思惑は教えない_2
「ちょっと!なんで竜胆の歯ブラシが洗面所にあるわけ!?」「ごちゃごちゃ言うなよ別にいーだろ」
「持って帰ってよ!」
「そのうちなー」
大嘘だ。竜胆は持って帰るつもりなんてない。むしろこれからも増やす。なんなら今日も置いてきた。
何故かって? 一人暮らしをしているナマエが心配だから。変に生真面目で優しいナマエなら、男にコロッと騙されてもおかしくない。だから竜胆は自分のものを置く。こいつはオレのものだ、と誇示するために。
……そんなことをやっているうちに、とうとうナマエはキレた。ダンボール二箱に、竜胆の私物を片っ端から詰めて、彼のところに宅配便で送りつけたのだ。着払いで。たまたま家にいた蘭が受け取り、呆れたように渡してきた。
「オマエランニング行くたびにそんなことしてたワケ? 引くわー」
というセリフ付きで。諸々の感情で真っ赤になった竜胆は、その場でナマエに電話をかけた。
「もしもし?」
「なんだよコレ!?」
「あー、私物届いたんだ。よかった」
「よくねェよ! 置いとくくらいいーだろ!!」
「友達が泊まりに来るんだもん。色々怪しまれたらヤだし」
「いーだろ別に」
「いいワケないでしょ! 彼に恋人いるって勘違いされるのだけは、本っ当にイヤなの!!」
「……カレ?」
竜胆の声が冷たくなる。
「何オマエそいつのこと好きなの?」
「竜胆に関係ある?」
「ある」
「ないでしょ。とにかくもう私物こっちに置かないで。あとランニング中に寄るのもやめて」
そのまま電話は切れた。竜胆は冷たい表情のまま「ちょっと出かけてくる」とだけ言って、夜の街に消えていった。
翌日ナマエのところに、男友達は来なかった。急用が入ったらしい。
竜胆はというと、相変わらず私物をナマエのアパートに置いて行っている。今度はもっと露骨に、これ見よがしに。
「やめろって言ったのに、なんなの本当……」
「いーだろ。いずれオレも住むんだから」
竜胆は、前よりも好意を隠さなくなった。何かのついで、ではなくて「ナマエに会いたいから」来ることが増えた。ストレートに褒めるしスキンシップもさりげなく増やした。
ここまでされても、まだナマエは気づけないらしい。もしかすると、認めてしまうのが怖いのかもしれない。その時は、今度こそ逃げ場がなくなるだろう。
