同じくらい染め上げて
本編肆話の少し後のお話。
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主を失った蘭丸が源太郎と共に暮らすようになってから、二月が過ぎた頃。
季節は秋を迎え、日は縮んでいった。
夕餉の仕度をとうに終えた蘭丸は、庭で暗くなってゆく空と蜻蛉を眺めながら、新しい主である源太郎の帰宅を待っていた。
「お蘭ー」
温かな声と共に、向こうから人影が見えた。蘭丸が駆け出すと、その人も、走って来て腕を広げて蘭丸を受け止める。まるで数年振りに再会したように強く抱きしめてから、前髪を掻き分けて額へ唇を押し当てた。
「遅くなってすまんな」
蘭丸は首を左右に振った。
「お疲れ様です。お腹はすいていませんか?」
「ん…、先、風呂入りたい」
「では、準備して参ります」
「お蘭も一緒にな。背中流してやるだよ」
源太郎は蘭丸の背を軽く押して、少しだけ後ろの位置に並び、共に歩いた。
風呂の準備を二人でして、背を流して湯に浸かる。ここのところ気温が下がったこともあって、一際心地良い。源太郎は腕の中の蘭丸の頬に手を添えて口付けをした。何度か重ねてから目線を合わせ、それを合図にまた重ねて、舌を絡ませあった。静かな浴室に二人の息継ぎと粘膜の擦れ合う音が響いた。源太郎が接吻しながら湯船の中で蘭丸の肌をなぞると、蘭丸は身を捩らせた。もじもじとさせた蘭丸の尻が源太郎の股に当たり、直接刺激される。
唇を離すと、源太郎は目を細めながら告げた。
「お蘭の肌がお湯のせいでいつも以上に柔らかい。もっと触ってもいいだか?」
「先程洗いながら触れたじゃないですか」
「手だけじゃなくて、口でもだ」
「ひゃっ」
蘭丸の肩を甘噛みし、少しずつなぞっていった。桃色に染まった肌にもう少しだけ濃い朱を点々と付け足していきながら、腕へ辿る。肩よりも幾らか歯が深く埋まり、痛みを感じる寸前で顎の力が止まった。
「いけん」
「え?」
「もっと食べたいのに、下がると鼻が湯に浸かっちまう」
源太郎の言葉に、蘭丸は笑った。蘭丸は湯が撥ねないよう立ち上がり、浴槽の縁に腰掛けて太腿を閉じ、膝を少し高くして股間を隠す。
「食べても良いですよ」
源太郎は水飛沫を浴びせながら蘭丸に抱き付く。蘭丸はその勢いに傾き、後ろへよろめいたのを源太郎は倒れないように引き寄せた。源太郎は唇のそばにある脇腹に吸い付くと、蘭丸は体を大きく揺らした。
「そ、そこは嫌です」
「さっき良いって言っただよ?」
「擽ったくて」
「分かった。じゃあ、ここな」
源太郎は蘭丸の膝に手をのせ、首を伸ばしながら腹の小さな孔に舌をなぞらせる。薄い腹肉のせいで、尖らせた舌先が僅かに埋まる程度だが、確実に表面よりも温度が高い。味わうように何度もささやかな抜き挿しを繰り返した。蘭丸が下腹部に力を込めると、性交の時のように締め付ける。
「源太郎様…」
「ん?」
蘭丸が顔を両手で隠しながら見下ろす。指の間の視界がぼやけていく。
「変です、お臍の奥が…」
「感じるだか?」
「擽ったいです」
「嫌か?」
「……」
感じていていても達することが出来ないのがもどかしいだけで、決して嫌ではない。答えないままでいると、源太郎はつんつんと舌先で臍の奥をつついた。その刺激で蘭丸の肌はまだ震える。そして柔らかな舌は狭い狭い側面をなぞって、吸い立ててから、まっすぐ下っていった。
「足、開いて」
「でも…」
「食べて良いって言ったのはお蘭だよ」
源太郎はさほど力の入っていない小さな膝頭を持って左右に開いた。足の間から濡れた先端が解放された勢いで源太郎の頬にぺちんと当たる。蘭丸は居たたまれず顔を背けた。
「綺麗な色だなあ」
源太郎の吐息が先端に当たるのが分かる。すると、源太郎は立ち上がり、浴槽から出て脱衣所へ行ってしまった。体を雑に拭いて脱衣所からも出て行ってしまった。
