恋はよみがえらない_1.5

※蘭目線のお話。



 ほとんど泣き声のような「さよなら」と共にナマエは出て行った。
 まあ付き合い始めは楽しかった。知らないことを知る楽しさとか、オレとは違った視点とか。
 それが「つまらない」に変わっていくのも割とすぐだった。
 勢いで契約した部屋は、一人で暮らすにしちゃ広すぎる。だからさっさと引き払った。
 ナマエと別れて三日。慣れたベッドでぐっすり眠り、気が向いたら外に出る。ノリと気分で娯楽を見つけて遊ぶ。
 別れて一週間。寝てる時間の方が多くなってたらしい。竜胆に心配されたが「気にすんな」と言っておいた。
 別れて二週間。どうでもいいはずのナマエの表情が、ずっとチラついて眠ることすらままならない。
 別れて一ヶ月。竜胆が怯えたような顔でオレを見ている。そして急に出かけていった。それから結構経って竜胆が帰ってきた。
 一人分、足音が増えている。仲間でも呼んでまたどんちゃん騒ぎするつもりなのか、こんな時に空気読めないヤツ……と思っていたら、オレの部屋のドアが開いた。
「兄ちゃん、ナマエ連れてきたよ」
 ほぼノータイムで跳ね起きた。
 薄暗い部屋の中で、オレの目の前にいるのは紛れもなくナマエだった。かすかに息を呑む音が聞こえる。目を凝らすと、その顔は嬉しさよりも、怯えとか困惑に違い表情をしていた。
 ……その顔はなんだ。オレに会えて嬉しいんじゃねェのかよ。思わずナマエの肩を掴んだら、振り解かれそうになってさらに力を込めた。逃げんな。骨折ってでも側に置いてやる。
 竜胆が何か言ってるが聞こえない。それより早くナマエに喋ってほしい。オレと別れて寂しかっただろ? な?
「そんな勝手な理由で!? 今更無…」
 今無理って言おうとしたのかコイツ? ふざけんな。オレが無理とかどの面下げて言えんだ。あんなに悲しそうな顔してたじゃねェか。
 思わず掴んでいた肩に力を込める。
「い゙っ……痛……!」
ナマエが表情を歪める。オレは力を緩めない。
「……オレが悪かったから。戻ってきて、な。骨折れんのヤだろ? オレもナマエの骨折りたくねぇもん」
 さらに力を込めると、ナマエは怯えたような顔でオレを見る。これ以上痛い目に遭いたくなかったんだろう。
「……わかった。蘭とまた付き合う」
 と言ってくれた。力を緩めて、ナマエに優しく抱きついた。もう離さない。
 どう思われてもいい。
 こいつは、オレのモンだ。

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