昴一は大きな病気もなくすくすくと育った。
全体的に赤井に似て、目の色や肌の白さはリリーに似たらしい。
普段の顔はむすりとして実に赤井に似て愛想がない。目つきもすっかり赤井から遺伝したようだ。だが表情は実に豊かで笑う顔は赤井と云うより真純に似た。
「マミィ〜〜」
「昴一は甘えただな」
とにかく昴一は甘えん坊だ。
普段は2歳児とは思えないほど聞き分けがいい。食事時の姿勢も良く、ぐずった事も殆どない。
折角家族三人の時間が出来ても、突然収集がかかる事もある。仕事の際はいつも工藤夫妻に昴一を預けるのだが、突然仕事が入っても昴一は我がまま一つ言わずに夫妻の家で大人しくしている。
夫妻も驚く程に手のかからない子供だが、その反動なのかは分からないが確実にリリーや赤井の時間があいていると、よく懐いた猫のようにすり寄ってくるのだ。
あまりにもいい子なものだから、親心としてはもっと我が儘を言ってくれてもいいのだと思ってしまう。
(そういえば秀が以前昴一の前でライフルの整備をしてもじっと見てるだけだったって言ってたな…)
子供の前で何をやっているのかと言いたくはなるが、残念ながらこの家の中にはそう言ったものが最早家具と同等の扱いとして存在している。
この家から銃の気配を消す事はもはや不可能だと、赤井も振り切れたのだろう。
昴一は銃には触れるものの弄り回す事はしなかった。全て弾は抜いてある上にライフルは解体してあるから暴発もない。
ジョディが『そういう事じゃないわよ』とツッコんでいたが、仰る通りだと思う。
「みっき!みっき!」
「ああ、積み木だな?昴一は積み木が好きだな」
「すきー!」
積み木を持って来ると昴一は嬉しそうに遊び始めた。
最近のブームは積み木のようで、これで遊んでいる時の昴一はライフルを組み立てている時の赤井そっくりだ。
アイツの子だなあと一人笑っていると、何やら独創的な木の配置をし始めて注視する。
長方形のパーツに円柱をくっつけ、もう一つの長方形を捻じ込むような手つきで円柱にくっつける。その手つきが何やら見覚えがあるような気がした。
(…何を作っているんだ…?)
建物ではなく何か物のようだ。
何を作っているのかは分からないが、とても集中しているようだから楽しいのだろう。
その時はそう思っていたが、数日後何を作っていたのか、リリーは知る事となった。
「リリー、昴一を知らないか」
「え?いないのか?」
「ああ、トイレにも風呂場にもいない」
休日。調理中の事、赤井にもうすぐ夕食だから昴一を連れてきて欲しいと頼んだのだがどこにもいないらしい。
大人しく積み木をさせていたのだが積み木は綺麗に片付けられていた。使ったものは片づけるをちゃんとこなしていことに感心を覚えつつ不安がよぎる。
扉を開ける音も窓を開ける音もしなかったから外には出ていないだろう。
かくれんぼでもしているのだろうかと首を傾げていると、二階から「きゃーっ!」という声が聞こえた。
「昴一?二階にいるのか?」
「階段を登れるようになったのか……」
我が子の知らぬ間の成長に驚きつつ二人で二階に行く。
何やら物音がしていて、それは赤井の部屋からしていた。部屋で何をしているのか。
「昴一?何をしているんだ?」
もうすぐご飯だから、と続けようとして絶句した。
正しくそこに昴一はいた。とても嬉しそうで楽しそうな笑い声を上げながら、手に何やら持ってそれを掲げている。
いや、あの。それは見間違いでなければ。
「…………………俺のライフル、だな」
「だよな………」
何とか赤井が復帰した。
少し前に赤井が整備して解体したままで保管していた赤井愛用のライフルだ。
だが昴一が持っているそれはどう見ても組み立てられて完成したライフルである。そこでふと数日前の積み木遊びを思い出す。
長方形や円柱のパーツを弄り回す手つきにどこか見覚えがあったが。
「……あれ、まさかライフルの組み立てを真似てたのか?」
「う?」
「昴一、これダディのライフルだろう?昴一が組み立てたのか?」
「うん!みっき!」
「…………………わあ……………」
ライフルの組み立てを積み木と呼ぶか。いいかい昴一、世間一般ではこれは積み木とは呼ばない。
改めて絶句する中、赤井は組みあがったライフルをしげしげと見ていた。
「ホォー…ちゃんと組みあがっているな。ズレもない」
「ウッソだぁ……」
眩暈すらした。見よう見まねでライフルを組み上げたというのだ、この二歳児は。
しかもこれを積み木と呼びやがった。信じられない。
リリーもライフルをちゃんと組み立てられるようになったのは5歳の頃だ。
「そうか…これを自力で組み立てるか……天才だな昴一は」
「秀の子だな……」
だが危ないので押収した。
あーー!!!と残念そうな声を上げる昴一だが、いつまでもライフルを持たせている訳にはいかない。
しかしライフルを組み上げる程の空間把握能力があるんだったら、立体積み木やパズルを買ってやるのがいいかもしれないな、と思った。
しかし後日、いつも棚に入れてあるはずの分解されたグロッグ17が忽然と姿を消し、数時間後トイレの棚の上からきっちりと組み立てられたグロッグ17が発見され、赤井が腹を抱えて笑う羽目となった。
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