獅音先輩と後輩ちゃん_2
学校の帰り道、獅音先輩とばったり会った。珍しく上機嫌そうな顔してるから、よっぽど人をボコってさぞかし気分がいいのだろう。「おーナマエじゃねェか。今日がなんの日かわかるよなァ!」
今日? 今日は3月21日。なんかあったっけ。祝日ではないし……あっ、わかった。
「お彼岸ですね!」
「ちげぇよ」
なんだと。じゃあなんだ? 次こそ正解しなきゃ。えーと……あっ、あれかな?
「じゃあ、ベイブレードの日ですね!」
「テメェケンカ売ってんのか?」
これも違うの? いよいよわからないままギブアップしようかと考え始めたころ、一つの答えが頭の中に浮かんだ。
「……もしかして、獅音先輩のお誕生日ですか?」
「なンだよ覚えてんじゃねェか。分かってたんならやることあンだろ」
すっ、と目をそらす。一か八かの賭けに出てみよう。
「お誕生日おめでとうございます。良い一年を過ごせるよう祈っております」
それだけ言って、さっさと立ち去ろうとしたら阻まれた。なんでこんな時に限って素早いんだ。
「……テメェまさか何も用意してねェってことはねェよなァ?」
そのまさかだ。本当についさっき思い出してしまって、誕生日プレゼントなんて何も用意してない。毎年律儀にメリケンサックをプレゼントしてきたけど、それもない。苦し紛れに
「……あの、お夕飯まだならラーメンご馳走しますよ」
と言ったら、
「女に奢らせるとかんなダセェことできっかよ」
などとのたまう。そこは素直にゴチになりますって言っとけばいいじゃん。普段なら絶対言いそうなのに。挙句の果てには焦る私を見て、
「なんもねェなら、あれ寄越せ。お前からのキス」
などと言い出した。ニヤニヤしながら目を閉じている獅音先輩を見て、私は意を決して彼に一歩近づく。私の気配に一瞬ビクッとしたようだが、後には引けないとそのまま踏ん張っている。これ幸いとばかりに、私は爪先立ちで唇を重ねた。獅音先輩から変な声が漏れた。まさかあっさりキスされると思ってなかったらしい。
「っだよお前……」
とか言いながら顔を覆ってうずくまってる。そういうところとても好きですよ、獅音先輩。
