だな」
「馬鹿」
志津は恥ずかしそうに頬を膨らませた。艶を帯び大人びた顔立ちが途端にあどけなくなる。この様変わりの瞬間は、何度見ても戸惑う。
「ほんとだ、近頃は会う度どんどん綺麗になって…」
「毎日言わなくていいよ」
志津は起き上がり、源太郎に飛び付いた。勢い良く、源太郎は仰向けに倒れてしまう。埃が舞い、格子から差し込んだ日に照らされてきらきらと光る。
「天女様みてえだな」
「……」
志津は源太郎に表情を隠すようにして唇を押し当ててくる。初めは重ね合わせることしか知らなかった接吻も、回数が増える度に深く熱くなっていった。誰から教わった訳ではない。初めて同士でも、本能的に求めるとそうなっていた。
「ん、む…」
いつもよりも今日は長く、源太郎は息苦しくなってしまう。
「ぷはっ」
唇を離されて、源太郎は深く息を吐いた。志津は、その姿を見て笑った。そして、少しだけ憂いを帯びたように眉頭が寄り、目尻が下がる。
「源太郎…」
志津は源太郎に寝そべるようにしながら柔らかい肌を押し付け、名前を呼んだ。
「ん?」
「もう一回、いい?」
「いいだよ。今度は、お志津をいかせられるように、我慢する」
「ふふ。出来るの?」
志津は起き上がり、足を開いた。さっきまで源太郎を咥え込んでいた赤い内部が露出し、源太郎はその淫靡な佇まいに固唾を飲む。志津は、見せ付けるようにして指を使って内側を見せた。
「源太郎、出したばっかなのにおっきくしてる」
「だって、こんなん…」
「気持ち悪くない?」
「悪くないだよ!そんな訳、ない」
大きくなった突起は感度が上がり、発達した襞は強く絡みつく。背丈が伸び、肉付きが豊かになるように、此処だって女としての成長を見せ、源太郎に絶え間なく快楽を与えてくれた。
志津は源太郎の腰に跨り、源太郎自身を掴みながら、先端を秘部にあてがい、ゆっくり腰を落としてゆく。温かく滑った粘膜が源太郎を擦りたてながら包み込んでゆく。
「あ…」
ぺたんと、柔らかい尻肉が密着した。
「あたしより先にいっちゃ駄目」
「ん」
志津が腰を上げ、落とす。ざらついた内部が程よく解け、ぎりぎりまで源太郎に密着し、淫らな音を立てる。目の前で激しく揺れる豊かな乳房を手を伸ばして握った。初めて触れた時より柔らかく、大きくなっていて、同時に育った突起が掌を刺激している。
「ん…」
「ああ、お志津!」
「余裕ないね。我慢出来る?」
「んっ…」
源太郎は下腹に力を込めた。志津の柔らかくも強い締め付けが、源太郎を追い込んで行く。
「ふふ」
「ああ、お志津…!」
志津は一旦動きを止め、源太郎を引き寄せた。源太郎は上体を起こして、腕を回して深い谷間に顔をうずめた。汗の匂いと懐かしい志津自身の匂い。
「源太郎…」
志津は源太郎の頭を抱き寄せ、再度律動を始めた。段々と志津の体温が上がる。快楽を得るため、腰を強く押し当てながら激しく揺すった。きゅっと内側が締まり、肌が震える。
「ん、源太郎っ…!」
切ない喘ぎで名を呼ばれ、源太郎はそれどころではなかった。志津の震えが止まり、ぱちりと瞼を開ける。余韻にとろけた瞳がはっと色を変えた。
「な、中は駄目だよ!」
「でも、おら…もう…!」
志津は膝を立て、源太郎を引き抜いた。源太郎は、空気に晒されたのを合図に放つ。
「くうっ」
「やだ、お尻に…!」
体制と角度のせいで、体液は志津の肌に向かって放たれてしまった。
「二回目なのに沢山出たね。拭いてくれる?」
志津は源太郎に背を向けて位置を変えずに座り直した。胸と同じように豊かな肉付きの尻の汚れを源太郎は綺麗な布で拭き取った。
「ねえ知ってる?女と通じちゃいけないお坊さんや、戦で女を連れていけないお殿様は、自分好みの少年を侍らせて交わるの」
「え?」
志津の唐突な話題に源太郎は面を食らう。
「男と男がどうやってするか知ってる?」
「知らんけど」
「此処を使うの」
志津が腰を上げ、源太郎の見える位置で後ろの窄まりを指差した。
「此処でも出来るんだよ。興味ない?」
「へ?ない訳じゃねえけど…」
「なら、ここでもしてみようよ」
「はっ!?」
思ってもいなかった要望に、源太郎は耳を疑ってしまった。
「嫌?汚い?」
「嫌だとも汚いとも思ってないだよ。しかし、入るんか?」
「構造は同じだし少年がしてるんだしあたしにも入るよ。ねえ、してみようよ」
「だが、そうゆう為にあるものじゃ…っ」
志津は後ろへ手を伸ばして源太郎自身を掴んだ。
「しっかり反応してる癖に」
「そりゃあ、裸でこげんことされたらなるだよ」
「いい、私からするから」
志津は再び向き合うように源太郎に跨がると、後ろ孔へ先端をくっつけた。
「何してるだ!?」
「黙って」
志津は歯を食い縛り、膝を震わせている。当たっている先の肌は固く閉ざされていて、開きそうもなかった。
「お志津…無理したら駄目だ」
「嫌!源太郎も手伝ってよ」
「ん、やってみるだ」
源太郎は志津の柔らかい尻肉を掴み、その奥に触れた。やはり、表面を撫でても隙間はない。志津はもぞもぞと体を揺すった。
「くすぐったくて気持ち悪い」
「じゃあ、こうか?」
