獅音先輩と後輩ちゃん
「獅音先輩ってかわいいですよね」そうナマエに言われて「かわいいって男に使うモンじゃねーだろ」と獅音が返す。するとナマエは「でも他の人は嬉しそうでしたよ」と答えた。
「他のヤツって誰だよ」
「イザナとか蘭ちゃんとか竜胆とか」
噓だろ、と思って獅音がナマエの様子を見ていると、事実だった。息をするように「可愛い」と言っている。
イザナは「当然だろう」みたいな顔してるし、竜胆は照れてるけど満更ではなさそうだ。蘭は言わずもがな。
そしてナマエはと言うと、獅音にだけ「かわいい」と言わなくなってしまった。嫌がっていると思ったから、彼に言うのをやめたのだろう。
言われなきゃ言われないで、余計にイライラする。
「おい。オレにはかわいい以外でなんかねぇのかよ」
獅音は、苛立ちまぎれにナマエに問いかける。
「ありますよ」
「へえ? 教えろよ」
「獅音先輩は『頼もしい』です」
獅音は面食らった。ナマエはそんな様子に気づくこともなく、よどみなく言葉を続ける。
「私がヤバい奴に拉致られそうになった時、いつも真っ先に駆けつけてくれるから。それに、しんどい時でも隣にいてくれるから。あとは、八つ当たりしても受け流してくれるし」
それ以降も「獅音先輩のいいところ」をナマエがベラベラ喋るので、獅音は恥ずかしくなって逃げ出した。しかしながら、その顔はまんざらでもなさそうだった。
