ある日。気が付いた時から疑問だった。
何もかもが疑問だった。分からない事、それが不快で不快で仕方がなかった。

テストで100点を取った。作文コンクールで最優秀賞を取った。100点しかとった事はないし、あらゆるコンクールで金賞やそれに等しい最も優秀な賞以外取った事はなかった。
全て理詰めていけば結果は分かる。過去の例から統計を取れば傾向は見える。そうして『最適解』を選び取ればいいだけの話だ。
数学はいい。答えが決まっている。なにもかもがそうだ。この世界は数式で出来ている。俺は産まれた時からそれに気づいていた。
だから俺はこの世界の全てを解き明かせる。俺は分からない事が不快だった。傲慢だな。うん。
俺は傲慢だ。生まれた時から誰よりも。


俺は産まれてから3年、言葉を発した事はなかった。
理由は簡単だ。発する理由がなかったからだ。父親と母親がかけてくる言葉のニュアンスは理解していた。だが返事をする理由がどこにも俺の中にはなかった。俺は『入力』は得意中の得意だが、『出力』をする事に関してはどうも不得手らしい。
それに気づいたのは3年後だ。俺は漸く言葉を発した。
言葉を発した時点で、俺の中で言語学は完成されていた。一度見れば理解できた。他国の言語だってすぐにマスターした。
俺にとってはそれが当たり前で、出来ない理由がない。しかし父親と母親にはできないらしい。