「きゃっ」
指で拡げてみるが、小さな孔はすぐに戻ろうとしてしまう。
「押さえててよ。入れるから」
「入るだか?」
「痛!」
源太郎が皺を伸ばす為に外側に肉を拡げると、志津が悲鳴を上げた。
「すまねえ!」
源太郎が手を離して志津を抱きしめると、志津は腕の中で顔を振った。
「平気。無理言ってごめんなさい」
「いいだよ。おらこそ、加減分かんなくて。でも、なして尻なんかで…」
「こっちも初めては源太郎に貰って欲しかったの。それに、お尻なら出したって孕む心配ないし」
「そげんことで…」
「そげんことじゃない」
「でも、初めては一度だしな。変なことに拘んなくていいだよ」
源太郎は志津の頭を撫でた。
「変なことじゃない。源太郎、いつも出しちゃいそうになって我慢してる」
「そうだな。おらたち、隠れながらこんなことして、一年経ったな。まだ、駄目か?」
「駄目に決まってるでしょ」
「おら、お志津を嫁さんにしたい」
「え…?」
源太郎が志津の体を離し、目を合わせると、志津は瞳を輝かせ、しかしすぐに俯いて、視線を外してしまった。
「…駄目だよ。正吉も小さいし」
「一緒におらんとこ来ればいい」
「りんちゃんがいるのよ?」
「おりんはきっと喜ぶだよ。おっとうもおっかあも」
「……」
「嫌なんか?」
「嫌じゃない。嬉しい、凄く…。でも、まだ早いよ」
「おらたち、もう十と五だよ?」
早いのだろうか。近隣の同年の者たちは、既に何人か伴侶を決めている。志津と一番の親友も、同い年でありながら二人目を身ごもっている。
今度は志津から源太郎の頭を抱き、柔らかい胸に顔を押し付けた。きっと、悲しい顔を見せない為に。
「源太郎…もう一回、して?」
「ん…」
源太郎は手を志津の下腹部に忍ばせ、肉の割れ目を開いた。既に剥けた突起を直接指でこすり、胸を撫でながら乳首を口に含む。
「あっ…」
敏感になっていたのか、すぐに志津は達した。力の抜けた体を仰向けにし、膝を担いで左右に開く。自身の先端で、快楽源の突起を突っつくと、志津はぴく、と体を揺らした。
「あ、遊ばないで…」
好戦的だった表情が崩れ、その変化に源太郎はまた戸惑ってしまった。
「すまね」
源太郎は下にずらし、開いた孔を拡げながら押し入っていく。最奥にたどり着くと、志津は源太郎を抱き寄せた。源太郎ははっと顔を上げる。
「お志津、誰か来ただ、足音がする」
源太郎は囁く。志津は気にする風でもなく同じくらいの声量で返した。
「ああ、叔父さんが来たんだよ」
「叔父さん?」
「うん、お母ちゃんの弟。正吉を迎えに来たの」
「え?なして?」
「正吉、叔父さんとこ遊びに行くの」
「遊びにってこげん時間からか?」
「泊まるって」
「お志津は行かないだか?」
「行かない。頼まれた薬がまだ残ってるから」
「だが…」
源太郎は外を覗く為に上体を起こそうとすると、志津がしがみつき、繋がったまま起き上がった。一緒に外の様子を窺うと、志津の弟の正吉が、荷物を背負って若い男性に手を引かれていた。
「正吉、きょろきょろしてるだよ。お志津を探しているだ」
「こんな格好じゃ会えないよ。いいよ、すぐ戻って来るんだから」
そう言い、志津は弟の後ろ姿を見つめていた。
「正吉いないんじゃ、お志津つまんないだな?」
「別に…、仕事がはかどるからたまにはいいよ。そんなことよりさ…」
「え?」
志津は源太郎の肩を押しながら体を仰向けに倒した。
「まだするんでしょ?」
目の位置に戸の隙間から入った光りが当たり、眩しくて細めてしまった。志津は、どのような表情で源太郎を見下ろしているのだろうか。
暗くなる前に志津と別れ、源太郎は家に入る前に服を脱いで頭から水を被った。源太郎の住まいは集落から離れているため、周りに人はおらず、この井戸も源太郎の家族だけで使用している。水桶を置き、空を仰ぐ。もう星が幾つか光っている。
「おにい、お帰りなさい」
「わっ」
背後に水音を聞き付け源太郎を出迎えに来た妹が立っていた。
「ただいま、おりん」
「今日も志津ちゃんと会って来ただか?」
「な、なして分かっただ?」
「だって、志津ちゃんと会って来た日は暗くなってから、いっつも水被ってるだ」
妹は無邪気に笑った。確かにその通りなのだが、恐らく何故水を浴びているかは分かっていないだろう。
「うん。おとうとおかあには内緒だよ?」
「なして?」
妹はきょとんと源太郎を見上げた。予想通りで、源太郎は安心し、同時に無垢な妹がいとおしくなった。
「なしても!」
源太郎は湿った手で妹の頭を撫でた。
「おりん、ここんとこずっと顔色良いだな」
「うん。今日もおかあの手伝いしただ。むしろ編みも少しやらしてもらった。おじいみたいに上手に出来ないけど…」
「おりんは偉いな。だが、無理したら駄目だよ」
「しないだ。今日はおにいの好きな焼き飯にしただよ」
「楽しみだな。おら、腹減っただよ」
源太郎は服を着て、妹と屋内へ入った。何時ものように、家族が温かく迎えてくれた。
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