恋はよみがえらない_2

 私は再び蘭と暮らすことになった。ほとんど強制的に。
 毎朝「行くな」とごねられてはそれを振り解くところから始まる。帰ってきたらずっとベッタリくっついている。
 ……かつての蘭もこんな気持ちだったんだろうな。あの時の私は、蘭が好きすぎて離れたくなかったからずっとひっついていたし。そりゃイヤにもなるよね。
 ただあの時と違うことが一つある。私は臆病なので、蘭を突き放せない。
 冷たい態度をとって、自分に暴力を振るわれる可能性があることを考えると、ひっつくのをやめろとは言えない。
 抱きついてきた蘭の頭を撫でる。人前では見せないような崩れた顔で、私の首筋に顔を摺り寄せてきた。
「蘭……」
「どしたー?」
 だから、賭けることにした。
 蘭の浮気をでっち上げ、疑い責め立てるフリをする。そうしたら、また私のことをうざがって別れるに違いない、と。
「昨日知り合いが蘭を見たって言ってたんだ。女の子と歩いてるって」
「……は?」
「私とより戻したいとか言ってた割に、裏でそんなことしてたんだね」
 私がいないさみしさをほかの子で紛らわしてたんでしょ、オマエだけだとか言っておいてさ! と畳み掛ける。
 さあどうだ。痛くもない腹を探られて不愉快だろう。さっさと別れを告げてしまえ、ほら、早く……なんで何も言わないの?
 私が蘭の顔を覗き込んだ瞬間、彼は素早く私を引っ掴んだ。復縁を迫ったあの時と同じ馬鹿力で。
「誰?」
「誰、って」
「オマエにそんなウソ吹き込んだヤツの名前。教えろよ」
 ぎり、と爪が食い込む。痛い。怖い。何か言おうとしても、声にならない。
「……教えねーワケ? 庇うの? そいつを?」
「ちが、う……うそ、ついた」
 数分経って、やっとそれだけ言えた。
「は?」
「噓だよ。その……蘭がうろたえるとこ、見たくて」
 やっぱり、私は弱い。別れたいくせに、面と向かって別れ話を切り出すこともできない。回りくどいやり方も、自分の身に危険が及べばそれを引っ込めてしまう。
「っ……なんだよ、脅かしやがって。そういうのウソでもやめろよな」
 そこでやっと蘭の手が緩んだ。痛みが少しずつ引き、ぎゅ、と抱きつく感覚がある。
「オレがナマエ以外に目移りするなんて100パーねぇから。もうオマエしかいらねェもん」
 その言葉は、改めて私に絶望を植え付けるだけだった。

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