一人残された蘭丸は、自分の下半身を見下ろした。まだ己自身が上を向いている。触れようとしていると、すぐに源太郎は戻ってきた。蘭丸が伸ばしかけた手を引っ込めると、大きな布で蘭丸をくるんで抱え上げた。唐突なことに驚いて、蘭丸は源太郎にしがみ付く。
「すまんな、やっぱり風呂場じゃ危ねぇから」
「え?」
脱衣所を出ると、部屋には布団が敷いてあって、そこへ寝かされる。体も満足に拭いていないせいで、敷布が湿ってしまった。蘭丸が体を起こそうとすると、源太郎は強い力で蘭丸の足首を掴んだ。
「続き、するだよ」
「続きって…」
源太郎は手を蘭丸の裏腿へ移動させて、持ち上げた。体が折り曲げられ、尻が上を向いた状態になっている。
「可愛い」
源太郎は袋を口に含んで舌で転がした。ちゅっと吸ってから今度は更にその下にある、ひくついた孔まで舌をなぞらせていく。
「や、汚いです」
「さっき洗ったばっかだよ」
源太郎は返事をして窄みの線を一本一本なぞるように丁寧に舌先で舐め上げ、十分に濡らすと軟体を狭い中へ押し進めた。臍よりもずっと奥行きがあって、自由に動かずことが出来る。
「や、駄目」
指とは異なる柔らかい物体が、体の内側をなぞっていく。もどかしい。けれど、確実に蘭丸は追い込まれて行った。窮屈な体制で腹に負荷が掛かり、苦しさに力を抜くと、源太郎が顔を離した。
「孔が柔らかくなっただ。気持ち良いだか?」
「気持ち良いけれど、この体制のままでは苦しいです」
「じゃあ、足持っててくれ。今度は指で解すだよ」
「もう平気です」
「駄目だ」
源太郎は蘭丸の両腕でそれぞれの脚を抱えさせた。引っくり返った蛙のような格好で、顔も隠すことも出来ずより羞恥が増した。
源太郎は無防備に晒された孔に指を添えた。一本、二本と難なくするりと埋まった。くっと二本指を中で拡げながら、源太郎はごくりと生唾を飲んでいた。そして顔を上げ、蘭丸を見下ろした。
「お蘭…全身が桃色だ」
「え?」
源太郎は蘭丸の手を取り、唇を寄せる。
「爪も、目尻も、ほっぺも、鼻先も、唇も、乳首も…」
源太郎が指先、瞼、頬、小鼻、唇、胸へと短い口付けをしていく。源太郎に弄られたせいで赤くなった臍に唇を寄せ、そしてさらにその下の、一際赤味の強い腫れた中心部へ顔を近付ける。
「い、今は、そこは…!」
蘭丸が引き止めようとすると、源太郎は口を大きく開いて蘭丸のものを一呑みした。
「あっ」
源太郎の咥内の熱い粘膜に強く締め付けられ、蘭丸は源太郎の口の中で容易く果ててしまった。息を上げながら、蘭丸は源太郎を見詰める。源太郎は掌に蘭丸の精を吐き出すと、それを潤滑油代わりに自身の剛直に塗りたくる。蘭丸の持ち物よりも長大で、目が離せない。
「お蘭」
蘭丸を捉えた源太郎の目は、強烈にぎらぎらとしていて、胸が高鳴った。源太郎と出会う前、複数の男にこんな視線を向けられるのがとても怖かったのに、今は嬉しく、愛おしい。そしてきっと、今蘭丸自身も源太郎を同じように見詰めているかも知れない。
「足、また閉じてるだよ」
源太郎は今度は自分の手で蘭丸の片方の膝裏を抱え、広げると、濡れた先端をひくつく後孔に添えた。
「此処が一番赤い…だなっ」
「んあ!」
一気に貫かれ、求めていたものが奥へ到達した。蘭丸は圧迫感で身悶えながら源太郎を強く締め付ける。
「ああ…、不味いな。すぐ、出ちまいそうだ」
源太郎が蘭丸の頬を撫でながら呟く。蘭丸を潰さないように自分の体を支える手は震えていた。
「では、暫くこうしてくっついていましょう」
蘭丸は源太郎の首に腕をまわし、引き寄せた。源太郎がぐらりと蘭丸の体に倒れ込んで、より深く繋がった。蘭丸は源太郎の腰に脚を巻き付けて耳朶に噛み付いて孔に舌を忍ばす。
「お蘭、擽ったい」
源太郎が首の角度を変え、視線が間近になる。
「さっき、蘭が擽ったいと言ったのに止めて下さいませんでした」
「悪かった。嫌ならしないだよ」
