天竺総長といろいろなごはん

「……流石に腹が減ったな」
「最後に何か食べたのいつ?」
「今朝トーストを一枚」
 そりゃお腹空くだろうね、と私は答えた。今何時だと思ってんだ、午後5時だよ。
「じゃあ、ファミレスでも行かない? 私ドリンクバーの無料券持ってるし」
 イザナが頷いたので、私たちはファミレスに向かった。メニュー表を眺めながら食べたいものを探し、決めたら注文する。
 程なくして注文の品が運ばれてきた。
「うまいな」
「ね。温かいから美味しい」
 イザナは黙々と食事を口に運ぶ。
「一人だとなかなか食事をする気にならねぇんだ」
「用意するのもめんどくさいもんね」
「それもある」
「というと?」
「……一人で食べるのはどうにも侘しい。鶴蝶がいつでもいるわけじゃないしな」
 その言葉を聞いて、私の脳裏にひとりでパンを齧るイザナの姿がよぎった。その寂しさは、なんとなくわかる。
「あのさ」
「なんだ」
「……明日お弁当作るから、お昼一緒に食べない?」
「何処で」
「お昼休みになったら、私学校抜けて天竺のアジトまで行くよ」
「好きにしろ」
「わかった」
「ひでぇモン作ってきたら容赦しねぇからな」
「がんばる…」

 翌日。宣言通り、私は学校を抜け出して天竺のアジトにやってきた。律儀に待ってくれていたイザナの隣に座り、お弁当を広げる。すると彼の顔がしかめっ面に変わった。
「おい」
「……はい」
「これはなんだ」
「卵焼き、です」
「黄色くねえぞ」
「うまく形を作れなくて、もたもたしてたら焦げちゃって……」
 それでも一番焦げてないところを選んだんだよ、と私は必死で言い訳する。
「じゃ、これは」
 次にイザナが指さしたものを見て、私は「あ、それは鶏の唐揚げ」と答えた。理解できない、と言わんばかりにイザナの顔がゆがむ。
「衣がついてねえじゃねえか」
「ちゃんと火が通ってるか心配になって何度もいじってたら、どんどん衣がはがれちゃって……」
 隣ででかいため息が聞こえた。そして箸を手に取ると、彼はひょいとお弁当のおかずを口に放り込む。
「……味は悪かねえな。生焼けでもねえ。まあ及第点か」
「よかったぁ」
「明日も作れよ」
「え!?」
「こういうのは繰り返しやんねえと身につかねえだろ」
 その言葉の裏に、もっと食べたいという意味があることを私が知るのは、もっと先の話。

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