思惑は教えない

「わりぃちょっと入れさせて!」
 インターホンも鳴らさず、ドアをガチャガチャ鳴らされる。ナマエが何事かと思いながら出てみたら、いきなり竜胆が家に上がり込んできた。外を見ると、本降りではないにせよ雨が降っていた。どうやら竜胆は、ランニング中に雨に降られて、近くにあったナマエの家まで駆け込んできたらしい。
「まあいいけどさ、雨止んだらすぐ出て行きなよ。はいタオルと着替え」
「サンキュ」
 ナマエはタオルと彼のTシャツを差し出す。竜胆は当たり前のようにお礼を言って受け取る。
 ……ん? 竜胆のTシャツ?
「思ったんだけどさ」
「なんだよ」
「なんで私のアパートに竜胆のTシャツがあるの?」
「オレが置いたから」
「なんで!?」
「オマエんちランニングコースの途中にあるし」
「休憩スペースみたいな扱いやめてくれないかな!」
「いーじゃん。つかやっと気づいたワケ?」
 ナマエは言葉に詰まる。そう、たった今気づいた。竜胆はニヤニヤ笑っている。
「ま、置いとけば役に立つ時もあんだろ」
 とか言いながら。

※竜胆はナマエが一人暮らししていることを知ってわざわざランニングコースを変えた。そして男よけのために私物を山ほど置いている。


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