「嫌と言う訳では…。源太郎様はお嫌でしたか?」
「嫌じゃないけど、それ以上にしてやりたくなるだ」
「んっ」
源太郎が敷布と蘭丸の背中の間に手を入れ、背骨や肩甲骨をなぞった。蘭丸は身を捩らせる。
「今、お蘭の中震えてる…」
「擦って下さいませ。源太郎様がもっと気持ち良くなれるように」
今度は蘭丸が源太郎の頬に手を添えて見詰めた。するともともと赤らんでいた源太郎の顔が林檎のように赤くなり、じわっと体の中から熱が溢れてくる。源太郎が焦った顔をして、体を離して射精途中で蘭丸から自身を引き抜いてしまった。残りの精が蘭丸の腿や体に零れてゆく。蘭丸は白い水たまりを見詰めた。
「すまね、汚れちまった」
源太郎は手拭いで蘭丸に付いた白濁を取る。源太郎の気遣いなのだろうが、最後まで繋がっていたかった蘭丸にとっては不本意だった。
「よし、綺麗になった」
蘭丸はむくりと起き上がって、源太郎ににじり寄る。
「源太郎様は蘭がお拭き致します故」
「えっ」
蘭丸は手拭いを取り、浴室へ行って濯いで絞ってから戻ってくる。源太郎の股間を濡れた布でゆっくりと擦る。あからさまに揉んだり扱いたりせずとも、源太郎は布の下ですぐに反応し始めた。
蘭丸が見上げると、源太郎は潤んだ目で蘭丸を見ていた。蘭丸は源太郎に唇を寄せると、源太郎は蘭丸の体に腕を回して引き寄せた。求めてくれていることが嬉しい。蘭丸は源太郎の口の中に舌を忍ばせた。手の中で源太郎が熱くなってくる。そして熱い息遣い。蘭丸は夢中で手と舌を動かした。
「ひっ」
蘭丸の舌が入った状態で、源太郎は小さな悲鳴をあげた。
「すまね、すぐ出しちまった」
源太郎は蘭丸の手を拭きつつ謝る。すぐに出してしまったことに気まずくなっているようだ。蘭丸は綺麗になった手でもう一度源太郎の下肢を握り、屈んで口に含んだ。
「お、お蘭…もういいだよ」
「どうしてですか?まだ足りていないはずです」
言葉を返してから数度舌を往復させ、咥えて喉奥で締めると源太郎は素直に反応した。ゆっくりと口から抜き取り、顔を上げた。
「次は、蘭が頂く番ですよ」
蘭丸は源太郎の膝にのり、腰に跨がる。源太郎に支えて貰いながら、源太郎を体に収めていく。
「あ、あっ…んっ」
源太郎にしがみ付きながら膝を立てて座り込む。
「この辺まで届いてるかな」
源太郎が蘭丸の桃色の臍を指先でつついた。
「…分からないです」
再び源太郎を収めて、蘭丸の体は熱を上げた。今回は自分が主導権を持っていたいのに、体が自由に動かない。蘭丸がもじもじと緩慢な動きで膝や爪先に力を込めると、源太郎は察したのか蘭丸の臍の位置にあった指先で肌をなぞる。それだけで蘭丸の体は崩れそうになってしまう。
「ひゃあっ」
源太郎は乳首をくいっと摘まむ。力はさほど入っていないのに、甘い痺れが蘭丸の体に駆け巡る。腕も膝も力が抜けてしまった。
「危ないから、横になるな」
蘭丸は首を横に振ったが、源太郎に抱き寄せられ、そのまま布団に寝かせられてしまった。
「拗ねてるだか?」
源太郎は蘭丸の頬に触れながら訊ねた。
「拗ねてないです。今回は蘭からしたかったのに…」
「でも、こんなやっこくなっちまったら無理だよ?」
源太郎は蘭丸の頬をつんと押して、その手を移動させて腰を押さえた。源太郎の大きな手は蘭丸の薄っぺらい腰を容易く掴んでいる。
「今度は、お蘭を気持ち良くさせるから」
「ら、蘭はずっと気持ち良いです。ただ!」
「ん?」
「な…」
「な?」
中に出して欲しかったとは今は言えなかった。蘭丸は言葉を変換した。
「今度は、最後まで…」
「うん」
源太郎は目尻を下げて笑った。慈愛に満ちていて、見ているだけで幸せになれる。
「んぅっ」
しかし、蘭丸の中には反り返った剛直が埋め込まれたままなのだ。内側で源太郎がより一層膨張しているのを感じる。源太郎は蘭丸の腰を布団に押し付けて、前後に体を動かした。
「あ、ああっ」
