竜胆くんと灰谷さん_2

 どうにかあいつからの呼び方を名前呼びに切り替えたが、気を抜くとすぐ「灰谷さん」呼びに戻る。
 その都度オレは「蘭さん、だろー?」と言い直す。ナマエは怯える。
 今日も「はいた……」まで言いかけたから「ン?」と返したら「蘭さん、ですね!」と言い直した。それでいい。が、それだけだ。相変わらず距離がある。
 今日だってそうだ。竜胆や他のヤツらとは普通に話すくせに、オレ相手だと一歩引いている。気に入らない。
「おい」
「は……蘭さん。どうしましたか」
「明日ヒマだろ。出かけんぞ」
「あ……したは、イザナさんと約束があるので」
「明後日は」
「獅音先輩からラーメン食べに行こうって誘われてて……」
「断れ」
「でも」
「聞こえなかったかァ? 断れ♡」
 ナマエはその場で渋々携帯を取り出し、獅音にかけ始めた。つーか連絡先知ってんの?
「……テメェなんであいつの番号知ってんだよ」
「教えてもらったので。あっもしもし獅音センパイ? 明後日のことなんですけど……」
 それだけ答え、斑目との電話がつながるとナマエは断りの連絡を入れる。何度も申し開けなさそうに謝りながら、ナマエは電話を切った。オレの連絡先を、知ろうともしないその態度がムカつく。
「……な、なんですかその顔」
「携帯貸せ。オレの連絡先登録しといてやる」
 了承を得る前にオレはナマエの携帯を奪い、赤外線通信で連絡先を交換する。ついでに電話帳を見ると、オレ以外の天竺関係者の連絡先がずらっと並んでいた。
「……コイツらとよく出かけんの?」
「よく一緒にお昼食べるくらいですけど……」
「じゃ今日はオレと行くぞ」
「蘭さん!?」
「それからさん付けもやめろ。次から呼び捨てな」
 腕を掴んでズカズカと歩き出す。隣でナマエは黙ってしまった。そうだろう。それでいい。オレにしか見せない顔をもっと見てぇんだ。
 名前を呼び捨てにするのは時間がかかるだろうけど、しっかり呼ばせてやる。二人きりの時にも、大人数の前でも。

※一向に呼び捨てしてもらえなくて蘭は歯軋りする。


prev

back
top