蘭丸は敷布を握りしめながら源太郎を受け止めた。内側が強く擦り抉られてゆくような感覚が、羞恥心を麻痺させてゆく。
「源太郎様、気持ち良いです」
波に呑まれて吹っ切れた蘭丸は明け透けな言葉を口にする。源太郎は蘭丸の腰から手を離し、膝を抱えて引き寄せ、より激しく腰を弾く。
「あ、あー!」
蘭丸は本能に任せて叫ぶ。目の前に白い飛沫が見え、温かく降り注いだ。力が抜け、波が引き、また大きな波が立ち上がった。
「んっ」
まだ源太郎の腰の勢いは止まらず、幾重の波に呑まれ蘭丸の頭は真っ白になった。
「くしゅっ」
「すまん、寒かっただか?」
鼻がむずむずする。蘭丸が目を開けると、源太郎は蘭丸の体に何かを掛けていた。それは布ではあったがつるつるとしていて布団でも手拭いでもない。蘭丸がむくりと起き上がると、肩にあった布が腰に落ちた。それは、真っ新な反物であった。
「綺麗ですね」
蘭丸は鮮やかな藤色の布に指を伸ばす。清潔な状態になっているのを確認し、指で撫でる。源太郎は嬉しそうに瞳を輝かせた。
「この色、好きか?」
「はい」
「お蘭に似合うと思っただよ」
「…買ったのですか?」
「ううん、お蘭に宛ててみたいから借りただよ」
「借りたって、どうしてこのようなものを?」
「どうしてって、お蘭の服を作る為だよ。もうすぐ寒くなるし、おらのお古だと寒いだろ?だから、お蘭に似合いの服を贈りたくってな」
「こんな上等なもの、蘭には勿体ないですよ」
「勿体ないって、こげんものより上等なの着てただろ?」
「それはそうですけど、今は源太郎様以外の方と関わることもありませんし」
「おらが見たいだよ。給金貰ったら、お蘭に服を贈るって決めてた。街まで行って、呉服屋でどんな色が似合うか選ぶの楽しかった。だから、勿体ないって言わんでくれな」
蘭丸の周りには複数の反物が広げられていた。幾つ借りたのだろう。
「でしたら、源太郎様が似合うと思うものが良いです」
「それがな、全部似合うから決められないだよ」
源太郎は深刻な問題のように呟いた。そして、一本選んで差し出した。
「これはどうだ?」
「
朱鷺色も確かに綺麗ですけれど、薄い色味でしたら蘭は先の藤色が…」
「これ見てお蘭の乳首を思い出した」
「へ?」
「比べてみたら、やっぱり近いと思う。今はおらが弄ったからもっと濃くなってるけど…」
源太郎は蘭丸の肩を掴み、顔を近付けて蘭丸の胸板を凝視している。蘭丸は羞恥で肌が再び熱くなってくる。同時に、見られているだけの乳首も赤味が増してくる。赤面の源太郎が見上げて、視線が絡む。源太郎は手にしていた反物をまた畳み、布団の端へ集めて、風呂敷へしまった。
「汚したらまずいから」
言葉尻と共に早急に口付けて、啄んでくる。源太郎はまたもや蘭丸を欲していた。蘭丸の満たされていたはずの体が、また疼き出し、戸惑いで源太郎の舌や唇の動きに応えることが出来ない。
離れた源太郎の唇は唾液で光っていた。
「ほんとはな、布を汚さないように最初に風呂入ったのに、裸のお蘭見てたらしたくなって…今もまたしたくなっただ」
「…お食事はなさらないで良いのですか?」
「お蘭を先に食べたい」
頬に口付けながら体を倒された。
「お蘭は腹が減っただか?」
「少しだけ…」
「なら、おらをたっぷり食ってくれな」
「んんっ」
源太郎は指を蘭丸の後孔に忍ばせた。二本か、または三本か分からないが、すんなり入って、内側の肉を震わせながら締め付けているのが自分でも分かる。
「今度こそ、この中にやるからな」
源太郎は蘭丸の腹を撫でながら囁いた。耳が擽ったくて、蘭丸は顔を背けた。視界の端に、風呂敷からはみ出た朱鷺色を捉えた。今の蘭丸の肌とどちらがより赤く染まっているのだろうか。源太郎の舌の愛撫を受けながらそんなことを考えていた。
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